中国の自動車業界、秩序的な発展へ~過当競争抑止で業界全体の成長後押し

中国の自動車業界が秩序的な発展に向けて動き出した。価格競争や宣伝合戦が激化しており、こうした状況が業界全体の発展の足かせになりかねないためで、7月6日、自動車メーカー16社が『自動車業界の公平な競争市場の秩序維持の承諾書』に署名した。

■公平な競争市場の秩序維持に16社が署名
承諾書の主内容は、◆業界の規則・規定を遵守すること、◆マーケティング活動を規範化すること、◆公正な競争秩序を維持し、異常な価格で市場の公正な競争秩序を乱さないこと、◆マーケティング・宣伝手法に注意を払い、消費者の注目を集め、顧客獲得を増加させるための誇大広告、虚偽広告、誤解を招く宣伝を行わないことーー等など。
16社は◆中国第一汽车集团、◆東風汽车集团、◆重慶長安汽车、◆、◆北京汽车集团、◆広州汽车集团、◆中国重型汽车集团、◆奇瑞汽车、◆安徽江淮汽车集团、◆浙江吉利控股集团、◆長城汽车股份、◆比亚迪汽车工业、◆蔚来控股、◆北京車和家信息技術、◆広州小鹏汽车科技、◆特斯拉(テスラ)汽车(北京)。

■背景~過当競争が企業体力消耗
今回の16社による承諾書署名の背景には、過度の価格競争や宣伝合戦が業界全体の成長の足かせになっていることがある。
中国の自動車市場では今年に入り、値下げ競争が激化。年初にテスラが中国で生産した2車種について過去最低価格に引き下げた。これに続く形で蔚来汽車(NIO)、小鵬汽車(Xpeng Motors)などの新エネルギー(NEV)企業が相次いで優遇策を打ち出し、実質的な値下げを実施した。価格競争はNEVからガソリン車にも波及し、全面的な価格競争が展開されるとともに、宣伝合戦も激化している。
ただ、過当競争は企業の体力を消耗しかねない。実際、価格競争が激化した2023年1~3月期は自動車メーカーの収益性が悪化。国家統計業によると、同期の自動車製造業の利益総額は前年同期比24.2%減の819億元、利益率は前年同期比1.6ポイント低下して3.8%に悪化した。
4月に入り、価格競争がやや下火になり、自動車メーカーの収益性は改善され、1~5月の利益総額は前年同期比24.3%増の1746億元、利益率は0.1ポイント上昇して4.8%に改善したが、利益率は依然として低い。
過当競争により「売れない車」も多数存在する。2022年に販売されたNEVは350車種を超え、1車種当たりの平均月間販売台数は1,000台程度との統計もある。100余りのブランドのうち、NEV事業で利益を上げているのはわずかで、NEV新興勢力である蔚来汽車(NIO)などは依然として赤字が続いている。

 

過当競争から協調発展へ
こうした過当な競争がなぜ起こるのか?業界関係者は「市場の要素だけでなく、非市場的な要素も加わり、市場競争を過激にさせている。不透明で不公平な競争が存在するなど、競争環境は極めて複雑化している」と指摘している。
世界最大の自動車市場である中国だが、2022年末時点の千人当たり自動車保有台数は226台にとどまる。今後は地域間格差の是正に伴い、三線都市、四線都市と呼ばれる地方都市での自動車購入の増加などで、「千人当たり保有台数は400台まで増加することは可能」と予想されている。
こうした中、自動車業界は足の引っ張り合いでなく、協力して業界全体の発展を後押しする必要が出てきている。価格競争や宣伝合戦は企業の体力消耗だけでなく、消費者の信頼を落とし、結果的に業界全体の利益にならないためだ。また、技術の特定分野における特許訴訟、二酸化炭素排出、反ダンピング、貿易保護など世界的な課題に対応し、産業全体のエコシステムを構築していくには、業界全体の協力が必要となっている。
世界一の自動車大国となった中国。EVでのリードなど実力も付けてきている中で、今後は規模だけでなく、収益性の向上など質の高い発展へのシフトに向けて、今回の16社による市場秩序維持の署名の意義が真に発揮されるのか、注目される。

 

 

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