中国、EVの値下げ相次ぐ~テスラに続いてベンツも

中国で大手自動車メーカーによる電気自動車(EV)価格の値下げが相次いでいる。メルセデス・ベンツは、11月16日から中国でEVブランド「EQ」の価格を引き下げると発表した。テスラの値下げに続くもので、自動車大手が値下げの「陣営」に加わる形となった。値下げは販売台数の短期的な押し上げ効果が期待される一方、原材料価格が高騰によるコストが増大する現在、シェアを維持するための値下げ販売は収益悪化要因になりかねないと懸念する向きもある。

■販売目標達成に向け販売促進を強化

年末に入り、自動車メーカーの一部は年間販売台数を押し上げるため、値下げや割引を通じた販売促進を強化している。ベンツもその一社で、新型EV「EQE 350」の価格は47万8,000元~53万4,300(価格調整前の52万8,000元~58万5,000元)に、「EQS」の価格は84万5,000元~131万4,000元(価格調整前は107万4,700元-151万3,600元)に引き下げ。また、新型「AMG EQS 53」は154万7,000元(価格調整前は174万5,600元)にしている。

ベンツに先駆けてテスラも先ごろ、一部車種の値下げを発表。最大値下げ幅は3万7,000元となった。中国メディアによると、問界、小鵬汽車(Xpeng Motors)、理想汽車(Li Auto)など中国のEVメーカーも販売優遇措置を強化しているという。

販売促進の背景には、今年に入ってから、部品不足やサプライチェーン停滞などの影響で、自動車メーカーの年間販売目標の達成が難しくなっている状況がある。今年9月時点での年間販売目標に対する進捗率は、好調な比亜迪(BYD)が約80%に達しているのに対し、テスラは約60%。約3割の自動車メーカーは進捗率が50%に満たない水準だ。こうした状況下、年末にかけて各自動車メーカーは年間販売目標を達成するため、販売を強化して手元受注の消化を加速するとともに、新規受注数を押し上げるとみられている。

■コスト圧力強まる中での値下げの行方は?

自動車メーカーにとって値下げは目先の販売を押し上げ効果が期待される一方で、電池などのコストが増大する中での値下げは、収益性の一段の悪化要因になりかねないとの指摘もある。

足元では電池などのコストの増大が収益圧迫要因になっている。例えば、長安汽車の朱華栄・董事長はこのほど上海で開催された「2022中国自動車フォーラム」で、最近の動力電池価格について「上昇が続き、完成車のコストの40%を超えている」と指摘。小規模なメーカーの中には50%を超えるところもあり、コスト増大圧力が強まっているという。

価格調査会社・生意社の統計によると、11月15日時点で電池グレード炭酸リチウムは58万7,000元/トン。年初に比べて約120%上昇し、2021年初めの5万3,000元/トンからは10倍にもなっている。価格上昇の背景には需要が拡大している一方、供給がひっ迫してことがある。こうした需給ひっ迫は「2023年前半も続く」と予想される中、当面は自動車メーカーにとって業績を左右する要因として販売動向とともに、電池などのコストの推移が注目されよう。

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