中国の劉鶴副首相がダボス会議で講演「中国が計画経済に戻ることはあり得ない」

中国の劉鶴・副首相はスイスのダボスで開催された世界経済フォーラムの年次総会「ダボス会議」で講演を実施した。その中で、市場の「中国が計画経済に戻るのでないか」との見方を否定した。また、今年の中国経済に関する発言もあり、今後の中国経済の動向を占ううえでの中国政府の見解として示唆に富む内容だった。

■「計画経済に戻る」との市場の懸念を払拭
まず、冒頭で触れた通り、「中国は計画経済に戻るのではないか」との見方に対して、「まったくあり得ない」と明確に否定した。ここ数年、市場では「中国が計画経済に戻ろうとしているのではないか」、「民営経済が後退していくのではないか」といった疑念が出ていたが、劉・副首相が国際的な会議で、こうした懸念を明確に否定し、「国有企業改革を一段と進め、民営経済の発展・拡大を引き続き支援し、公平な競争を促進する」と明言。市場の疑念を払しょくするとともに、中国が「社会主義市場経済改革の方向性を変えない」との基本的立場を明確にアピールした格好といえる。
社会主義市場経済、民営経済については、中国共産党第20回全国代表大会の政治報告の中でも明確に堅持することを表明。「中国はハイレベルな社会主義市場経済体制を構築し、社会主義の基本経済制度を堅持、充実させ、公有経済を揺らぐことなく発展させると同時に、非公有経済の発展を奨励、支援、誘導する必要がある」と言明したほか、「民営経済の発展と拡大を促進する」との文言を初めて盛り込んだ。昨年12月に開催された中央経済工作会議でも、「社会主義市場経済改革の方向を堅持する」との方針を示している。

■今年の中国経済は好転
昨年は新型コロナウイルスの防疫措置などのマイナス影響を受け、国内総生産(GDP)が前年比で3.0%に減速した中国。政府目標の5.5%を実現できなかったが、劉・副首相は講演の中で今年の中国経済について、「全体的に好転し、成長率は正常な水準に戻る可能性は高い」との見解を示した。また、「今年の輸入は増加が鮮明となり、企業は投資拡大に一段と力を入れ、個人消費は通常の状態に戻る」と、景気回復に自信を示した。

■不動産業の重要性を強調
不動産市場に関しては、不動産が中国経済の支柱産業である点を改めて強調。◆不動産関連融資が銀行融資の約40%を占めている、◆不動産関連税収が地方財政の約50%を占めている、◆不動産が都市住民の資産の約60%を占めているーーと不動産業の重要性を指摘したうえで、「不動産分野のリスク処理を適切に行わなければ、システマチックリスクを引き起こしやすい」と言明。そのうえで、◆契約や権利の保護を通じて市場の予想を安定させること、◆不動産企業の流動性改善させ、銀行融資をはじめとする不動産企業向けの融資、さらには担保を提供すること、◆有効需要を拡大させること――などが引き続き必要としている。
この劉副首相の不動産関連の発言を受けて、市場では、中国政府が不動産市場の安定化に向けたさらなる政策を打ち出すとの予想が出ている。

You may also like...

Leave a Reply

Your email address will not be published.