世界に広がりつつある中国の「春節」—その文化と理念の背景を専門家が説く

このところ中国国外でも、中国の春節(旧正月、2022年は2月1日)にまつわる活動が行われることが増えてきた。その春節は中国人にとって、古くからの文化上の理念と固く結びついているという。孔子の生まれ故郷の名を取った尼山世界儒学センターの張暁霞孔子研究院副院長はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、春節について解説をした。以下は張副院長の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

■「年」とは本来、人を捕って食らう魔獣の名だった

中国には古くから伝わる特定の行事を行う特定の日、つまり伝統的祝日が多くある。いずれも天文や気象に基づいたもので、耕作や狩猟、起居にまつわる作業などを行う目安となる日だ。また、祝日は神霊を祈りを捧げる厳粛な日であると同時に、さまざまな娯楽で人々が楽しむ日でもありつづけてきた。

現在でいう春節は、旧暦上の新しい年を迎える日だ。この「年」とは本来、凶悪な魔獣を指したとの言い伝えがある。「年」という魔獣は人や家畜を捕って食べてしまう存在だった。そして「年」は赤い色や騒がしさ、さらに火を嫌がったとされる。そこで年越しの際には、「年」の害を避けるために赤い色をした1対の紙に文句を描いて戸口の左右に貼る。そして赤い提灯をつるし、親戚や友とにぎやかに過ごし、さらには爆竹を鳴らすようになったという。中国では「年越し」のことを「過年(グオニェン)」と言うが、これは「『年』という魔獣をやり過ごす」という意味にも解釈できる。

「年越し」についての行事は、歴史を経ると共に豊富になっていった。また、本来なら「年越し」の行事は新年を迎える旧暦大みそかから元旦にかけてのものだったが、最終的には旧暦12月23日から翌年の1月15日までの時期に、さまざまな行事が行われるようになった。

■中国の伝統的祝日は先祖祭りと切り離せない

中国の伝統的な祝日は、神霊や先人に対する祭祀、さらに未来に対する祈りと切り離すことができない。そして「礼楽文化」とも切り離せない。「礼」についての最も重要な古典である「礼記」の中で、「礼」についての制度や慣習の変転を記した「礼運」には「(遠い昔の)礼とは飲食から始まった。きびを焼き、豚を割き、(まだ陶器などがなかったので)地のくぼみを壺(つぼ)の代わりにして水を入れ、手ですくって飲む。そしてかやの堅い茎をばちとして土の鼓をたたく。こうしたやり方でも、鬼神に尊敬の気持ちを捧げることはできる」と記されている。礼楽文化は伝統的な祭りの文化の根幹であり核心なのだ。

中国の伝統的祝日には、「仁・義・礼・智・信」といった道徳価値観や集団主義とに結びついている。そして中国人は「孝の道」を貴ぶ。だから祝日には先祖をしっかりと祭る。

クリスマスやイースターなど、西洋の祝日の起源はキリスト教と切り離せない。イエス・キリストを崇拝するが、先祖のために祈りを捧げることは少ない。西洋の祝日文化は個人の心理的体験と感情を強調し、個性を解き放って自己を最大限に表現することを主張する。体現するのは個人主義であり、自己満足と自己実現を重視する。

■春節が世界に広まることは「よきことの共有」を意味する

中国の国力が強まり、海外に住む中国系住民の地位が向上するにつれ、中国国外での「春節ブーム」が年々ヒートアップしてきた。インドネシアは2002年に、春節を国家の祝日にすると発表した。米ニューヨーク州は2004年に春節を全州の法定祝日にし、フィリピンは2005年に春節を全国の休日にした。現在まで世界の十数カ国が中国の春節を自国の法定祝日にした。

このような状況により、世界中の中華系の人々が喜びと安らぎのなかで、仁愛・団らん・調和・勤労といった民族の精神が凝縮した春節を過ごせるようになった。春節はどうして海外でブームになったのか。その秘密を見抜いた外国人もいる。あるフランス人は、楽しさを伝えるという春節の本質は、国際的に通じる特徴を持っていると指摘した。彼はだから、中国の春節は国際的な祝日になると信じているという。

「礼記・学記」には、孔子の言葉として「独学にして友がなければ、孤陋(偏屈)にして見識が狭くなる」と記している。やはり友をつくって、美しいものや素晴らしいものを共有すべきなのだ。文化は交流により豊かになり、文明は相互に学び合うことで、共に発展していくものなのだ。(翻訳 / Record China)

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