中国と欧州の企業、NEV分野で提携の動き

中国と欧州の企業の間で新エネルギー車(NEV)分野での提携の動きが広がっている。世界最大のNEV市場となっている中国で、先行してNEV事業を手掛けている中国企業。欧州企業と連携するとともに、欧州現地での生産の動きも出ている。

■長城汽車とBMWの合弁、中国で試験生産

中国メディアによると、長城汽車と自動車メーカー大手のBMWグループの合弁会社、光束汽車の工場がこのほど、試験生産の段階に入った。光束汽車は、BMWと長城汽車の合弁会社で、生産拠点設立にあたっての投資総額は約51億元、建設場所は江蘇省張家港市で、2020年6月に着工した。同事業は、BMWにとって世界初の電気自動車(EV)の合弁プロジェクトで、生産能力は年間16万台を予定している。長城汽車とBMWの提携は生産だけにとどまらず、中国でのEVの共同研究開発も含まれている。

折しも、10月中旬、BMWが英オックスフォード工場でワンボックスカー「MINI」のEVモデルの生産を中止し、2023年末までに同生産ラインを中国に移管するとの情報が伝わった。これに対してBMWは、オックスフォード工場で今後生産される主要車種に言及したのみで、MINIの次世代EVモデルについては触れなかった。ただ、今後、MINIの生産ラインが中国に移管され、将来的にはMINIのEVモデルと長城汽車傘下のNEVが光束汽車の工場で生産される可能性があるとの観測も出ている。

BMWにとって長城汽車と組んでNEVの生産ラインを中国に設置するメリットは少なくない。中国のNEV市場への参入を加速するだけでなく、中国のNEVの先進的な生産能力を活用し、MINIブランドを復興させると同時に、中国での自動車の電動化の実績を将来的にBMWグループの他のブランドや製品に応用できる可能性も秘めている。

■BMW、車載電池でも中国企業と提携

NEVのコア部品である電池も中国企業が大きなシェアを握っている。韓国の調査会社であるSNEリサーチによると、2022年1~8月の世界のNEV動力電池の搭載量は287.6GWh。うち、寧徳時代(CATL)の搭載量は102.2GWhで、シェアは35.5%を占めている。このほか、BYD傘下の電池企業、弗迪は世界3位。中創新航科技、国軒高科、旺達電動汽車電池、蜂巣能源といった企業が10位以内にランキングしている。

こうした中国の車載電池と欧州企業の提携も進んでいる。前述のBMWはCATLと提携。2025年に発売するBMWグループの新型EVモデルに搭載する円筒形バッテリーセルをCATLが供給することで、今年9月に合意している。製品は中国と欧州の2つの電池工場で生産。各工場がBMWに供給する動力電池の年産能力は20GWhに達する。

BMWはまた、車載電池の億緯锂能とも契約を締結しており、億緯锂能はBMW向け製品供給に対応すべく、生産ラインを拡充している。

■国軒高科はVWと提携

国軒高科は独フォルクスワーゲン(VW)と戦略的提携で合意している。同社は、VWの中国法人である大衆汽車(中国)向けに第一世代の標準セルを開発。同時に、VWのドイツ・ザルツギッター工場でも電池を生産し、国軒高科側は技術サポートを提供することで合意している。

■中国企業のハンガリー進出相次ぐ

中国のNEV関連企業の欧州進出も積極化している。中でも進出が相次いでいるのはハンガリーだ。CATLは9月、同社のハンガリー工場のプロジェクトが正式に始動したと発表。プロジェクトの敷地面積は221ヘクタール、投資額は73億4,000万ユーロで、計画されている電池生産能力は100GWh。1棟目の工場は年内に着工する予定で、建設期間は最多で64カ月を予定している。CATLは、ハンガリーへの投資について、同社のグローバル戦略にとって大きな一歩になるとしている。

ハンガリーではCATLのほか、億緯锂能、科達利、恩捷などの車載電池関連企業や蔚来(NIO)、比亜迪(BYD)、上海汽車などの完成車企業が進出し、NEVの産業チェーンが形成されつつあり、現地生産コストの引き下げが期待されている。

世界最大のNEV市場となった中国。中国汽車工業協会によると、中国のNEVの今年1~9月の累計販売台数は前年同期比110%増の456万7,000台。21年の年間販売台数をすでに上回っている。NEV分野で先行する中国企業が今後、欧州企業との連携で相互の強みを補完しつつ、全体の競争力向上につなげることができるのか、注目されよう。

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