日中国交正常化50周年記念事業

2022年9月8日 釧路市で日中国交正常化50周年記念講演会が、

主催 釧路日中友好協会 会場 ANAクラウンプラザホテル釧路を会場に開催された。

会場では用意した座席を超える、東京の大学生はじめ、釧路の政財界人、マスコミ関係者で約60名が集い盛況となった。

講師 には(公財)日中友好会館 中国常任理事 黄星原氏によるメインテーマ『日本と中国 国際中継港「釧路」の役割』と、㈱SCG 代表取締役 柏倉柳一郎氏による国土交通省の政策である「スーパーシティ構想」の釧路版『釧路 持続可能な世界最先端モデル都市の可能性』の提言を行った。

開会直後、1972年の日中国交正常化交渉の記録映像が流され、当時の「添了麻煩」事件について言及し、幾多の困難を超えて日中間の国交正常化が実現したことを改めて公表した。

柏倉氏は「釧路市は『日本で最も”美しく涼しい”都市』として、日本で最も『美しい。涼しい。美味しい。楽しい。の4つのSEA(しい)がある』、今後 軽井沢に代わるアジアの避暑地に発展すること」を示唆した。

黄星原氏は「釧路は地政学において、北米航路、北極海航路における欧米と北東アジアの海上物流の中継拠点『南のシンガポール、北の釧路』として、『新興国際都市』に発展する可能性」を述べた。

北海道議会議長 小畑保則氏は「日中間には様々な課題はあるが、中国経済の成長の波を利用し、釧路港湾を国際バルク戦略港湾から、国際ハブ港湾に発展させることは、日本の国益に適う。国策の「国土強靭化計画」をもって、国際コンテナ専用ふ頭の整備、鉄道高架、釧路駅周辺の再開発を合わせて推進したい。」とメッセージを寄せた。

さらに黄星原氏は「釧路は、保税エリアの創設によって、米中関係における複雑な課題を緩和する中国産業界の中継製造拠点になる」と新たな提案を述べた。

「民をもって官を促す。経済をもって政治を促す。地方をもって中央を促す。」今回の釧路市での日中国交正常化50周年イベントは、今後の日中関係の在り方を示唆し、日本経済の明るい未来を創造する釧路の新たな展望を示すかたちになった話題に、会場は参加者の大きな拍手で幕をとじた。

本と中国 国際中継港「釧路」の役割

日中友好会館中国代表 黄星原

本日は日中国交正常化50周年記念事業の講演会にお招きいただき、心より感謝いたしますと共に、日中友好会館を代表して、お祝いを申し上げます。

 北海道に来るたびにまるで自分の故郷、中国の黒龍江省に戻ったような感じがします。広い土地、はっきりとした季節と温度の差。とくに両方とも国の穀倉と呼ばれ、とうもろこしや大豆、またはジャガイモの産地として知られています。

先月、沖縄で開催された「東アジアの平和ネットワーク形成をめざす国際シンポジウム」に出席していた時、初めてジャガイモは中国から日本に伝わってきたということを教わりました。中国と日本の縁が本当に深いものだなと思いました。

実は「日本と中国国際中継港『釧路』の役割」という講演テーマを受け取ったとき、私はちょっと後ずさりしていました。正直に言いますと、それは私の日本語があんまりよくないからだけではなく、釧路に初めて来た素人の私がとやかく言っても、釧路の実情に合うかどうか分からないという心配があったからです。

 それでも、日本の友人として、私個人の考えを皆様に分かち合いたいと思います。25年前、つまり1997年のことを思い出しました。当時、アジア金融危機のせいで、韓国はとても困った状態に落ち込んでいました。ちょうどその時、改革開放から20年くらい経って、中国の人々の海外旅行のニーズが急に増えて、ブームになりました。そこで中国政府は国民の要望に応じて、「中国人外国旅行目的地」という指導文書を出そうとしました。これが良いチャンスだと思った韓国政府は、すぐ中国側にぜひ報道関係者代表団を韓国に派遣し、訪問していただきたいと打診をしてきました。それに応える形で私は団長として、二十数名の記者を率いて、初めての韓国訪問をしました。

とても印象深かったのは、「済州島」を「中国人外国旅行目的地」の最初のリストに入れてもらうために韓国政府は、その島に様々な特別待遇政策を与えてくれました。ビザ免除と免税策をも打ち出しました。私たちの代表団と会見した金大中元韓国大統領の話は今でも忘れられません。「二十一世紀の世界はアジアの世界だと言われますが、中国はアジアの将来と希望としての存在です。韓国は今の困難を乗り越えようとすれば、中国と仲良くしていかなければなりません」とおっしゃいました。

ご存知のように、今年は中国と韓国の国交樹立30周年でもあります。長期に安定した中韓関係は、中国から数十倍の観光客を増やした結果をもたらしただけでなく、両国の貿易額も3600億米ドルに達しました。この数字は日本と中国の間の貿易額とほぼ同じぐらいの規模になっています。一国の外交政策と選択はその国の経済と貿易にどれほど重要なのかは以上の例を見ればお分かりいただけるかと思います。

さて、「日本と中国国際中継港『釧路』の役割」というテーマに戻りましょう。私の直感で言えば、今の釧路は「万事倶(とも)に備(そな)われど、ただ東風を欠(か)く」状態にあると思います。「万事倶(とも)に備(そな)わる」とは釧路は地理的優位が整っているほか、幅広い奥地によって支えられており、日本の穀倉である北海道をバックにして、国際バルク戦略港湾に指定されてからちょうど10年が経ちました。その上に西には米国からの穀物飼料の荷揚げがあり、東は中国の多目的船の寄港などの実績も着実に積みあがってまいりました。もし北のロシアの資源までも見込み客として利用できればと思います。

「東風」と言うのはやっぱり複雑な国際情勢と不安定な日中関係を指しています。ウクライナ戦争が何時終わるかは分かりませんが、秋が来たら冬も近づきます。この戦争の犠牲者は無論ウクライナです。しかしドイツなども被害者であります。外交政策、とくに安全保障政策の誤りによって、ヨーロッパは再び戦争に巻き込まれました。完成されたガスパイプも利用できません。いくら良いプランがあっても実行できなければだめです。

この様な悲惨な状況が絶対にアジアで起こらないようにするためには我々はぜひヨーロッパの教訓から反省しなければなりません。

だから、私のアドバイスと言えば、釧路の国際中継港の役割をうまく発揮させるにはまず平和な国際環境と安定した日中関係が必要です。そのために、まさに青木会長が言われたとおり、「民をもって官を促す」必要があると思います。同じく「経済をもって政治を促す」と「地方をもって中央を促す」と言う言葉もあります。中国の元指導者の鄧小平さんには「発展こそが根本的道理」という名言がありますが、中国にとっても日本にとってもまったくその通りです。日中関係を安定させ、経済と貿易交流が盛んに発展していけば、日本と中国にとっては「百利あって一害なし」のことで、お互いの国家利益につながると思います。

その環境を整えるプロジェクトは民や経済界や地方などに留まらせてはいけません。政治家たちも、マスコミも直ちに行動しなければならないと思います。幸いなことに、先月、日中両国の安全対話が順調に行われ、双方とも両国関係のさらなる悪化の阻止に努力しようというメッセージを出しました。

もう一つ重要な情報を皆さんに共有したいと思います。中国の最高指導者の習近平国家主席が先月、北海道の姉妹都市である遼寧省を視察し、東北再振興戦略を強調されました。これは釧路港の未来である国際的な物流拠点造り、「南のシンガポール、北の釧路」との戦略とは、ちょうど合致しているのではないかと思います。この二つの戦略をどのように結びつけるかは今後の課題として考えていただければと思います。

私は長い間マスコミと付き合ってきたので、ここでもう一つのアドバイスをさせて頂きたいと思います。つまり釧路はこれからもっと自己アピールするといいと思います。私のように日本に十年以上住んだにもかかわらず、釧路に来たことがない人も少なくないと思います。私が働いている日中友好会館より20歳年上の釧路日中友好協会さんは日中国交正常化10年前にもう活躍されており、間違いなく釧路と中国をつなぐ中核的な存在です。今回、釧路日中友好協会さんのお招きで釧路に来なければ釧路に関する基本的な知識も、釧路の素晴らしさも分からないままだったと思います。改めて、お誘いに感謝申し上げます。

最後になりましたが、日本にはこれからアメリカと中国の関係を円滑にさせる架け橋としての役割を期待するとともに、釧路が中国東北振興戦略とのドッキング、また北極海航路の国際物流におけるさらなる役割を果たすことをお祈りして、私の本日の講演会を終わらせて頂きます。

ご清聴ありがとうございました。

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