韓中はなぜ抗日戦争の歴史を共同で記念するべきか—韓国独立記念館館長にインタビュー
(中国通信=東京)ソウル14日発中国新聞社電は、「韓中はなぜ共同で抗日戦争の歴史を記念するべきか 韓国独立記念館韓詩俊館長」と題する次のような記事を配信した。
8月15日は日本の敗戦、無条件降伏宣言記念日であり、朝鮮半島の光復〈独立回復〉77周年記念日でもある。この間の抗日の歴史に記録された、中韓両国が共同でファシスト侵略者に立ち向かった物語は、歴史の真相を語り、後世の人にとって忘れられないものだ。先ごろ、韓国檀国大学歴史学部名誉教授で韓国独立記念館館長の韓詩俊氏が中国新聞社「東西問」コーナーの独占インタビューに応じ、韓中共同の抗日戦争史を振り返り、この間の歴史を記念することの現実的な意義について語った。
インタビューの要旨は以下の通り。
問:館長の方から韓国独立記念館設立の背景ときっかけについて簡単にご説明を。
答:韓国独立記念館を設立したのは日本の歴史歪曲(わいきょく)を是正するためだ。1982年、日本は歴史教科書において韓国侵略の歴史を否定しかつ美化した。韓国の国民は大いに憤った。韓国各地で日本の歴史歪曲を非難する会議が開かれ、この過程で独立記念館設立の議論が始まった。子どもから老人まで、多くの国民が記念館設立を求めて寄付をした。1987年8月、われわれは国民が集めた寄付金で独立記念館を設立した。
問:独立記念館には中国にある韓国独立政府の旧跡をめぐる展示ホールが二つあるそうだが、この間の歴史について話してほしい。
答:韓国の独立運動は韓国国内・中国・ロシア・米国・欧州など世界各地で展開されたが、運動の中心は中国にあった。1919年4月、大韓民国臨時政府が中国の上海で成立した。その後、大韓民国臨時政府は1945年に帰国するまで、ずっと中国で活動していた。北部の東北3省・北京・天津・内蒙古・包頭・太行山から南部の上海・広州・昆明・杭州・鎮江・長沙・柳州・重慶まで、韓国独立運動家の足跡は長江の南北に及んだと言え、またこの過程で中国の人民および革命家とも緊密な関係を築いた。
中国における韓国独立運動の歴史を知るため、これまでに韓国側は多くの調査を行った。1991年、われわれは陝西省西安で韓国光復軍の中国での話を調査し、そこで関さんという老人に会った。関さんは韓国光復軍に触れて「光復軍とわれわれは兄弟だ」と話した。この言葉を聞いた瞬間、私は深く感動し、今でも忘れられない。
韓国の独立運動家と中国の革命家にもこうした思いがあり、それを基に厚い友情を結んだ。このような事例は非常に多く、その中には中韓互助社も含まれる。1920年代初期、上海・南京・漢口・長沙・株州など複数の地域で中韓互助社が組織・設立された。中韓互助社は、簡単に言えば韓中両国の人々が参加し、互いに協力をはかる親睦団体だ。
これと同時に、中国の革命家は韓国の独立運動に協力と支援をした。雲南陸軍講武堂、貴陽講武堂のほか、広州の黄埔軍官学校は多くの韓国の青年を入学させて軍事幹部に育てた。これらはすべて中国の革命家たちの手助けによるものだった。
問:共同抗戦史記念分野における独立記念館と中国の機関の交流協力および今後の協力計画について聞かせてほしい。
答:独立記念館建館ではこの35年間ずっと中国の政府や関連機関と緊密に協力・交流してきた。最も代表的なものは大韓民国臨時政府が活動していた上海・嘉興・杭州・鎮江・長沙・広州・柳州・重慶などに大韓民国臨時政府旧跡陳列館を設立したことで、太行山にも朝鮮義勇軍記念館がある。このほか、韓中両国の指導者の心遣いにより、われわれは中国のハルビンに安重根義士記念館を設置し、西安に韓国光復軍駐屯地旧跡記念標石を設置した。
これだけでなく、独立記念館は北京の中国人民抗日戦争記念館、南京の侵華日軍南京大虐殺殉難同胞記念館、瀋陽の9・18歴史博物館といった記念館とも緊密に交流・協力している。中国の多くの記念館とわれわれの独立記念館には抗日戦を紹介、記念するという一つの共通点がある。特に中国人民抗日戦争記念館と独立記念館は同じ時期に設立されており、われわれの趣旨も同じである。独立記念館はこれらの記念館と相互交流協定を結び、資料や学術の交流、交換展示などさまざまなイベントを共同で行っている。それだけでなく、独立記念館は中国の記念館の職員らを招いて韓国語の講習を行うとともに、韓国と中国の歴史についての相互に学習・交流し、これまでにこれらの活動を15年続けている。
今年は韓中国交樹立30周年にあたり、韓国独立記念館と中国人民抗日戦争記念館は交換展示を行う。中国人民抗日戦争記念館は8月11日から独立記念館で中国の抗日戦争関連の記録画の展示を行い、独立記念館は9月3日から北京の中国人民抗日戦争記念館で韓中共同抗日戦争をテーマとする特別展を行う。
問:昨年8月、独立記念館は「韓中共同抗戦」をテーマとした特別展を開いたが、中韓両国が共同抗戦史を記念する現実的な意義は何と考えるか。
答:まず、20世紀前半、韓中両国は日本の帝国主義と戦ったという共通の歴史を持っており、大きな苦痛と試練を経験した。両者は「共通の敵」に抗し、「共通の運命」に臨んだ。最終的に韓国は日本帝国主義の植民地支配から解放され、中国も日本帝国主義の侵略に対する勝利を収めた。そのため、われわれはこのような韓中両国の共同抗戦史を銘記し、記念するべきだと思う。
別の角度からみると、日本帝国主義は20世紀前半に韓国と中国を侵略し、両国に大きな苦痛と試練をもたらし、東アジアの平和を破壊した。それだけでなく、日本帝国主義は韓中両国の民間人に対し非人道的な虐殺を行うとともに、「慰安婦」強制徴用の悪行を犯した。
日本が韓国と中国を侵略したのは明白な歴史的事実だ。南京大虐殺は事実で、「慰安婦」強制徴用も歴史的事実であり、これらの歴史的事実の痕跡は現在でも残っている。われわれのもとには今なお「慰安婦」被害者が生存しており、韓国には「慰安婦」被害者記念館があり、南京にも侵華日軍南京大虐殺殉難同胞記念館がある。しかし日本の右翼勢力は歴史教科書の改ざんによって侵略の歴史を歪曲し、歴史上の犯罪行為を否定しようとしている。そのため、韓国と中国は日本の右翼勢力の歴史歪曲行為に共同で対応するとともに、国際社会に訴える必要があると考える。このような仕事には現実的な必要性がある。
問:日本の右翼勢力による侵略史の歪曲に対応する問題で、中韓両国はどのような協力が可能だろうか。
答:この問題でいくつか提案がある。まず、韓中両国は日本帝国主義の侵略に対する勝利を共同で記念する必要がある。
第二に、韓中両国は相互に協力し、日本との戦いの資料を収集・整理し、韓中共同抗戦資料集を刊行するとともに、両国の学者がこの間の歴史の研究に共同で参加し、学術的な成果を収めることを奨励する必要がある。
第三に、韓中両国は共通の歴史的経験を基礎に、東アジアおよび世界の平和のためにどう貢献するかを模索することができる。
要するに、韓国と中国は20世紀前半に日本帝国主義の侵略によって苦痛と試練を経験しており、「共通の運命」を有し、また相互に協力して日本帝国主義の侵略に勝利した「共通の歴史的経験」を有している。だから私はこれらの歴史的経験を共同で研究・銘記し、日本の右翼勢力の歴史歪曲と侵略史否定の問題に共同で対応するとともに、過去の歴史的経験を基礎に、韓中関係の発展を図る必要があると考えている。
(完)