2022年のスマホ市場、出荷数大幅減で在庫増~折りたたみスマホや自主チップ開発などの話題も

2022年、世界のスマートフォン(スマホ)出荷台数は大幅に減少した。これに伴い在庫増が顕著になり、メーカー側は値下げや在庫調整を余儀なくされた。一方、22年のスマホ市場では、折りたたみスマホの販売増、中国のスマホメーカーによる自主チップ開発、衛星通信対応スマホなども話題になった。


■22年の世界のスマホ出荷台数は13年以来の低い水準
 調査機関のIDCによると、2022年のスマホ出荷台数は前年比11.3%減の12億1,000万台。2013年以来の低い数値となった。IDCが先に発表したPCの出荷台数は前年比16.5%減の2億9,230万台だったが、出荷台数自体は新型コロナウイルス流行前の水準を上回っている。一方、スマホの出荷台数はiPhone5が登場して以降で最も低い水準に落ち込んでいる。

■在庫増が鮮明に
 出荷台数の減少に伴い在庫は膨らんだ。出荷台数低迷の要因としては◇世界的なインフレ進行に伴う消費意欲低減、◇中国を中心にしたコロナ禍での景気低迷、◇ユーザーの買い替え需要低迷--などによる需要縮小が挙げられる。供給サイドの要因もある。20年からのコロナ禍で物流が混乱する中、世界的なコア部品が不足したことで多くのメーカーが在庫を積み増した。需要低迷も相まって在庫が膨らみ、一部のスマホメーカーは値下げを実施した。
 ただ、足元では在庫調整が進み、「メーカーの在庫調整は終わりに近づき、今年上半期には市場が改善する」との予想が出ている。とはいえ、スマホ市場が飽和状態に近づきつつある中、今年の出荷台数の伸び率は過去に比べると限定的とみられている。


■折りたたみスマホは販売増
 22年、スマホ販売が総じて低迷する中にあって、販売台数を大幅に伸ばしたのは折りたたみスマホだ。
 折りたたみスマホの投入は、19年にサムスンと華為(ファーウェイ)が先陣を切った。当初は2社のみだったが、21年以降、小米(シャオミー)、OPPO、栄耀(Honor)、vivoなど中国メーカーが相次いで参入した。当初は価格の高さがネックとなっていたが、最近は折りたたみパネルの歩留り改善やヒンジなどコア部品の技術向上に伴い、産業チェーンの成熟化が進み、生産コストが低下してきた。それに伴い、製品価格も低下傾向にあり、販売を押し上げている。調査会社Counterpoint Researchによると、2022年の折りたたみスマホの出荷台数は前年比73%増の約1,600万台に達する見込み。22年第3四半期に限ってみると、中国の折りたたみスマホの販売増加率は114%に達したという。
 折りたたみスマホの登場は、スマホのハイエンド化を後押し、買い替え需要を喚起している。ただ、ハードウェアやソフトウェアの互換性の問題などもあり、「23年以降も折りたたみスマホの販売勢いが続くかは不透明な部分がある」とみる向きもある。

■中国スマホメーカーの自社チップ開発
 前述のようにコロナ禍で世界的なチップ不足が起こったことに加え、米中対立を背景に、中国のスマホメーカーによるチップの自主開発が進んだことも、22年のスマホ業界における話題の一つだ。
 OPPOは21年に初めて自社開発のNPU搭載の画像処理用チップ「MariSilicon X」を発表。22年12月には、Bluetoothオーディオ用SoCチップ「MariSilicon Y」を発表し、Bluetoothオーディオ用チップ分野で大きな一歩を踏み出した。

 OPPOと同じく21年に自社開発チップを投入したのはvivo。画像処理に特化したチップ「vivo V1」を発売し、22年には「V1+」と「V2」の2種類のチップを投入。機能のアップグレードを図った。
 OPPOやvivoの前からチップ開発を進めてきた小米(シャオミー)とファーウェイは、それぞれ開発したチップ(シャオミ―は「澎湃」、ファーウェイは「麒麟(Kirin)」)が既に数世代を経て、実用化を実現している。
 現在の中国の大手スマホメーカーの自社開発チップは、画像処理やバッテリー管理、Bluetoothなどに集中している。チップ開発で各社はブランドの差別化を明確に示すとともに、ハイエンド市場への進出の足がかりとしている。さらにチップの自社開発は、コア技術を自社で確保できるとともに、生産コストを引き下げられるといったメリットがある。

■通信衛星に対応のスマホ登場
 22年は通信衛星対応のスマホにも注目が集まった。22年9月、ファーウェイが発売した「Mate50シリーズ」には、中国が独自開発した衛星測位システム「北斗」を通じてショートメッセージを発信できる機能が加わった。この機能の最大の利点は、携帯電話の電波が届かない場所でも、位置やショートメッセージなどの情報を発信できることにある。
 全般に飽和感が出ているスマホ市場。23年はどのような新機能で消費者の需要を喚起できるのか、スマホメーカーの底力が試されそうだ。

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