ロシアの軍事手段選択、根本的原因は何だったのか―中国人専門家が経緯を解説

米国をはじめとする西側諸国は、ウクライナを軍事侵攻したロシアへの制裁を強化し続けている。世界の多くの国が猛反発することが分かっていただろうに、ロシアはなぜ、軍事行動に踏み切ったのだろうか。中国人民大学歴史学院の許海雲教授はこのほど、中国メディアの取材に応じて、冷戦終結後の経緯を説明した。以下は許教授の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

ロシアはなぜ、世界の多くの国が猛反発することが分かっていただろうに、ウクライナ侵攻に踏み切ったのだろうか。

■冷戦終結で解体されたワルシャワ条約機構、急拡大したNATO

米国をはじめとする西側諸国はウクライナに対する軍事行動を起こしたロシアを強く非難している。しかし、西側諸国が主張するように、ロシアは問題の全責任を負わねばならないのだろうか。

ウクライナ問題とソ連崩壊後の北太平洋条約機構(NATO)の東方拡大は、切り離せない関係がある。NATOは冷戦終結後に拡大し続けた。1999年にはチェコ、ポーランド、ハンガリーの3カ国、2004年にはスロバキアなど7カ国、09年にはアルバニアとクロアチア、17年にはモンテネグロ、20年には北マケドニアがNATOに加入した。そしてNATO側は、ロシアとの長大な国境線があるさらに東のグルジアとウクライナの加入についても言及した。また、グルジアでは03年のバラ革命、ウクライナでは04年のオレンジ革命によって、西側寄りの政権が樹立された。

冷戦終結後のNATOの歩みについては、米国国内からも反対の声が出た。1950年代まで米国の対ソ封じ込め政策を主導したジョージ・ケナン、中国との国交樹立の扉を開いたキッシンジャー、さらには安全保障のためのパワー拡大を主張したジョン・ミアシャイマーまでもが、NATOの東方拡大は過ちと主張した。

■NATOの拡大は防衛が目的ではなく、ロシア「抑え込み」

NATOは防衛組織として設立されたが、かつてはNATOと対峙していたワルシャワ条約機構は冷戦終結後に解体された。従ってNATOが今も主張する「潜在的脅威の存在」は論理に無理がある。

NATOは冷戦終結後にはロシアとの協力を提唱するようになり、双方は協力委員会も設立した。しかしNATOは、東方拡大によってロシアの戦略的発言権を弱体化しようとした。これでは、ロシアの強い反発を呼ぶことは必至だ。ロシアはNATOが東方拡大するたびに抗議を繰り返してきた。そして21世紀に入ると、ロシアのプーチン大統領は、NATO側に屈服しないようになっていった。

NATOの東端がロシアに近づくにつれ、ロシアの抗議は激しくなった。そして、ウクライナとグルジアのNATO加盟の是非を巡り、東西双方は暗闘を続けることになった。今回のウクライナへのロシア軍の進行は、軍事という極端な方法であるように見えるが、実際にはロシアがあらゆる外交手段を尽くした上でのやむを得ない選択だったと言える。

■かねてから要求を明確にしていたロシア、態度があいまいだったNATO

NATOが東方拡大によって。大発展を遂げたことは否定できない。NATO加盟国が冷戦終結当初の16カ国から、現在の30の加盟国までに増えた。しかしNATOの東方拡大には、ある種の「慣性力」が働くようになった。すなわちのNATO存在と発展は完全に東方拡大に依拠し、NATOは東方拡大を続けねば生命力を失うように思われるようになった。

ロシアは軍事行動を起こす前から、「ウクライナのNATO加入は認められず、ウクライナは中立を保つべき」と、自らの要求を明確にしていた。一方のNATO側は、ウクライナの加入を認めていないが、態度はあいまいなままだった。米フォックステレビのニュースキャスターも、NATO側はウクライナの加入を認めないならば、「ウクライナを加入させない」あるいは「ウクライナの中立を保つ」と明言すべきであり、そのことにより戦争を防げると、強い調子でNATOを批判したことがある。

ウクライナがNATOに加入してもNATOが直接に得る利益は少ないが、NATOにとっては、ウクライナを政治的に誘導できることは、地政学上の拡大にとって重要だ。NATOは、ロシアが対ウクライナ戦争の成果として歯止めを構築することを好まない。またNATOは、ロシアの軍事力によって、NATOが目的を果たせず屈服する姿を世界に見せたくない。そのため、米国やその他西側諸国は絶えずウクライナに援助を提供し、そのことによってNATOなどの「平和と守る自由と民主」のイメージをアピールしている、ということになる。(翻訳:Record China)

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