中国共産党の理論誌「求是」に民営企業発展支援の文書掲載
2月16日に刊行された中国共産党の理論誌『求是』では、民営企業の発展を支援する旨の習近平国家主席署名付きの文書が掲載された。2021年以降、アリババなどの民営プラットフォーム企業に対して政府が統制を強め、企業の業績や株価にマイナス影響が及んできたが、ここにきて民営企業の発展を支えるとの方針が強調されている。
■習近平・国家主席署名付き文書で民営企業の発展支援
今回の『求是』では、「現在の経済運営における複数の大きな課題」と題する習近平・国家主席署名付きの文書を掲載した。同文書は2022年12月に開催された中央経済工作会議での習国家主席による重要談話の一部を抜粋したもの。複数の課題として(1)国内需要の拡大に注力する、(2)現代化産業体制の構築加速、(3)「2つの揺るぎないこと」を着実に実施、(4)外資の導入・利用を一段と強化、(5)重大な経済・金融リスクを有効に予防・解消ーーが挙げられた。
■民営企業の重要性を強調
うち注目されるのは(3)。「2つの揺るぎないこと」とは、①国有企業改革の深化と国有企業の競争力向上、②民営企業の発展環境の最適化と民営経済の発展・拡大促進――。つまり、民営企業と国有企業を同列に「2つの揺るぎないこと」として列挙し、民営企業の重要性、政治的位置づけを示した。
そのうえで、民営経済について「経済・社会の発展、雇用、財政・税収、科学技術イノベーションなどにおいて重要な役割を果たす」とその重要性を強調。制度、法律の面から国有企業と民営企業を平等に扱い、政策と世論の両面から民営経済と民営企業の発展・拡大を奨励・支援する必要があるとしている。また、◇法に基づき民営企業の財産権と企業家の権益を保護する、◇企業関連の法律・法規・政策を全面的に整理・改正し、平等な参入に影響する障壁を撤廃する、◇公平な競争制度を整備し、地方保護や行政独占に反対し、民営企業により多くの発展余地を与える、◇中小・零細企業の管理を強化し、中小・零細企業と個人事業主の発展を支援する―ーなどと民営企業のビジネス環境の改善の必要性を訴えた。
さらに、注目されるのは、今回の『求是』には、中国共産党全国工商聯党組の名で「民営経済の発展と拡大促進を堅持する」と題する文書を掲載した。全国工商聯党組は民営企業の財界団体。民営企業を代表する団体が習・国家主席の署名付き文書を補足する形で文書を掲載した格好だ。
この文書ではまず、民営企業が2012年の約1,085万社から2022年には4,700社以上にまで増たことや民営企業による経済への貢献に言及。税収の50%以上、国内総生産(GDP)の60%以上、技術イノベーション成果の70%以上、都市部就業者の80%以上、企業数の90%以上が民営企業によるものとしている。
そのうえで、民営企業の発展に向けイノベーション推進などを実施するとともに、民営企業の発展環境の最適化で、民営経済の発展・拡大を促進する必要性などを強調している。
今回の『求是』への民営企業を支援する旨の文書掲載については、「3月の全国人民代表大会(全人代)の前に重要な経済課題を示し、民営企業の発展が重要な課題の一つであることを示したもの」と受け止められている。プラットフォーム企業に対する規制強化などは、無秩序な発展での肥大化を防ぐためのものともいいえ、民営企業の経済面での役割が高まっている方向性に変わりはない。民営企業に対する政策に引き続き留意する必要がある。