「一帯一路」はどのようにユーラシアに利益もたらすのか―新疆の研究者が紹介
2022年は中国が「一帯一路」の構想を明らかにして9年目の年だ。中国が主張する「参加各国がウィンウィン」の状況はいかに構築されるのか、ユーラシアにいかにして利益がもたらされるのか。新疆社会科学院経済研究所の王宏麗副院長はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、ユーラシアの広い範囲における「一帯一路」にまつわるさまざまな状況を紹介した。以下は王副院長の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。
■まずは各地の産物を円滑に動かす「物流ルートの建設」が決め手
広大なユーラシア大陸では地域により条件が大きく異なるために、土地によって強みを持つ産物もさまざまだ。カザフスタンの小麦や食用油、パキスタンのグワダル港で水揚げされる海産物、グルジアのワイン、ウズベキスタンのチョコレートやキャンデー類、ビスケット、アゼルバイジャンのジュース、マレーシアのコーヒーなど、食品類だけでもきりがないほどだ。物流のレベルを向上させれば、さまざまな品が各国の人々の家庭にスムーズに入っていくことになる。
中国では、西部にある新疆と国内中部や西部を結ぶ、北・中・南の三大ルートが形成された。さらに新疆ではインフラ建設も進んでおり、通関に必要な時間も短い。これらは、新たな物流のシルクロードを円滑に機能させるための重要な支えだ。
■中国国内の建設だけでは完結しない、国際協力が不可欠だ
もちろん、物流ルートの建設が中国国内だけで完結するわけではない。中国は現在、パキスタン、モンゴル、ウズベキスタン、キルギスと国際鉄道路線の建設を加速することについての交渉をしている。また新疆はカザフスタン、キルギス、タジキスタン、パキスタン、モンゴルの5カ国それぞれと、交際道路運輸についての双方向協力を行っている。新疆と周辺国家の間で開通した国際道路運輸ルートは107本に達した。
「一帯一路」によって、中国と世界が連動して発展する状況が加速する。例えば、中国の「一帯一路」の提唱とカザフスタンの開発計画は融和点が多い。そこで中国のバス製造会社である宇通公司とカザフスタンの技術企業が合弁で、電動自動車と欧州のユーロ5の排気ガス基準を満たす環境保全型のバスを生産する工場を建設した。カザフスタンの首都であるヌルスルタンの市民は、電動バスを利用することになった。
キルギスは「一帯一路」を最も早く支持し、積極的に参加した国の一つだ。両国の協力は長年に渡り、多くの成果をあげてきた。例えば中国の専門家の協力を得て、キルギスの首都であるビシュケクから標高が約2000メートルの同国中部のナルンを経由して、中国との国境の街であるトルガルトに達する道が建設されたことなどだ。文化や教育の分野でも、両国の協力は双方に強大な力を注入している。現在はキルギスの学生4000人が中国の大学で学んでおり、キルギスの若い世代は中国に対する関心を高めつつある。
■中国国内経済と国際経済の接合地点の新疆に大きなチャンス
中国は現在、国内の経済循環を主体にして、国内の経済循環と国際的な経済循環を接合させる開発パターンを進めている。経済における開放をさらに高い水準にして、次に国内の経済大循環の建設に注力し、国内外の経済循環の接合を進める順番だ。
そのために「新時代に西部大開発を推進し新たな枠組みを形成することに関する指導意見」など、長期展望による政策方針が定められた。そして「高利便性、経済的で高効率、環境配慮を集約、スマートで先進的、安全で高信頼性」といった特徴を持つ、質の高い立体的な国家総合交通網の建設が進められることになった。
中国は交通運輸の分野でも、レベルの高い海外開放を進めることで、総合的な運輸の大きなルートを建設し、総合的な交通の枢軸を発展させている。そのことにより、交通や観光などの産業が融合して発展していくことになる。
このような状況により、地理的な位置からして新疆の重要性はますます高まっている。今後は道路、鉄道、航空、パイプライン、さらには電力、電信、郵政、税関、品質検査などの分野で、各地域や国が個別に構築を進めるのではなく、技術標準などに整合性を持たせていく動きが、改めて急速に進むだろう。交通インフラ網に支えられた運輸サービス、情報ネットワーク、エネルギーネットワーク、産業の配置などで複数の地域が協調して発展する未来は、シルクロード経済ベルトの中核地域である新疆に、より多くの発展のチャンスをもたらすことになる。(構成 / RecorChina 如月隼人)