華流の映像美をつくる「服化道」の舞台裏

歓娯影視文化博物館内の唐の時代エリアに展示されている『大唐流流~宮廷を支えた若き女官』の衣装(左から女性の花嫁衣装、女性の絞り染め普段着、2着とも男性の普段着) 写真/東陽歓娯影視文化有限公司
『宮廷の諍い女』『瓔珞(エイラク)~紫禁城に紫禁城に燃ゆる逆襲の王妃~』(以下、『瓔珞』)『夢華録(むかろく)』 ……。 これら日本の観客を魅了する中国古装ドラマの中で、耽美なシーン、華やかな衣装、個性に溢れる人物 ……。 すべての舞台裏には「服化道」(服装、化粧/髪型、道具)を精巧に作る仕事人がいた。
【服】中国の伝統的服飾美学はほかの追随を許さない。
「服化道」はその名の通り、服飾、化粧/髪型、道具をあらわす。経済の発展、文化的意識の高まり、映画・ドラマの同質化傾向と視聴者の評価基準の厳格化に伴い、現在中国では「服化道」に従事する者はもはやただ「美」という一文字を追求するだけではない。彼らは歴史典籍をめくり、古代の壁画を参照し、さらに無形文化遺産の技術まで使いこなす。「服化道」を通じてリアルに歴史を再現しているのだ。
日本で大ヒットした『瓔珞』で富察(フチャ)皇后が洛神に扮して舞うときの衣装は台北故宮博物館が収蔵する元代の『洛神図』を参考にしたものである。また、吉服は「緙糸石青地八団竜棉褂」を、高貴妃(こうきひ)の真珠雲肩は西太后の写真を、選秀の日に着ているものは「石青紗綴繍八団夔鳳紋女単褂」を参考にしたという。そして、純妃(じゅんひ)が日常的に着る黄色い服は、乾隆時代の「黄色折枝花蝶紋粧花緞衣料」とそっくり同じである。
同ドラマのスタイリング指導をした宋暁濤氏は、「劇中の乾隆帝の緑色の衣装を完成させるのに約半年かかり、20センチに満たない竜の頭の模様には伝統的な『京繍(別名「宮繍」、北京地域を中心とする漢族の伝統的刺繍工芸)』の四つの刺繍法を使って皇帝の高貴さを表しました」と説明した。

中国のスタイリスト・陳敬冉氏 写真/本人提供
2005年のドラマ『歓天喜地七仙女(原題)』の衣装スタイリングやメイクを担当した陳敬冉氏は、「古代の人が制作した美しい衣装には驚嘆させられます。その高度な技術は普通、想像すらできません」と話す。
陳敬冉氏からすれば、中国古代の美意識には無限の広がりがあり、伝統美学を深く掘り下げればその奥深さは無尽蔵だ。盛唐時代のおっとりした美しさにせよ、宋時代の美学の典雅さにせよ、いずれも中国美学の神髄を体現している。

中国のスタイリスト・陳敏正氏 写真/本人提供
スタイリストの陳敏正氏は、2022年第24回北京冬季オリンピックの開会式の衣装デザインを担当した。また、彼は100余りの中国の映画・ドラマ作品の「服化」デザインに参加している。映画・ドラマのスタイリング業界で4年余り活躍してきた陳敏正氏は、1980年代初頭のドラマ『水滸伝』や『宮廷の諍い女』『蒼穹の昴』『影』など多くの名作を担当した。半世紀に及ぶ中国の映画・ドラマ業界の発展をその目で見てきたのだ。
陳敏正氏は「良い映画・ドラマ作品の表現には、70%の歴史的真実味、20%の映画のオリジナリティー、10%の俳優イメージの表現が必要です」と語った。彼はより多くの「中国風」作品を作り、視聴者の中国伝統美学と創意工夫にあふれたデザインへの憧れを満足させたいと願っている。