カザフスタン国家博物館館長:シルクロードにおける文明は如何にして切磋琢磨すべきか?

同じくアジア文明に属する中国とカザフスタンは、長年にわたって良好的な文化交流と提携関係を維持し、そして、双方の違いを尊重することに基づき、如何にして互いの文明を切磋琢磨できるかを絶えず模索している。


近日、カザフスタン国家博物館館長ムハメジウレ氏は中国新聞社“東西問”の独占インタビューを受け、中央アジアで最大の博物館が秘蔵している中国関連の文物、昔のシルクロードで異なる文明と文化間の交流を示す文物、それからカザフスタン国博と中国博物館の提携の物語や、異なる文明間には如何に認知の境界を拡大するのか、などについて語ってくれた。


以下にインタビューの実録を要約する:
中新社記者:開館の歴史が長くないカザフスタン国家博物館は中央アジアで最大の博物館です。博物館はカザフスタンの文化においてどのような役に立っているとお考えでしょうか。


ムハメジウレ氏:博物館は世界文化発展の中で特別な役に立っています。カザフスタン国家博物館は中央アジアで最も大きい博物館として、国家“文化遺産”計画の実施の一部です。2013年7月2日をもって建設工事が終わりました。今、この博物館はカザフスタンの国家歴史と芸術所蔵品の宝庫となっています。それだけでなく、カザフスタン国家博物館は重要な文物の修復や研究機能を備えており、それから文化教育を担う総合文化センターにもなっています。


カザフスタン国家博物館の総合建築面積は7.4万平方メートルで、館内では14個の展示室を設けており、1万点以上の宝物を展示しています。建築の規模から言えば、カザフスタン国家博物館はロシアのエルミタージュ博物館、フランスのルーブル美術館、アメリカのメトロポリタン美術館と並んで、世界トップ10の博物館に入っています。

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カザフスタン国家博物館。中国新聞社 張碩記者 撮影

中新社記者:“黄金武士”はカザフスタン国家博物館の「鎮館の宝」ですが、その歴史と考古学における意義は何でしょうか。“黄金武士”はかつて中国で展示されたことがありました。なぜ中国が展示国に選ばれたのでしょか。


ムハメジウレ氏:“黄金武士”の俗名は“金人”といいます。それが1969年に著名な考古学者、カザフスタン国家考古学の創始者でもあるアキシェフ氏によってアルマトイのイセク墓で発掘されました。これによって、我々は古代サカ時期の“金人”をカザフスタン国家の建国の歴史と関連付けることができたのです。“黄金武士”はカザフスタンの歴史上最も重要な国家秘蔵の宝物です。


“金人”の服飾は4000余りの金箔で、多様な金属加工技術を用いて作られています。先人の優れた腕前を示しただけではなく、金箔に刻まれた模様も深く哲学の意味を表しています。


古墳内で黄金製品の他、考古学隊は外側の底辺に銘文つきの小さな銀のお椀を見つけました。銘文には26個の字母からなっており、2行平行の形でお椀の底に並んでいます。専門家は未だに銘文の意味を解読できていませんが、これらの文字は古代サカ部落に何らかの特殊な字母と文字体系が存在していたことの証だと確実に言えます。


これまでに、カザフスタン国内で9個の“金人”が発掘されました。2017年、“精神復興国家プロジェクト計画”を実施するために、カザフスタン国家博物館は“金人巡回世界博物館”の展示計画を開始しました。この計画に基づいて“偉大な草原歴史と文化遺産”をテーマにした展示会が多数の国々や地域において行われました。4年間にわたって、“金人”は中国、ロシア、ベラルーシ、ウズベキスタン、アゼルバイジャン、北マケドニア、ポーランド、韓国、トルコ、マレーシア、インド、ギリシャ等の国々の国家博物館で展示されていました。


中国で展示会を行ったのは偶然の選択ではありません。まず、カザフスタンと中国とは永久的かつ全面的な戦略パートナーであり、両国は政治、経済、文化などの発展においては相互の支持関係となっています。次に、中国は豊富な歴史文化の蓄積があり、中国民衆は外国の文化に深く関心を持っていることが見受けられます。展示期間の2か月で約百万人の中国人が展示場に訪れたことも、われわれの判断が正しかったことを物語っています。

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カザフスタン国家博物館“黄金武士”(俗名“金人”)、1969年に著名な考古学者、カザフスタン国家考古の創始者でもあるアキシェフ氏によってアルマトイのイセク墓で発掘された。中国新聞社 張碩記者 撮影

中新社記者:近年、諸博物館の間の交流が益々緊密となっていますが、カザフスタン国家博物館と中国との提携にはどのようなものがあるでしょうか。


ムハメジウレ氏:カザフスタン国家博物館は中国政府と様々な文化活動を行ってきました。たとえば、中国の文教組織といくつかの提携の覚書を調印しました。2015年に西安大唐西市博物館と、2017年上海博物館と、それから2018年に西北工業大学と協力の覚書を調印しました。


このほか、中国と共同で多数の文物展示を行ってきました。2017年のアスタナ万国博覧会で中国館の人文交流活動の一環として、秦の始皇帝の兵馬俑が6月にカザフスタン博物館で展示されていました。翌年の7月に、”金人巡回世界博物館”展示の目的地の一つとして、カザフスタン国家博物館は陝西省歴史博物館で”偉大な草原遺産:珍宝芸術”展を開催しました。


また、両国の間では様々な形式のセミナーが行われてきました。たとえば、2018年に中国はカザフスタンの諸博物館の管理者を対象に博物館関係のハイレベルのセミナーを開催して、カザフスタン国家博物館から15名のスタッフが参加して、北京、長春、ハルビンなどの実地見学をしました。


総じて言えば、カザフスタンと中国の間で実施された連携プロジェクトおよび交流活動はすでに両国の文化交流の領域に拡大し、歴史文化遺産の普及や経験の共有を促し、国家レベルの異文化交流の発展を推進できました。

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2018年、陝西省歴史博物館でカザフスタン”偉大な草原遺産:珍宝芸術”展が開催。写真は新しく飾った”金人”の服飾と武器。中国新聞社 張碩記者 撮影

中新社記者:カザフスタンは古代シルクロードにて重要な拠点ですが、カザフスタン博物館において、シルクロード上の異なる文明、文化の交流を示す文物や考古学的資料はありますか。


ムハメジウレ氏:カザフスタンと中国とはシルクロード文明の伝播者であり、国民友好交流の支持者でもあります。この古い大陸横断の貿易路線の発見により、異なる歴史文明の跡が現れてきました。アジア文明国家として、両国は各自の歴史の発展時期を経ており、独特な輝かしい精神と物質文明を作り上げてきました。両国の考古学的発見と文化遺産はすでに素晴らしいアジア文化の担い手であり証拠となっています。
シルクロードという課題の研究を強める必要や、中国からヨーロッパに至る偉大なシルクロードに関する科学的興味を高める必要があり、これは歴史研究に重大な意義を持っていると考えます。他に、歴史文化遺産の科学調査の連合を促し、遺産地区を保護する基準を共同で作成し、博物館のデジタル技術の応用を発展させるべきだと思います。


史料の記載によると、オトラル、タラズなどの古い町はシルクロードにてカザフスタンの最も重要な地点であり、かつての中央アジア貿易と文化の中心地でもあります。昔のシルクロードのおかげで、カザフスタンの草原文明が繁栄し発展できたのです。カザフスタン国家博物館内には、オトラル、タラズなどの遺跡から発掘された陶器やガラスの花瓶が展示されています。

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カザフスタン国家博物館の珍物。中国新聞社 張碩記者 撮影

中新社記者:中国読者は中国、中華文化に関わる文物に興味を持っています。カザフスタン国家博物館には漢字の刻まれた石碑があるそうですが、これに関わるエピソードを語っていただけませんか。


ムハメジウレ氏:カザフスタン国家博物館の独特な所蔵品の一つとして、その石刻の記念碑は両国の異なる交流史を物語っています。


石碑に“故阙特勤之碑”という文字があり、開元年間に刻まれたそうです。石碑は大理石で作られ、上部にアーチ形の装飾があり、そして闘竜三匹が彫刻されています。表面には漢文と古代チュルク語二種類の文字があり、背面(西側)は漢文の部分で、内容は唐玄宗が亡くなった突厥可汗である阙特勤を追悼するために書いた弔文です。唐玄宗が自筆で書かれたものだそうです。この碑刻はカザフスタンがシルクロードにおける歴史の役割を示す証拠を提供しています。


中新社記者:今年は中国、カザフスタンの国交樹立30周年となりますが、両国はどのようにして、文物、博物館などを通じてさらに文明交流と対話を進めるのでしょうか。


ムハメジウレ氏:国によって各自の歴史発展の軌跡があり、互いの国家文化に対する理解も同じではありません。異なる文化を認知するには、開放的、かつ包容力のある態度が必要で、両国の間に緊密な交流活動は欠かせません。そのため、国際的で二国間共同プロジェクトに基づいた人道主義の交流を深める必要があると思います。


 近年以来、カザフスタンと中国、両国は共同で博物館展示会の開催、祭日イベントの催し、または両言語のコンテストや連合科学調査、文物修復などのイベントを通して、地域を跨いだ文化対話を行ってきました。


言語は“対話”の基礎であり、両国の国民はお互いの言葉の学習を通して、相互の文化認知の促進が促されます。統計によると、カザフスタン国内では孔子学院が5か所設けられています。2015年以来、“カザフスタンセンター”、カザフスタン言語研究機構が中国で多数運営されています。他に、北京、西安、上海などの外国語大学では中国の学生を対象に“カザフスタン言語文学”の専門が設けられています。

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2019年、カザフスタン駐在中国大使館が主催として“七十年輝かしい業績——新中国成立70周年を祝うテーマ写真展”はカザフスタン国家博物館で開催。写真は現地の住民が写真展に訪れた様子。中新社記者:文竜傑 撮影

中新社記者:カザフスタンはアジア文明に属し、ユーラシア大陸の重要な位置にあります。どのようにして文明交流の境界を拡大し続けると思っていらっしゃるのでしょうか。


ムハメジウレ氏:どの国にとっても、文明発展において最も切迫なのは先人から伝承された歴史文化の価値体系と文化的な合意を守ることです。歴史の角度からみれば、文化伝承はどの国でも政策設計の基礎になります。よって、諸国が歴史と文化遺産の修復、保存や普及のために、一つの完全な社会記憶機構のようなシステムを作り上げるべきだと考えます。


私が言いたいのは、交流は友好な国家と人民の間に行われる相互理解と尊重のルートです。交流接触を保ち、異文化交流を増進する意義もこのためです。すなわち、国家の間には文化の差異を尊重する上で、各自の文化の特性を認め合い、保持することです。


どんな文明の安定性も、空間限界の歴史文化区域に依存するだけでなく、異なる歴史文化現象の背景に存在する独特な精神価値に依存するのです。たとえば、言語、伝統、風習、宗教、芸術などです。


 東洋文明の交流を真に深めるには、相互の尊重及び国家発展計画の統一的な計画と協調を重視すべきです。たとえば、経済、資源、安全、交通、文化などの重要領域での共同プロジェクトを推進することです。(終)


インタビュイー概要:

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ムハメジウレ氏:カザフスタン国家博物館館長、かつてカザフスタン国家芸術学院院長、カザフスタン文化体育部長に務めました。カザフスタンの有名な政治家及び歴史、芸術史専門の博士でありながら、作曲家として多数の音楽作品を指導し作成しました。文化芸術領域の業績により、カザフスタン国家名誉勲章及び国際賞を多数受賞されました。勤務生涯にわたって、中国との多領域文化交流と協力に力を注ぎ、カザフスタンと中国の諸文化交流活動の推進者と参加者となっています。ムハメジウレ氏及び関係部門の支持の下、両国政府はカザフスタン“中国文化日”、シルクロード国際映画祭などのイベントを成功に開催しました。
(翻訳:華僑大学外国語学院 馬紹華)

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