アジア太平洋の若者120人のICT学びのイベント、講師には日本人も―ファーウェイ
タイのバンコクで19日、華為技術(ファーウェイ)が公益活動の一環として2008年から手掛けているICT研修プログラムの「Seeds for the Future Program(未来の種)」が始まった。今年はアジア太平洋地域の16カ国から、若者120人が参加した。同プログラムの日程は9日間で、若者はさまざまな“学び”を体験する。今回の「未来の種」はファーウェイと東南アジア諸国連合(ASEAN)ファンド、タイ国政府観光庁の共同主催の形式になった。
■各国の優秀な若者が学習と交流、2021年計画では5年間で200億円の予算
「未来の種」の目的は世界各地の情報通信技術(ICT)人材を育成し、各国や異文化間のコミュニケーションの橋渡しをすることだ。08年以来、21年までに計139の国と地域から累計1万2000人の学生が参加した。参加対象は現役理工系大学生と院生で、大学での成績に基準を設けるなど、特に優秀な若者の参加を念頭に置いている。参加費用は無料だ。クラス編成では各クラスに10カ国以上の学生を割り振る。使用言語は英語だ。
バンコクで開催された「未来の種」は国際大会の性格を持つが、ファーウェイは個別の国でも同様の活動を続けている。例えば日本では同社日本法人であるファーウェイ・ジャパンが中高生などを対象に、「未来の種 JAPAN」の活動を毎年複数回行っている。ファーウェイはデジタル技術の革新と応用により「すべてが結びついた社会を実現させること」を社是としている。また自社が「一人勝ち」するのではなく、産業や社会全体が「底上げ」されてこそ、自社の「生存空間」が広がるとの考えだ。若い世代のデジタル人材を育成する公益事業は同社の基本的な考えに合致することになる。
ファーウェイは21年7月に、「未来の種 2.0計画」を発表している。同計画によれば、5年間にわたって1億5000万ドル(約200億円)を投じて、累計300万人の若者のデジタル技術を向上させることを目指す。その他にも、世界各地の高等教育機関と提携してのファーウェイICTアカデミーの設立やICTコンペティション、奨学金の創設なども行っている。
■日本人講師は自分の使命を探し奮闘するよう訴え、必要な未来像を共に考えた
バンコク市内で19日に始まった「未来の種」では、持続可能な開発目標(SDGs)関連などの人材育成事業を行うWorld Roadの共同代表を務める平原依文氏も講師を務めた。平原氏は8歳の時に中国の小学校に入学し、中学時代以降は、カナダ、メキシコ、スペインに留学した経歴の持ち主だ。日本では早稲田大学国際教養学部を卒業した。
平原氏は今回の「未来の種」で、若者に対してSDGsとICTの関連について語った。また、さらに具体的に「質の高い教育」、「すべての人に健康と福祉」、「産業と技術革新の基盤」、「ジェンダー平等の実現」などについて語りあった。
平原氏は8歳の時から世界各地で生活や仕事をした経験によって、自分の人生の使命を考えるようになったと説明。World Roadでは「地球を一つの学校にする」ことを目指しているなどと述べた。
そして出席した「未来の種」である若者には、自分の人生設計を考え、自分の使命を探し、そのために奮闘するよう勧め、それと同時に世界を探求し、多様な文化を受け入れ、尊重し、自分の生命を豊かにしていく必要があると訴えた。
平原氏と若者は議論の結果、気候変動対策については「科学技術により海洋ごみを有機的に転化する」、「生産チェーン全体を追跡できる仕組みを構築して、各企業がどのくらいの量のごみを生産し、どのくらいの量の炭素を排出しているかを把握する」などを、人の幸せについては「高齢者用アプリを構築して家族のコミュニケーションを便利にし、孤独を緩和する。高齢者の体と心の健康をリアルタイムでモニタリングする」、「高齢者が孤独を感じたらボタン一つでタクシーを呼び出し、わが子がいる場所やその他の場所に行けるようにする」などの実現すべき目標を提出した。(翻訳・編集/如月隼人)