在中国日系企業は「経済安保」を重視する高市政策にどう対応すべきか?

高市早苗氏の政策主張は、在中国日系企業のリスクを上昇させる可能性があり、研究院は5つの対策を提案。/ヤクルトがピンチに陥り、(2024年12月の上海工場閉鎖から)1年も経たないうちにさらにもう一つ工場を閉鎖。/初の日本独資の証券会社が中国に上陸、みずほ証券は旗幟鮮明に現地化を推進。
高市内閣が増大させる
在中国日系企業のリスクに
どう対応すべきか?
第二に、サプライチェーンのリスクが増大する。中日産業チェーンは「お互いの中に自分がいる」という相互依存の構造が形成されている。「髙市氏が構築しようとしている強靭な産業チェーンは、半導体などの分野で中国との関係を断ち切ることを目的としている」と一部の日本メディアは見ている。これは、一部の日系企業が中国市場でのシェアを失うだけでなく、サプライチェーンの分断リスクも生み出すだろう。例えば、日本が輸入する稀土類(レアアース)の92%は中国に依存し、磁粉、ネオジム鉄ボロン成品の85%は中国での加工に依存している。中国とのサプライチェーンの関係が断たれれば、日本の新エネルギー自動車、精密モーター産業は「米なしに、ご飯は炊けない(どんなに有能な人であっても、必要なものがなければ何もできない)」に直面することになる。
第三に、中日の科学技術分野での協力は課題に直面している。髙市内閣は米国との技術同盟を強化する計画で、日本を米国の対中技術戦争の枠組みにさらに緊密に組み込み、対中半導体装置、5G技術の輸出規制を拡大する可能性がある。日本の半導体材料企業は生産能力の30%以上を中国市場に依存しており、米国の対中技術封鎖に協力すれば、東京エレクトロンなどの企業は重要な収入源を失うことになる。さらに、同氏が推進する経済安全保障推進法案は、中国資本によるM&Aの審査、重要技術の輸出制限を求めており、日系企業は技術協力において「二者択一」の窮地に追い込まれる可能性がある。
これに対し、研究院は在中国日系企業に以下のことを提案する。
第一に、サプライチェーンの多様化を推進し、中国での生産能力を維持するとともに、非中核部門を東南アジアやインドなどに移転する。
第二に、中国の大学や企業との共同研究開発を通じて、中国のイノベーションエコシステムに深く統合する。例えば、トヨタは寧徳時代(CATL)と次世代電池技術の開発で協力しており、技術封鎖のリスクを回避するとともに、市場のニーズに近づいている。
第三に、中日の政策対話とメカニズム構築に積極的に参加する。中国日本商工会や日中経済協会などの組織を通じて、中日両政府に企業の要望を伝え、コミュニケーションメカニズムの確立を推進する。中国の商務部門、企業協会と積極的にコミュニケーションを図り、誤解や誤った被害を減らす。
第四に、中国の「ダブルカーボン」(炭素排出ピークアウトとカーボンニュートラル)の機会を積極的に捉え、中国企業と水素エネルギー、炭素回収などの分野で協力することで、政策の方向性に合致させるとともに、貿易摩擦のリスクを回避する。例えば、三菱重工は中国電建と海上風力発電プロジェクトの開発で協力している。
第五に、政策リスク評価を強化し、専任者を置いて中日の政治的動向、特に台湾問題、歴史認識などの敏感な問題の推移を注視し、事前に緊急時対応計画を策定する。
ヤクルト危機
1年足らずで2度目の工場閉鎖
10月20日、ヤクルト本社は、広州第1工場を11月30日に正式に閉鎖すると発表した。この工場は、ヤクルトが中国市場に設立した最初の工場である。実際、これはヤクルトにとって1年足らずで2度目の工場閉鎖であり、昨年12月10日には上海工場を閉鎖している。
ヤクルトは、工場閉鎖は「会社全体の戦略計画に基づくものであり、中国市場での競争力をさらに高めるためである」と説明しているが、アナリストは、「現在ヤクルトは中国市場で大きな課題に直面している」と指摘。ヤクルトの中国における1日平均販売量は、2019年のピークから減少が続き、2025年第1四半期は2021年第1四半期比で45%も減少している。
この減少は、業界全体の発展トレンドや消費者の習慣などの要因に関連している。中国の消費者における健康飲料への需要は、「基礎的な機能」から「精密化、個性化」へと移行している。ヤクルトの典型的な小さな赤いボトルは糖分が高く、上海の飲料格付け制度でD級(最も推奨されない)に分類されているうえ、若年層は低糖質や無糖製品をより好む傾向にある。
また、ヤクルトの関連会社である上海益力多乳品有限公司は「プロバイオティクスが新型コロナウイルスを予防・治療できる」と宣伝したことで、罰金45万元(約900万円)を科され、ブランドの信頼性が損なわれた。ヤクルトが全面に押し出している「100億個の活性乳酸菌(日本では乳酸菌シロタ株)」というセールスポイントも、業界で疑問視されている。
本研究院は、ヤクルトは製品革新に注力し、低糖質・機能性製品を開発すべきと提案する。伝統的な販路を改革し、オンライン戦略を強化、ECプラットフォームやソーシャルメディアのKOLと連携することも重要である。
中国初の日本独资証券会社が設立
現地化戦略を明確に推進





