中外対話|米国はなぜ「小さい勢力圏」をつくることに熱心なのか

中新社記者 彭大偉 闞楓

現在、世界は100年来の非常事態と世紀の感染爆発が交錯し、「灰色のサイ」と「黒い白鳥」が次々に現れて世界は不確実性に満ちている。人々は未来に期待と戸惑いを抱いている。

しかし、世界が最も力を合わせて困難を乗り越えなければならないときに、欧米の一部の国々は自分たちの身勝手な理由で一方的な制裁や「ロング・アーム管轄権」に訴え、関係を断ち「小さな庭に高い壁」を築くと主張している。

世界中の何十億人という人の生活を向上させてきたグローバル化は、本当に終焉を迎えるのか。世界情勢に影響を与える中米関係の今後の見通しとは。中新社の「東西問 中外対話」では、米国ワシントンのシンクタンクのグローバル安全保障分析研究所共同所長であり米国エネルギー安全保障評議会上級顧問であるガル・ルフト(Dr. Gal Luft)氏を招き、中国人民大学国際関係学院副院長兼教授の翟東昇氏、中国国務院発展研究センター世界発展研究所元副所長で研究員の丁一凡氏と座談会を行った。

座談会の概要は以下のとおり

米国が中国を封じ込めるために、なぜ「小さい勢力圏」をつくることに熱心なのか。

中新社記者:現在、米国が推進しているインド太平洋経済枠組み(IPEF)についてどう思われますか。

ガル・ルフト:この構想に参加している国が、インド太平洋経済枠組み(IPEF)を熱心に推進しているとは思いません。2年後の別の大統領がこれを覆すかどうか、どうしてわかるのでしょうか。米国の政権交代後の変化を、私たちは目の当たりにしてきました。また、この構想に参加する国々は、その大多数にとって最大の貿易相手国である中国との関係を損なうようなことはしないでしょう。

翟東昇:この1年半、米国政府は多くの新しい言葉を生み出しましたが、これらの新しいプログラムは実質的な成果を上げていません。米国内では、民主、共和両党の間、あるいは同じ党でも派閥間で政治的な大きな違いがあり、どうにもならないのです。これはIPEFの宿命とも言えます。

丁一凡:ASEAN諸国のほとんどはIPEFに関心がなく、インドさえもあまり関心がないようです。米国は、これらの国々にどちらか一方を選ばせたいのだが、これらの国々は地域のすべての国々との協力関係を維持したいのです。中米関係が良好であれば、これらの国はより有利な立場に立てるでしょう。中国との関係をたつ代償が莫大だからです。米国は、これらの国々が中国から切り離されることを望んでいますが、米国は準備ができていないか、援助する能力がないのです。

中新社記者:米国が中国を封じ込めるために、なぜ「小さい勢力圏」をつくることに熱心なのでしょうか。

丁一凡:米国は、世界中に数百の軍事基地を持っています。その維持をするために多額の資金を費やし、(基地がある)国々との同盟関係を動かす必要があります。 冷戦後、このような同盟関係を維持するためのコストはますます高くなっていきました。 したがって、米国はそのような同盟を維持するために、外的なターゲットを見つけなければなりません。 ヨーロッパでは、ロシアがいなければ、米国はNATOの枠組みを維持する理由がありません。 アジア太平洋地域では、米国は中国に追いつかれることを恐れ、覇権を維持するために、さまざまな方法で中国の行く手を阻んでいます。

中国は米国の衰退を映し出す鏡のようなもの

中新社記者:中米関係が現在困難になっている主な理由は何でしょうか。

ガル・ルフト:米中間の問題は、中国が何をしているか、具体的な行動を起こす必要があるかということではありません。 さらに深い理由は、中国が米国の衰退を写し出す鏡のようなもので、米国が世界をリードできないこと、さらに言えば米国が分裂していることを表しているからです。

中国とはそういうものであり、中国は米国をなだめるために「アメリカになる」ことはありません。 米国は、中国にそうすれば両国関係に新しい章が開かれると言っているのではありません。中国に貧しくて取るに足らない地位だった20年前に戻るよう求めているのです。 それはあり得ないことです。

丁一凡:米国の政治システムでは、困難に直面したときに外敵を探し、一致団結する方法をとる傾向にあります。米国は近い将来中国に追いつかれるかもしれず、これを大きな脅威と捉えています。米国が失敗すればするほど、中国を敵視するというのは、ルフト氏の言うとおりだと思います。

翟東昇:中米関係が最終的に安定を取り戻し、新たな均衡を得るのはいつになるのでしょうか。おそらく、中国の経済規模が米国を大きく上回り、軍事力も重要な点で米国を上回ることができたとき、中国は平和的台頭と人類共通の未来への約束を果たすことに力を尽くすでしょう。そうすれば米国の政治的指導者も冷静になって、ますます多くの政治家たちが中国を脅威ではなく、潜在的なパートナーとみなすようになるはずです。

「グローバル化」は「リージョナル化」へと変わっているのか

中新社記者:なぜ、ここ数年グローバル化はこれほどまでに大きな挫折を味わったのでしょうか。この傾向の主な特徴は何でしょうか。

丁一凡:グローバル化は、アメリカを中心とした先進国やヨーロッパの一部の国々で社会的再分配によって推進されてきました。しかし、欧米の先進国は、グローバル化の最大の受益者は新興国であり、グローバル化が自国の利益を損ねると考えています。そのため、グローバル化の流れを逆転させたいと考えています。

米国は、国家介入の復活を公然と説き、新自由主義に反対しています。そのため、欧州議会の議員や米国議会の議員たちは、多国籍企業の復活を主張するか強制しており、世界的に、特に開発途上国に長期的なスタグフレーションのリスクをもたらしています。

ガル・ルフト:グローバル化は欧米の取り組みであり、脱グローバル化も同様であります。欧米は今でも、あらゆる秩序や無秩序の立案者であり、自らやっていることなのです。私たちは、多くのグローバルな課題に直面する中で、グローバル化が各国間の相乗効果を生み出すことなく、それぞれの国や地域が自分たちのために機能していることを見てきました。これは、私たち全員「地球村」の一員であるという警告なのです。しかし、実際に試練に直面すると、グローバル化は惨憺たる結果に終わりました。

脱グローバル化の傾向がますます強まり、グローバル化からリージョナル化への移行が見られるようになります。世界は地理的な次元に沿って小さい連合に分割され、地域レベルでのグローバル化が可能になるが、地域外への依存度は低くなると思われます。

中新社記者:現在の多国間の自由な世界貿易秩序は、脱グローバル化によって何らかの形で終焉を迎えるのでしょうか。同時に、米ドルの覇権は終わるのでしょうか。

ガル・ルフト:私は、『脱米ドル化―ドルへの反乱と新たな金融世界秩序の台頭』という本を書きましたが、米ドルへの反乱について述べています。今日、私たちが見ているのは、国々が次々に起こしている一国の通貨、一国の覇権に対する反乱です。同時に、米国もその経済力を使って、脅迫、制裁、恫喝をしています。  

ウクライナ情勢を通じて、欧米が通貨を武器にしていかに悪質な行為を行うかを各国は目の当たりにしました。米国が他国の中央銀行の資産を凍結するケースは、一年足らずの間に、アフガニスタン、ロシアとすでに2件発生しています。これは通貨の歴史において前代未聞のことであり、どの国も不安を感じています。米国はそのためにより多くの代価を払うことになるでしょう。

翟東昇:世界貿易は今後も続くが、おそらく今後数十年は現在の水準で長期間にわたり停滞すると思われます。収益性よりも、サプライチェーンの安全、安定性を重視する国が増えたからです。そして、米国は自国の通貨特権を濫用しており、この特権が終了または消滅する可能性があります。世界貿易全体の決済と評価のための新しいモデルやソリューションを定めるために、だれかが立ち上がらなければなりません。

丁一凡:世界の貿易が劇的に縮小するはずがありません。中国の国際貿易額を見ると、EU

は依然として中国の最大の輸出市場であり、米国も同様です。さらにASEANと「一帯一路」諸国という第三の市場が拡大しています。ASEAN諸国への輸出は中国の輸出の第三の柱となり、貿易はより多様化しています。

脱米ドル化は長期的な現象です。短期的には、国際情勢は依然として混沌としており、米ドルが支配的ですが、これは短期的なものです。米国の債務はGDP(国内総生産)に比べて非常に急速に増加しており、このような紙幣印刷システムを維持することは米国経済にとって非常に危険なことです。

【編集 田博群】

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