「成長」した中国は外部の圧力にどう対応すべきか 中国中央銀行調査統計司元司長盛松成氏に聞く

 北京23日発中国新聞社電は、「『成長』した中国は外部の圧力にどう対応すべきか」と題する次のような記事を配信した。

北京のCBDエリア。(CnsPhoto 蒋啓明氏撮影)

 2021年の中国のマクロ経済は穏健に幕を閉じ、2022年の全国両会」〈全国人民代表大会と中国人民政治協商会議〉で新しい発展目標が定められる見込みだ。中国経済の総量が100兆元〈1元=約18円〉から前進し、経済の変革も十字路に差し掛かる中、中国の経済的奇跡を支えた「中国モデル」は今後も持続可能なのだろうか。「中国モデル」はどのようにして改革を調整し、どのようにして「成長」プロセスの中で外部の打撃と試練に対応するべきなのだろうか。

 中欧国際工商学院教授・中国中央銀行調査統計司〈局〉元司長の盛松成氏はこのほど中国新聞社の「東西問」コーナーのインタビューに答え、外部からの一部の圧力による中国経済に対する影響は短期的で限定的で、今後の発展のカギは依然として自分のことをしっかりやることであり、現在の中国の発展段階の特徴と海外の環境と情勢の変化を結び付けると、長期的に有效な仕組みを構築し、革新を奨励し、消費を促進することが当面の急務であるというべきだと述べた。

 インタビューの要旨以下の通り。

 問:外界では中国のGDP〈国内総生産〉がいつ米国を超えるのかが注目の的になっている。このプロセスの中で、中国の経済発展はどのようにして自身の道をしっかり進むべきか。また絶え間ない「成長」のプロセスにおいて外部からの一部の圧力にどう対応するべきか。

 答:中国経済はすでに40年余りの高速成長を経てきた。中国のGDPはあと10年ぐらい前後で米国を超え、世界最大の経済体になると一般に予想されている。現在、米国は経済・科学技術・軍事などの方面でトップの地位に変わりはないが、その他の国との間の相対的な差は縮小しており、特に中国の急速な発展は米国から一種の脅威であると認識されている。

 外部からの一部の圧力の中国経済に対する影響は短期的で限定的であり、長期的に見て、中国の将来の発展を決定する要因は依然として国内にあり、今後の発展のカギは依然として自身のことをしっかりやることである。われわれは現段階における世界経済の中での中国の地位、弱い部分、発展の方向を冷静に見極めなければならない。また、まだ差があることをしっかり認識し、改革開放を堅持し、構造調整を推進し、革新能力を引き上げ、中国の経済発展により多くの制度的ボーナスをもたらされなければならない。中国の改革革新と産業高度化が実現するのに伴い、経済成長率も新しい段階に入ると信じている。

 現在、世界経済は低迷し、アンチグローバル化思想が台頭しているが、これはグローバル化がボトルネック期に陥ったことを意味しているわけではない。中国の着実な台頭に伴い、多元的な国際秩序も着実に構築されている。中国と西側は情報化・インテリジェント化した世界の中で新しい協力体制を形成し、双方のさらなるウィンウィンを実現するだろう。

 問:1970年代末から中国は近代化の歩みを開始し、人類史上まれに見る経済成長の奇跡を達成した。中国は何が正しかったのか。

 答:タイミング良く、なおかつ深いレベルの体制改革が中国の経済発展のコアとなる原動力であり、一般的に言われるような投資けん引型の経済成長だけではない。改革開放以降、中国は一連の制度改革と対外開放措置を実施し、これが長期的な生産率に深遠な影響をもたらした。

 これらの制度改革は供給サイド改革と需要サイド改革に大きく分けられ、前者には要素サイドと生産サイドの改革、後者には消費・投資・輸出体制改革などが含まれる。制度改革は中国に対し必然的に大きな影響をもたらすとともに経済成長を促進・後押しする。

 改革開放以降、中国の対外貿易規模は顕著に拡大し、資本勘定が徐々に開放された。対外開放の進捗は2001年の世界貿易機関〈WTO〉加盟後に明らかに加速し、これが中国に新たな高速成長段階をもたらした。対外開放により中国は世界経済の分業と協力に参加し、これは中国経済の比較優位性を発揮するのに有益だった。

 この他に、「後発優位性」を利用することで、われわれは比較的低いコストと比較的小さなリスクで技術の進步と産業の高度化を実現し、先進国よりも速い経済成長を成し遂げた。これは改革開放後の中国経済の高速成長の最も重要な理由の一でもある。

 制度改革と対外開放のほかに、中国は情勢の変化に基づいて短期的なマクロコントロール政策を調整してきた。最近では経済の下振れ圧力に対応するため、積極的な財政政策の実施が加速し、稳健な金融政策が安定の中で緩和に向かっている。これらはいずれも中国経済が成長安定とリスク予防、短期的目標と長期的目標の間のバランスの中で発展してきたことを示している。

 歴史的に見て、大型の経済体がこれほど急速に成長するのはまれであり、政策によるリードと体制改革はずっと中国経済の案内役・護衛となり、市場の絶え間ない試行錯誤のプロセスを短縮してきた。経済発展が比較的「成熟」するのに伴い、中国は先進国と対等に付き合うことができるようになり、資源配置における市場の役割がますます大きくなっている。

 問:こうしたプロセスの中で世界のその他の国とは異なる「中国モデル」が形成されたのだろうか。こうしたモデルと西側などのその他の国の発展モデルとの違いは主にどのような面があるのか。

 答:われわれの歴史と文化ならびに直面している国際環境はいずれも西側諸国とまるっきり異なっており、初期条件が異なれば選択する道も変わってくる。いわゆる「中国モデル」とは実際には、われわれが猿真似をせず、西側のモデルを完全に手本にするのではなく、自身の歩みにそって進化、発展させてきたものだ。

 私が良く知る金融政策を例に挙げると、中国はこれまでずっと金融の実体経済に対する資金支援、経済の弱い部分に対する資金支援を強調し、金融の根本的任務が実体経済に奉仕することであると強調してきた。社会融資規模指標から、中国の金融体系の実体経済支援の状况、資金の緩和と引き締めの程度、多チャンネルの融資構造を見ることができる。社会融資規模指標の創設・作成・統計・整備は私にとって人民銀行調査統計司長在任期間中、最も重要で、最も時間がかかり、最も印象的だった仕事の一つだ。社会融資規模指標の理論的基礎は西側諸国が提起したものだが、海外に根を下ろしたことはなく、中国が初めて創設した唯一無二の指標となった。

 中国と西側などのその他の国の発展モデルの異なる点は、主に三つの方面に体現されている。

 第一に、政府による後押し。中国の各レベルの政府は経済活動に対する関与の範囲が広く、その程度が深いため、経済活動全体の中で極めて重要な指揮・管理と監督の職能を果たしている。これは欧米諸国がかねてから尊んできた「大きな経済」と「小さな政府」、いわゆる「見えざる手」といった伝統とははっきりと対照的である。

 中国の社会主義市場経済は絶えず進化するアクティブなシステムであり、制度の変遷、経済の転換、財政・金融政策の方向性と強度の変化、金融仲介の発展などはいずれも伝統的な経済モデルでは簡単に推し量れない経済效率の変化をもたらしてきた。

 第二に、非公有制と公有制経済の共生。私有企業は利潤の追求とその最大化を目標としており、過度の市場化と自由化は多くの低利潤の基礎製造業を押し出し、産業の空洞化をもたらす。

 中国には短期的な利益を優先しない国有企業が大量に存在しており、インフラ・物流・通信などの分野に強力に投資している。われわれはみな消費の限界効用が逓減することを知っているが、こうした基礎が薄弱な地域に対する見返りを求めない投資は将来的により多くの消費と富をもたらし、創造する。

 第三に、特殊な歴史・文化などの要因。例えば、中国の貯蓄率は一般的に35%から40%に達し、平均20%足らずの欧米諸国のレベルを大きく上回っている。改革開放後の30年近くの間、中国は基本的に「高い貯蓄率―さらに高い投資率―高い経済成長率―高い貯蓄率」という循環の中にあった。

 他にも、例えば中国は相対的に豊富な労働力と低廉な価格という比較優位性を利用して、輸出を奨励し、積極的に国際市場の競争に参加してきた。このたびの新型コロナの流行は世界経済に深刻な打撃を与えたが、中国の輸出は逆に強じんな成長を遂げた。これは中国政府が新型コロナを抑制できたことのボーナスであるとみなすことができる。

 問:「中国モデル」は世界のその他の国にどのような参照をもたらすのか。

 答:ある国が発展するにはやはりそれぞれの国情から出発しなければならない。中国政府は諸々の方針と政策を統一し、全国の財力・物力を集中し、産業、地域、さらには国家の経済を短期内に急速に発展させた。これは相対的に経済が遅れている発展途上国にとって、時間を節約できる有效な発展手段だ。

 政府後押し型の経済発展においては、政府と経済にさまざまなつながりがあるため、腐敗が発生しやすいが、中国は適時問題を発見するとともに改善を進めてきた。しかし同時に、経済発展に伴い、政府の経済に対する関与の度合いも下がっている。言い方を変えれば市場化の度合いが高まっている。政府が過度に企業に関与すれば、企業は過度に政府に依存するようになり、ミクロ主体が活力、主体性、競争力を失い、永遠に成長できない「子ども」になってしまう。

 そのため、政府の後押しは経済の法則にも合致している必要があり、特に投資パフォーマンスを重視するとともに監督と制約の仕組みを整えなければならない。「中国モデル」は過激な道を行くのではなく、多元化・多様化・混合化を実行し、改革・発展・安定の関係を正しく処理してきた。

 問:将来を見据え、「中国モデル」はどのようにさらなる改革を進めるべきか。当面の急務は何か。

 答:近年、中国は経済成長率が明らかに減速し、労働年齢人口がピークアウトし、資本産出效率が弱まると同時に、国際環境の不確実性が高まっている。これらはいずれも長期的に有效な仕組みを構築して革新を奨励し、消費を促進することが当面の急務であることを意味している。

 中国は市場化改革を一段と深化させ、資源配置を最適化する必要がある。財産権制度は重要なインセンティブ手段の一つだが、同時に知的財産権がもたらす反独占問題にも注意し、後から来る者の革新を妨害しないようにしなければならない。

 制度構築と改革はある程度の先見性が必要であり、短期と長期の利益をバランシングし、持続可能な革新を実現しなければならない。このほかに、市場化の革新では消費者の選好と傾向を理解し、供給によって消費の新たな成長点を創造し、これをレベルアップさせる必要があると同時に、消費高度化をけん引役として供給を革新し、ハイレベルなプラスの循環と需給のバランシングを実現しなければならない。

 目下国内外情勢は变化が比較的大きく、中国経済は下振れ圧力に直面しており、改革と発展の関係、短期と長期の関係、成長安定と構造調整・リスク予防の関係をうまく処理しなければならない。単純に長期的改革措置によって短期的な経済下振れ圧力に対応してはならない。短期的な経済の安定と発展がなければ、長期的な構造改革を行うことができないからだ。

 インフラ投資は今年の中国の成長安定の重要な手がかりである。インフラ投資はコントローラビリティーが比較的高く、比較的短時間内に経済の安定を後押しし、市場予想を改善することができる。目下中国には少なくないインフラ投資プロジェクトの備蓄がある。中国の一人当たり平均インフラ資本ストックは先進国の20%から30%しかなく、なおかつ都市と農村、地域間の発展格差が依然として比較的大きく、農村における一人当たり平均公共施設投入は都市の5分の1前後しかない。中国のインフラ建設のポテンシャルを過小評価すべきではない。

 今年は地方政府特別債の発行が前倒しされると同時に、前年度財政の繰り越し資金、政府ガイド基金、都市投資債券などさまざまな資金の供給源があるため、インフラ投資資金が比較的充足している。成長安定におけるインフラ投資のポジティブな役割を正しく認識すべきだ。インフラでは無論パフォーマンスを重視しなければならないが、直接的パフォーマンスを見るだけでなく、間接的なパフォーマンスも見なければならない。短期的なパフォーマンスを見るだけでなく、長期的なパフォーマンスも見なければならない。一部のパフォーマンスを見るだけでなく、全体のパフォーマンスも見なければならない。(中国通信=東京)

中国中央銀行調査統計司元司長盛松成氏

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