中国式近代化はどのようにして新しい道を開くか 鄢一竜清華大教授論文

 (中国通信=東京)北京17日発中国新聞社電は、「中国式近代化はどのようにして新しい道を開くか」と題する清華大学国情研究院副院長・公共管理学院副教授の鄢一竜氏の論文を掲載した。

 中国共産党第20回全国代表大会の報告は中国の今後5年間に決定的な影響を与え、中国の今後30年間の発展に深遠な影響を与え、世界に重要な影響を与える歴史的な里程標となる報告だ。報告における最も核心的な内容の一つが、社会主義近代化の全面的建設のための壮大な青写真を系統的に設計したことであり、これは中国が社会主義近代化の全面的建設の新たな段階に入ったことを示している。

 ◇「中国式近代化」とは何か

 報告では、現在より、中国共産党の中心的な任務は、全国の各民族人民を団結させ引っ張って、近代的社会主義強国を全面的に建設し、第二の100年の奮闘目標を実現し、中国式近代化によって中華民族の偉大な復興を全面的に進めることであると指摘している。

 その上で、報告は人口の規模が大きい、全人民が共に豊かになる、物質文明と精神文明の調和がとれている、人と自然が調和し共生する、平和的発展の道を歩むという中国式近代化の五つの特徴を挙げている。また九つの本質的な要求として以下のように列挙している。中国共産党の指導を堅持する、中国の特色ある社会主義を堅持する、質の高い発展を実現する、全過程における人民民主主義を発展させる、人民の精神世界を豊かにする、全人民の共同富裕〈共に豊かになる〉を実現する、人と自然の調和と共生を促進する、人類運命共同体の構築を後押しする、人類文明の新しい形態を創造する。

 報告はさらに、近代的社会主義国の全面的な建設のために10方面の系統的な設計を行っている。質の高い発展は第一に重要な任務であり、教育・科学技術・人材は基礎的・戦略的支えであり、全過程の人民民主主義は当然のことであり、全面的な法に基づく国家管理は既定の路線であり、中国の特色ある社会主義文化の発展は重要な内容であり、内在的な要求は人と自然の調和と共生であり、戦略的な要求は国防と軍隊の近代化であり、土台となるのは国の安全保障体系と能力の近代化であり、国際的な取り組みは人類運命共同体の構築であり、カギは党の指導と党の建設という偉大な工事である。

2022年10月11日、北京にて「奮進新時代成就展」を見学する観客たち=田雨昊撮影

 ◇なぜ「中国式」の近代化なのか

 中国式近代化は西洋化ではなく、この世の中で前人未到の新たな道である。「長い16世紀」以降、人類文明は数千年間なかった大きな変局に見舞われ、西洋は人類文明という列車の後部車両からけん引車両へと躍進するとともに、「全人類のために法をつくる」権利があると宣言した。西洋世界が示した強大な武力による脅威、物質的な先進性、精神的な優位性の圧力の下、西洋と非西洋のあらゆる差異が近代と前近代の差異であるとみなされ、他の国は全面的に西洋化するか、近代化の船に乗る切符を手に入れられないかだとされた。中国式近代化の成功はこうした盲信を大きく打ち破り、数世紀にわたる西洋中心主義の近代化という神話から人々を真に目覚めさせ、いわゆる「近代性」は西洋式近代化にすぎないと認識させた。中国式近代化は中国のものだが、世界のものでもあり、西洋以外の諸国が独立自主で近代化を模索するための新しい道を切り開き、他の発展途上国のために近代化の新たな道筋を広げ、人類が近代化を実現するための新たな選択肢を提供した。

2022年8月、中国国家博物館にて「征程:迎接慶祝党的二十大勝利召開書法大展」を鑑賞する観客=田雨昊撮影

 中国式近代化は「一統多元」〈統一された多元社会〉という伝統文明の「旧邦新造」〈維新〉である。西洋式近代化は西洋文明という母体に根差したものであり、そうであるからこそイングランドには1000年にわたる長い「近代性」の射程(Long Bow Arc)があると考える学者がいるのだ。皮肉なことに、この種の歴史に対する考察自体、多くの学者が得意げに語る「近代性」はかなりの程度で西洋性にすぎないことを示している。

 中国式近代化は断流ではなく、中華文明という川の新たな流れである。歴史において、西域の文化が伝わったことや、仏教が伝わったのと同様に、近代西洋文明の流入も、中華文明の河道をさらに広げ、それによって、川の水が勢いを増し、果てしなく続き、まっしぐらに進んで、人類文明の新しい形態を創造するようになっただけだ。

 「周虽旧邦、其命維新〈周は古い国だが、その天命は新しい〉」という。中華文明の基本的な特徴は「一統多元」で、その最も大きな制度的遺産は「大一統〈天下統一〉」であり、近代的政治制度とされる強大な統一国家は2000年余り前の秦帝国ですでに出現しており、フランシス・フクヤマ氏は「マックス・ヴェーバーが本質的な近代の特徴としたものを、秦朝はすべてとは言わないが、少なくともそのかなり多くを有している」と述べているほどだ。近代的な政治制度の特徴とされる「集中もし、委譲(Devolved)もする混合権力体系」は、中国の歴史において早くから出現しており、それが「封建の意を郡県の中に寓(ぐう)する」〈封建制と郡県制を結合すること〉、「皇権、県政に及ばず」〈中央政府の権限が末端の県より下まで届かないこと〉である。この意味で言えば、中国にも数千年にわたるいわゆる「近代性」があることになる。

 1840年以降、近代化によって国を救うためさまざまな主張が相次いで現れたが、どれも成功しなかった。これらのプランは真に革新的ではなかったか、「大一統」体制を破壊していたため、中国は砂のようにばらばらになり、軍閥が割拠する局面に陥った。新中国はより高いレベルで「大一統」体制を再構築し、中国の工業化・近代化のための根本的な制度的基礎を築くとともに「一体多元」をかつてないレベルにまで高めた。一方で、近代的交通と近代的情報技術、水平的・垂直的に徹底した強大な組織体系、大事業に集中的に取り組める社会主義の制度的優位性などが、「大一統」体制を歴史上未曽有のレベルにまで高めた。もう一方で、「大一統」体制を基礎に、民族区域自治・信教の自由・市場化・社会建設・行政分権などの方式を通じて多元性が同じくかつてないレベルに達した。こうした「一体多元」は現代中国の体制が強力であるとともに、生気にあふれ、活力に満ちている根本的な淵源(えんげん)である。

 ◇中国式近代化の「新しさ」はどこにあるのか

 中国共産党の創立は中華民族の発展史上で天地開闢(かいびゃく)ともいえる大事件であり、近代以降の中華民族が衰退から復興に向かう上で最も肝要なことであった。中国共産党の指導があったからこそ、中華民族は近代化につながる光明の道を見つけられたのである。新民主主義革命の勝利と新中国成立は、中国が近代化に向かう根本的な前提を築いた。新中国成立以降、幾多の曲折を経たが、社会主義近代化という目標は一貫したもので、100年にわたって段階的に実施する大戦略だった。世界を見渡せば、中国人が一代また一代と続け、次々にバトンを受け継いで前へ走り、同じ目標を実現するために奮闘を続け、100年の長征という民族近代化の叙事詩を紡いできたのは得難いことである。

 中国式近代化は物質の近代化・制度の近代化・人の近代化の三位一体である。「立ち遅れればやっつけられる」、中国が西洋式近代化を最初に痛感したのはその船舶や大砲であり、中国の科学技術の遅れであった。中国式近代化は第一に物質的な力の近代化であり、20世紀に提起された「四つの近代化」から党19期5中総で提起された近代的な経済システムの建設・産業チェーンの近代化・農業農村の近代化・国防と軍隊の近代化、さらに第20回党大会報告で提起された「しっかりした物質的技術的基礎がなければ、近代的社会主義強国を全面的に完成させることはできない」にいたるまでどれも、物質的な力の近代化こそが立ち上がる、豊かになる、強くなるの飛躍を実現できることを一度ならず物語っている。

2022年9月、広東美術館にて「嶺南新気象:広東喜迎党的二十大美術作品展」を鑑賞する観客たち=許建梅撮影

 中国式近代化は制度の近代化でもある。甲午〈日清戦争〉敗戦の後、中国人の反省はモノのレベルから制度のレベルに進み、これにより制度近代化の追求が始まった。新民主主義革命の勝利はそのための地ならしをした。新中国成立後、中国人は新しい制度のビルを建設し始めるとともに、改革と調整によって、安定した四梁八柱〈屋台骨〉を次第に形成した。第18回党大会以降、中国共産党は社会主義制度体系の自己完備と国政運営体系と運営能力の近代化を改革の全般的目標にすると明確に提起した。第20回党大会報告ではさらに、国家安全保障の体制と能力の近代化を明確に提起した。まさに社会主義の制度的優位性と強大な国政運営体系が、中国の物質レベルの近代化を支え、さらに近代的社会主義強国実現の目標を支えているのだ。

 中国式近代化はさらに人の近代化である。新中国成立前、中国の平均寿命は35歳しかなく、人口の約80%は読み書きができなかった。こんにち、中国の平均寿命は米国を超え、78・2歳に達し、就学期待度は14年に達し、世界平均レベルを1・3年上回っている。人の近代化は個体の近代化であるだけでなく、人民の近代化でもあり、人民は個体という意味でより独立し自主的になるだけでなく、全体という意味で共同の意志を持ち、共同の行動をとる共同体に一層結集されている。中国の社会は「原子化され、各分野が分立した、個人主義の」西洋式近代社会に変わっておらず、個体が自主的でありながら有機的に団結し、分業しながら緊密につながり、個人と団体、国家の運命が結びついた新しいタイプの近代社会になっている。

2022年10月13日、北京城市副中心劇院を見学、取材する記者たち。同日、中国共産党二十大新聞中心が国内外の記者たちを招き、北京城市副中心(副都心)の見学、取材イベントを開催した=田雨昊撮影

 中国式近代化はいかにして人類の新しい道を切り開くのか

 世界を見渡すと、中国の近代化の道は三つの大きな神話を打破した。第一に、発展途上国の近代化の「ガラスの天井」を打破した。第二に、資本主義制度だけが近代化可能であるという神話を打破した。第三に、西洋列強の近代化過程における「国強必霸」〈国力が強くなれば必ず覇権を求める〉というパラドックスを打破した。

 中国式近代化は社会主義近代化の新しい道となる。中国は社会主義の制度的優位性を発揮するとともに、市場経済など人類の制度文明の成果を取り入れ、すでに人類の歴史で規模が最も大きく、速度が最も速く、持続期間が最も長い経済発展の奇跡および社会が長期にわたって安定を保っている奇跡を生んだ。中国式近代化は西洋式の「昇平の世」を建設するのではなく、「太平の世」を実現し、小康から大同へとつき進もうとするものである。

 米国は世界で最も発達した資本主義近代国家だが、2021年には、上位3人の富豪が全人口の半分に相当する富を独占していた。これらのエリートたちは「宇宙への進出」の野心をたぎらせ、仮想空間「メタバース」の「新たな神」になろうとしている。一方で、少なくとも40%の米国人は400㌦の蓄えもなく、50万人余りがホームレスになっている。中国式近代化は二極化したエリート世界になろうとしているのではなく、全人民が共に豊かになる大同の世界を建設しようとしているのであり、これは人類の近代化に新たな青写真を提供するだろう。
 中国式近代化は運命を共にする人類近代化の新しい道となる。西洋式近代化と違って、中国は十数億の人民の勤労革命・革新革命によって豊かになっている。中国は「国強必霸」ではなく、「国強好仁」〈国が強くなると仁を好む〉であり、戦争や動乱、苦難を輸出するのではなく、世界に巨大な発展のチャンスをもたらし、世界各国を中国の発展という急行列車に相乗りさせている。世界に覇を唱え、唯我独尊になっておらず、真の多国間主義を揺るぎなく守り、人類運命共同体の構築を後押ししている。中国式近代化が進むのはグリーン近代化であり、人と自然の生命共同体を構築し、美しい中国・美しい世界を建設する。関係の研究によると、1990年から2016年の間だけでも、世界の森林炭素貯蔵能力に対する中国の実質寄与率は247・1%にも上っている。

2022年10月17日、北京軌道交通指揮中心にて見学取材し、地下鉄運転体験をする記者たち。同日、中国共産党二十大新聞中心が国内外の記者たちを招き、北京軌道交通指揮中心の見学、取材イベントを開催した=田雨昊撮影

 西洋人はよく「全ての道はローマに通じる」と言うが、中国人はよく「処処緑楊堪系馬、家家門底透長安」〈どこにでも馬をつなぐ木があり、どの家からでも長安にいたる道がある〉と言う。人類の近代化への道は単一ではなく、近代化モデルはなおさら唯一無二ではない。中国式近代化の道は人類に近代化を実現するための新しい選択肢をもたらし、21世紀の近代化の新しい道を切り開き、人類文明の新しい形態を創造するだろう。

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