中国、地域間で消費格差~沿海大都市は低迷も中西部は堅調

中国では地域間で消費の二極化が進んでいる。沿海大都市では消費の低迷が続く一方、中西部では消費が堅調に推移している。中西部での堅調な消費が短期的な現象なのか、構造的な変化なのか、今後の推移が注視されている。

■「一線都市」で消費低迷続く
北京、上海、広州、深圳の「一線都市」では消費が低迷している。2024年1~6月期の全国の社会消費財小売総額は前年同期比3.7%増だったが、「一線都市」をみると、北京は同0.3%減、上海は同2.3%減、広州はほぼ横ばい、深圳は同1.0%増。いずれも全国平均を下回る成長率だった。直近6月の単月では、北京は6.3%減、上海は9.4%減、広州は9.3%減、深圳は2.2%減といずれもマイナスだったと試算されている。

社会消費財小売総額の不振の一因は自動車販売の低迷。自動車販売は社会消費財小売総額の約4分の1を占めているためで、全国の6月の自動車小売額は前年同月比で6.2%減だった。都市別では、北京が13%減、広州が8%減、深圳が3%減などだった。

「一線都市」の消費低迷は、香港の不動産デベロッパーの業績にも表れている。恒隆地産(ハンルン・プロパティーズ)の2024年1~6月期決算は、売上高が4.6%増と増収を確保。ただし、上海を中心とする中国本土の高級ショッピングモールの全体の売上高は4%減だった。また、太古地産(スワイヤ・プロパティーズ)の1~6月期決算では北京、上海、広州のショッピングモールの売上高はいずれもマイナスだった。

■中西部の消費関連指標は堅調
一方、中西部の消費関連の指標はいずれも高い伸びを示している。前出の1~6月期の社会消費財小売総額は、湖南省が前年同期比5.7%増、河南省が同5.6%増、四川省が同4.9%増、重慶市が同3.9%増などだった。また2019~2022年の飲食店小売売上高は、中部が42%増、西部が28%増の伸びを記録。同期間の中部の小売チェーン店数は22%増、自動車保有台数は33%増となっている。

■大都市低迷の要因
沿海部大都市での消費低迷の要因の一つは不動産市場の不振。大都市では住民の資産に占める不動産の割合が大きいためで、一線都市の資産規模は域内総生産(GDP)の200%近くに達している。また不動産収入も大きく、大都市の消費者は不動産市場の影響をより大きく受ける構造となっている。
不動産市場の不振は所得にも波及し、2024年1~6月期の1人当たり可処分所得は北京が4.2%増、上海が4.4%増。ともに全国平均(4.6%増)を下回る伸びにとどまった。

■中西部の堅調の背景
一方、中西部での消費拡大の要因の一つは人口の増加。例えば、2023年末時点における常住人口の前年末比増加数が大きかったのは合肥(21.9万人)、鄭州(18万人)、杭州(14.6万人)、成都(13.5万人)などとなっている。

また人口構造からみても、中西部は北京や上海などに比べて高齢化の進展が遅い状況にある。例えば、2020年時点での15~59歳の労働力人口の割合は、武漢と成都はそれぞれ全国平均を5.6ポイント、5.3ポイント上回っている。北京や上海の都市化率が先進国の水準に近付いている一方、中西部では依然として伸びしろがある状態だ。

 

沿海大都市に比べて依然として成長余地がある中西部。今後も消費が堅調に推移するか否かは、人口の継続的な流入、産業構造の均衡化、所得格差の是正などが進むか否かによるとみられている。
このところ、消費低迷がクローズアップされがちな中国経済だが、人口の流れや各地の産業政策などつぶさに見て、解像度を高める必要がありそうだ。

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