拡大する中国の自動車輸出、NEVが牽引~今後に不安要素も

中国の自動車輸出が拡大している。中でも、新エネルギー車(NEV)が急速に伸び、輸出全体をけん引している。ただ、今後も堅調な輸出を維持できるのか、不安要素もくすぶっており、更なる競争力の強化が求められている。

■22年上期のNEV輸出は前年同期比2倍以上

中国汽車工業協会によると、2020年の中国のNEV輸出は7万台で、自動車輸出に占める比率は7%にとどまっていた。しかし、21年の同輸出は前年比304%増の31万台に拡大。自動車輸出に占める比率は15%に達した。さらに、22年に入っても増勢は続く。同年1~6月期の中国の自動車輸出台数は前年同期比47.1%増の121万8,000万台。中でも、新エネルギー車(NEV)は前年比130%増の20万2,000台と大幅な伸びを記録し、自動車輸出全体の16.6%を占めるに至っている。

NEVの輸出が堅調なことは中国汽車工業協会の報告書でも示されている。報告書では、「近年、中国の自動車製品の総合競争力が向上するにつれ、中国ブランドの国際市場での認知度が高まっている」としたうえで、「特にNEVは目下、輸出の目玉となっており、一部の自動車はすでに欧州などの先進国・地域の市場で成功している」という。

中国のNEVの輸出堅調の背景は何か。まず、欧州でのNEV需要の拡大がある。欧州の多くの国では自動車の電動化を加速している。一方、供給サイドでは、新型コロナウィルス感染症やロシア・ウクライナ紛争などを背景に供給が不安定な中で、中国はNEV供給の安定を維持し、一定の輸出優位性を備えている。

■自動車輸出の今後の不安要素

ただ、今後も中国のNEV輸出が堅調を維持できるのか、不安要素はある。その一つは、他の国・地域との生産・供給における競争激化。例えば、地域的なコスト優位性や、バッテリーや原材料の資源を備えている一部の東南アジア、南米、東欧、メキシコ、インドなどは中国にとって自動車産業チェーンにおいて潜在的な競争相手となる可能性が指摘されている。

ブランド力の強化も必要だ。日本の自動車ブランドは、東南アジア市場などでは長期にわたって品質管理やアフターサービス、ブランド構築などの面で確固たる市場の優位性を築いてきた。その日本の自動車ブランドに打ち勝てるだけの製品、技術、品質、サービス、ブランド力などの向上が求められている。

各国・地域の市場で規制上の要求が異なっていることも課題として挙げられている。ガソリン車の時代は、中国はブランド力が弱かったが、低価格というコストパフォーマンスを前面に打ち出して東南アジア、南米、アフリカなどの発展途上国・地域を主な輸出先としていた。ただ、ガソリン車以上にNEVは欧州などでの厳しい認証や品質要求が求められている。中国の自動車メーカーは今後、一定の期間、費用を投入して、相応の技術開発を進め、各国・地域の品質基準を満たす必要がある。同時に、NEVの設計や検査、電池輸送管理などの基準について政府が主導して制定するよう求める声も上がっている。

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