東西問|周剣 アジアが紡いだスポーツの物語とは〜北京冬季五輪からワールドカップ・カタール大会

2022年11月20日 出典 中新社微信公式アカウント

2022ワールドカップ・カタール大会の開幕を目前に迫っている。今年、アジアでまた世界的なスポーツ大会が開催される。スポーツは文明や国境を越えた人類の共通言語である。北京冬季オリンピックからワールドカップ・カタール大会まで、アジア諸国はどのように世界的なスポーツの物語を紡いだのか。ワールドカップ・カタール大会ではどのような中国的要素があるのか。大規模なスポーツイベントは、人類の文明の交流と相互理解をどのように促進することができるのか。中新社の「東西問」は、駐カタール中国大使の周剣氏に独占インタビューを行った。

インタビューの概要は以下のとおり

ワールドカップ・カタール大会で際立つ「中国的要素」

中新社記者:2022ワールドカップ・カタール大会は、世界中のサッカーファンにとって大きな祭典ですが、今回のワールドカップとその中に現れている中国的要素についてどう思われますか。

周剣:ワールドカップ・カタール大会では、中国的要素、中国の貢献が極めて顕著でした。中国鉄建が建設を請け負ったルサイル・スタジアムは、カタールのランドマークとなりました。中国電力建設集団有限公司(中国電建)が建設を請け負った太陽光発電所は、ワールドカップに安定したグリーン電力を供給し、宇通客車の1500台の新エネルギーバスが各国のサッカーファンに高効率で地球にやさしい移動手段を提供しています。中国製のサッカー関連グッズ、アクセサリー、記念品が街中に飾られ、カタールを華やかに彩っています。

印象的なのは、ワールドカップ・カタール大会の開幕を前に中国とカタールの友好親善大使として2頭の愛らしいジャイアントパンダがやってきたことです。中国的要素は、ワールドカップ・カタール大会に重要な貢献をしています。中国とカタールの両国民の友情を深め、両国の協力のための民意の基盤を固め、中国とカタールの両国関係の飛躍的な発展に強力な原動力になったと言えます。

カタール・ドーハ国際空港内のワールドカップ・カタール大会の公式グッズショップでお土産を選ぶ観光客=崔楠撮影 

中新社記者:中国とカタールのスポーツ分野での交流や協力は長きにわたって続いています。カタールのタミム首長(国家元首)は今年初め、北京冬季オリンピックの開会式に出席するために中国を訪れ、スポーツ等の人文科学の分野で中国との協力を強化する意向を示しました。中国とカタール両国に共通するスポーツの遺伝子とは何でしょうか。「ポスト冬季オリンピック」の協力関係や今回のワールドカップ・カタール大会を足がかりにし、両国は他にどのような協力関係を築くことができるのでしょうか。

周剣:スポーツ交流は、中国とカタールの協力において重要な部分を占めます。両国の人々は共にスポーツを愛しています。両国は大規模なスポーツイベントを積極的に開催しており、スポーツ協力のための広く強固な基盤を持っています。

北京冬季オリンピックとワールドカップ・カタール大会を貶めようとする一部勢力の攻撃に直面して、中国とカタールは互いに支え合い、互いに声援を送りました。今後もスポーツ界の「偏見」やダブルスタンダードに共同で反対し、国境なきスポーツ精神を発揚していきたいと考えています。

カタールのワールドカップカウントダウン広場にはためく参加国の国旗=富田撮影

来年のアジア競技大会は中国の杭州で、2030年のアジア競技大会はカタールで開催されることが決定しています。今後も大規模なスポーツイベントの開催が続くと考えられ、双方はイベントの招致、組織、準備、警備、広報などの分野で相互支援と協力を強化することができると思います。

双方は、関係者の交流訪問、選手のトレーニング、産業運営等の分野で交流と協力を強化することができます。多くの中国人卓球コーチがカタール代表チームのコーチとして活躍しており、カタールの卓球競技の発展に積極的に貢献しています。カタールは、サッカーのユーストレーニング、選手の帰化、ナショナルチームの構築、リーグ運営において多くの成功体験と独自の実践を有しており、中国はサッカー分野における交流と協力を発展させることを望んでいます。

カタールスポーツクラブでワールドカップ・カタール大会を前に実施された審判員の模擬訓練の後に、FIFAのスタッフと話す馬寧、曹奕、施翔氏の3人の中国人審判員=崔楠撮影

スポーツ界は「アジアの時間」に突入、アジアの魅力を発信

中新社記者:男子ワールドカップ史上、アジアでの開催されるのは2回目で、「ペルシャ湾の真珠」と呼ばれるこの国への理解を深めてもらうことができると思います。大会だけでなく、今回のワールドカップならではの独特な文化にも注目が集まっています。ワールドカップのような大規模なスポーツ大会が、文明の相互理解に果たす役割をどのように考えていますか。中国のサッカーファンにどんなワールドカップを体験してもらいたいですか。

周剣:スポーツは文明と国境を超えた人類共通の言語です。世界中の人々が団結の旗の下に集い、共に共通の目標に向かってたゆまぬ努力を続けることです。大規模なスポーツ大会は、人間にとって自己超越を追求する場であり、異なる国家や民族が文化を表現する大舞台であります。それぞれの国の人々が心を通わせるための最も直接的で広範で情熱的な媒体です。

大規模なスポーツ大会に参加することで、競技スポーツの素晴らしさを体験するだけでなく、発展の道筋を知り、文明の雰囲気を楽しみ、ライフスタイルを味わい、偽りのない実感を分かち合い、文明の交流と相互理解のあるべき姿である「尊重と交流の価値」を深く理解することができるのです。

今年初め、中国と国際社会の共同努力により、北京冬季オリンピック・パラリンピックは大成功を収め、文明間の交流と相互理解を促進することができました。ワールドカップ・カタール大会も開幕します。北京冬季オリンピックとワールドカップ・カタール大会の成功は、スポーツの勝利であると同時に、団結の勝利でもあります。また、対立や誤解を解消し、人と人との交流を促進し、問題を抱えた世界のために団結と協力の聖火を運ぶという重要な役割を担っています。

また、今回のワールドカップ・カタール大会を通じて、中国のサッカーファンの皆さんに悠久のアラブの文明、湾岸地域の独特な地理や習慣、自由なアラブのサッカースタイルなどを知ってもらえればと思います。

ワールドカップ・カタール大会のカウントダウン広場で観光するサッカーファン=富田撮影

中新社記者:今年の世界的なスポーツ大会である北京冬季オリンピックとワールドカップ・カタール大会は、いずれもアジアの国が主催しました。アジアの国々が協力して世界に向けてスポーツについて発信していくにはどうしたらいいと思いますか。

周剣:近年、アジアで「重量級」のスポーツ大会が開催されることが多くなり、世界のスポーツ界は「アジアの時間」に突入しました。これは、アジアが発展と協力について影響力を持つ立場になり、意気揚々と自信に満ちた態度で世界に向けてアジアの声を発信していることを反映しているのです。アジア諸国は、ワールドカップやアジア競技大会をはじめとする大規模なスポーツ大会を契機に、アジアのことを積極的に発信し、アジアをアピールしていかなければなりません。

アジアの平和を愛する心を伝える必要があるのです。アジア文明には平和を重んじる伝統があります。私たちは、スポーツをきっかけとして、友好を促進し、対立を解消し、すべての国が仲良く付き合い、誠意を持って接することを堅持します。それぞれの国情にあった発展の道を模索することを互いに支持し、覇権主義やパワー・ハラスメントに断固反対し、共通の故郷を守ります。

アジアが協力して発展する物語を語らなければなりません。アジア復興と繁栄の大きな流れが押し寄せています。スポーツを土台として、開放性と包括性を堅持し、発展と振興を支え、互恵的協力関係を強化し、発展の機会を分かち合い、「分断と断絶」に共同で反対し、経済の融合的発展を促進しアジアの人々がより幸せな生活を送れるようにします。

アジアの包括的で親密な物語を語らなければなりません。アジアは人類文明の重要な発祥地です。私たちは、スポーツを架け橋として、包括的な文明間の相互学習を強化し、アジアの価値観を発揚します。スポーツ問題の政治化に反対し、イデオロギーによる分裂と対立に反対し、非西洋文明に対する歪曲と中傷に反対し、アジア文明と世界文明にとってより良い未来を共同で創造していかなければなりません。

手の甲に描いたパンダを見せる少女。11月17日、ワールドカップ・カタール大会開幕直前にジャイアントパンダの「ジンジン」と「スーハイ」が一般公開された=富田撮影

カタールへの「ビックプレゼント」ジャイアントパンダは環境に適応

中新社記者:今回のワールドカップ・カタール大会の決勝戦が行われるルサイル・スタジアムは中国企業が建設したものですが、なぜこのスタジアムが「中国建設」の海外名刺になったのでしょうか。

周剣:異彩を放すルサイル・スタジアムは、カタールおよび中東地域における「中国建設」のランドマーク的プロジェクトとなりました。

ルサイル・スタジアムでは、今回のワールドカップ・カタール大会の決勝戦や閉会式など主要なイベントが行われ、FIFAワールドカップ優勝トロフィーが掲げられる歴史的瞬間が見られます。ワールドカップ・カタール大会にとって最も重要な競技場であるカタールの「鳥の巣」が成功裏に完成したことは、ワールドカップ・カタール大会に対する中国の「贈り物」であり、大会成功に対する揺るぎない支持を示したものであると言えます。

2022ワールドカップ・カタール大会のルサイル・スタジアム外観=富田撮影

ルサイル・スタジアムの建設は、中国企業が初めてワールドカップスタジアムの建設にゼネコンとして参加したものです。高水準のデザインと高品質の施工の完璧な融合を実現したことは、中国とカタールの実務協力における最も重要で最大かつ最高水準のプロジェクトであり、両国間の「一帯一路」の質の高い共同建設のモデルとなるものです。

ルサイル・スタジアムは、昨年新たに発行された10カタール・リヤル紙幣に採用されました。また、カタール中央銀行は、ワールドカップ・カタール大会の特別版記念紙幣を発行しましたが、この紙幣セットに再びルサイル・スタジアムが登場し、カタールのルサイル・スタジアムに対する認知度の高さを示しています。

カタール・リヤル紙幣にデザインされた2022ワールドカップ・カタール大会のルサイル・スタジアム外観=富田撮影

中新社記者:ワールドカップ・カタール大会の開幕を前に、2頭のジャイアントパンダ「京京(ジンジン)」と「四海(スーハイ)」がドーハに到着しました。中国とカタールのジャイアントパンダ共同研究の特別な意義は何でしょうか。ジンジンとスーハイの「海外駐在」生活の日々はどうですか。面白いエピソードがありましたら教えてください。

周剣:10月19日、2頭の愛らしいジャイアントパンダがドーハに到着しました。これは、中国とカタールとの関係の歴史において画期的な出来事でした。中国とカタールのジャイアントパンダの共同研究は、習近平国家主席とタミム首長との間に成立した重要な合意事項であり、湾岸諸国での初めての協力プロジェクトでもあります。これは両国の首脳が中国とカタールの関係を非常に重要視していることを示しています。 .

中国の国宝であるジャイアントパンダの到着は、ワールドカップ・カタール大会の前夜祭と重なりました。これは中国の人々のワールドカップ・カタール大会に対する素晴らしい祝福であり、大会成功に中国的要素を加えることができました。ジャイアントパンダがやってきたことは、両国の真の友好を深め、中国とカタールの友好の新しいシンボルとなることは間違いないでしょう。

私の知る限り、2頭とも非常によく適応しています。「ジンジン」は外向的な性格で新しい環境に完全に適応しています。「スーハイ」は内向的な性格で、適応度は80%から90%です。21日間の検疫を終えた2頭のパンダは、11月9日から展示場での環境に適応し始め、動き回れるより広いスペースが増えました。「ジンジン」は新居の池が、「スーハイ」は新居の大きな木が特に気に入っているようです。

興味深いのは、「海外駐在」をしているにもかかわらず、四川訛りの中国語しか認識できないということです。飼育員が共通語で名前を呼んでも無視しますが、四川訛りで呼ぶとすぐに駆け寄ってきます。カタールのスタッフは、2頭の日常生活に気を配りながら、四川方言の習得に励んでいます。これも、ジャイアントパンダが両国の文化交流を促進している一つの証だと思います。

11月17日、ワールドカップ・カタール大会開幕直前にジャイアントパンダの「ジンジン」と「スーハイ」が一般公開された=富田撮影

中国とカタールとの人々のふれあいのよき手本に

中新社記者:中国とカタールは来年、国交樹立35周年を迎えます。両国はどのように「一帯一路」の共同建設と「国家ビジョン2030」の連携を深め、両国民により多くの幸福をもたらすべきでしょうか。中国とカタールが共に運命共同体を構築することは、地域や世界にとってどのような意義を持つでしょうか。

周剣:今後5年間は、中国が社会主義現代化国家を全面的に建設するためのスタートを切る重要な時期であり、カタールが「国家ビジョン2030」の実現を推進する重要な段階でもあります。来年の国交樹立35周年を契機に、中国とカタールの関係が新たな一歩を踏み出し、さらに上のレベルに押し上げることを推進しなければなりません。

互いを信頼し、支え合うよき兄弟でありたいものです。政治的な相互信頼は、常に中国とカタールの戦略的パートナーシップの鮮明な背景となっています。お互いの核心的な利益に関する問題についてはお互い支持し合い、互いの国情に合った発展の道を自主的に探ることを支持し、発展途上国の共通の利益を守っていかなければなりません。

私たちはウインウインの共同発展のよきパートナーになりたいと考えております。中国とカタールの産業は、資源を相互補完し、発展理念が類似し、利益が緊密に結合しています。カタールにおけるグローバルな開発イニシアティブの実施を加速させなければなりません。長期的に安定した中国とカタールのエネルギーパートナーシップを

構築し、より多くの中国企業がカタールへ投資することを奨励し、カタールが中国への投資を拡大することを歓迎します。

私たちは、包括的な相互学習、そして人と人との触れ合いの良い手本とならなければなりません。中国はカタールと協力して、文化、教育、観光の分野での協力を拡大し、中国とカタールの文化協力のための新たなプラットフォームをつくりたいと考えています。「文明優越論」「文明衝突論」に反対し、人類運命共同体の構築に向け共に努力していきます。

中国とカタールの運命共同体の構築は、戦禍の絶えない中東地域と激動し変化する世界に、さらなる安定と前向きなエネルギーを注入するものだと確信しています。それは、国際社会が手を携えて、人類の平和と発展という崇高な目的に新たな貢献をするよう鼓舞することでしょう。

駐カタール大使周剣氏プロフィール

1968年河南省信陽市固始県生まれ、中国人民大学歴史学系で世界近現代史を専攻し修士号取得。1995年外交部に入り、外交部アジア局職員および三等秘書官、駐シンガポール中国大使館三等秘書官および二等秘書官、外交部政策研究室二等秘書官および副部長、外交部政策企画局副局長を歴任。2019年7月から駐カタール中華人民共和国特命全権大使を務めている。

(中新社微信公式アカウント 中新社記者 邢翀)

【編集 劉歓】

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