Author: jizi

中国の不動産市場、回復道半ばで来年も支援継続へ~需要サイドの政策に注目 0

中国の不動産市場、回復道半ばで来年も支援継続へ~需要サイドの政策に注目

中国の不動産市場に持ち直しの兆しがわずかながらみられる。これは、中国当局が今年打ち出した不動産市場の回復に向けた措置の効果が出てきた証左と受け止められている。ただ、完全な回復には至っておらず、2023年の経済政策運営の重点を決定する中央経済工作会議でも、「不動産市場の安定した発展を確保する必要がある」と指摘。

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中国の600億元規模の乗用車購入減税で消費刺激、生産回復に期待

中国・国務院は5月23日に開催した常務会議で、景気安定化に向けた包括的な措置を打ち出した。措置には自動車消費を刺激するための乗用車購入減税やサプライチェーンの安定化が盛り込まれた。一連の景気対策は、足元で落ち込んでいる自動車消費を刺激するとともに、自動車産業全体の回復に資するものと期待が寄せられている。 ■低迷する自動車市場 自動車は個人消費に占める割合が比較的高く、経済成長をけん引する役割を担っている。国家統計局のデータによると、2021年の中国の自動車類の小売総額は前年比3.6%増の3兆7,000億元。消費支出全体の8.4%を占めている。ここ10年の自動車消費の消費支出全体に占める割合は8.3%~11.1%の間で安定推移している。 ただ、今年に入り新型コロナウィルス感染拡大防止を目的とした厳格な防疫措置などを背景に自動車消費は落ち込んでいる。中国汽車工業協会によると、今年1〜4月の新車販売台数は前年同期比12.1%減の769万1000台。うち乗用車が4.2%減の651万台、商用車が39.8%減の118万1000台にそれぞれ縮小している。 消費が落ち込む中、供給サイドも厳しい状況だ。部品メーカーなどを含む産業チェーンに組み込まれている一部の企業は生産、引き渡しが難しい状況。自動車は産業チェーンの裾野が広いだけに、一部で問題が発生すると全体への影響も大きくなる。 ■600億元規模の減税を段階的に実施 こうした中、国務院は乗用車購入に対して総額600億元規模の減税を段階的に実施すると決定した。600 億元は、中国の21年の自動車購入税額の17%に相当する規模。減税率などの詳細は今後発表される予定だが、仮に販売価格が10万元のガソリン車の場合、購入税は8,850元のため、全額免除された場合、600億元の減税は678万台のガソリン乗用車をカバーできる計算。税が半減された場合は購入税4,425元が免除されるため、同1,356万台をカバーできる計算になる。678万台は21年のガソリン車販売規模の38%、1,356万台は同75%を占める規模になり、減税による購買刺激効果が期待されている。 中国政府は金融危機後の09~10年、15~16年、20年以降、自動車購入での税優遇を実施。このうち、15年以降は優遇対象がガソリン車から新エネルギー車にシフトし、新エネルギー車の販売比率拡大など構造的な変化ももたらした。 今回の減税方法の詳細は明らかでないが、ガソリン乗用車への恩恵が大きいとの見方が少なくない。特に足元では、ガソリン乗用車に対しては、(1)末端の割引率が低水準にあること、(2)在庫が低水準にあること、(3)新エネルギー車に比べてガソリン乗用車の販売低迷が鮮明なことー-などを背景に今後の販売の回復余地が大きいとみる向きもある。今回の減税措置で「100万~200万台の乗用車の新規需要が喚起される」との予想も出ている。 国務院常務会議で打ち出された景気対策は乗用車購入税減免のほか、サプライチェーンの安定化に向けた措置など供給サイドを対象とする内容も盛り込まれ、生産回復を含めた自動車産業全体の回復に期待が寄せられている。

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中国、21年の平均賃金で外商投資企業は12.4%増の12万6千元

中国・国家統計局は5月19日、2021 年の「非私営企業(国有企業、集団企業、共同経営、株式会社、外商投資企業、香港・マカオ・台湾投資企業を含む)」の平均賃金(社会保険・住宅積立金の個人積立分を含む税込み額)を発表した。非私営企業全体の1従業員当たりの年間平均賃金は10万6,834元で、前年比は名目ベースで9.7%増、物価変動要因を加味した実質ベースで8.6%増となった。企業形態別では、金額が最多だったのは外商投資企業(香港、マカオ、台湾企業を含まず)で前年比12.4%増(名目ベース、以下同)の12万6,019元。次いで株式会社が12.4%増の12万1,594元、国有企業が6.9%増の11万5,583元、香港、マカオ、台湾系企業が13.9%増の11万4,034元だった。 ■東部と他地域の差拡大 エリア別では東部(北京、天津、河北、上海、江蘇、浙江、福建、山東、広東、海南)と他の地域の差が鮮明となった。東部は10.4%増の12万4,019元で、伸び率、金額ともに最も高い水準。唯一全国平均を上回った。一方、西部(内モンゴル、広西、重慶、四川、貴州、雲南、チベット、陕西、甘肃、青海、寧夏、新疆)は7.9%増の9万4,964元、中部(山西、安徽、江西、河南、湖北、湖南)は9.4%増の8万5,533元、東北(遼寧、吉林、黒竜江)は7.7%増の8万3,575元にとどまった。 ■業種別では情報技術系がトップ 業種別では、金額ベースでトップは情報送信・ソフト・情報技術サービスで13.5%増の20万1,506元。次いで、科学研究・技術サービスが8.5%増の15万1,776元、金融が13.1%増の15万843元と続いた。これら3業種の賃金はそれぞれ全国平均を89%、42%、41%上回っている。 このほか石炭などのエネルギー価格の高騰を背景に採鉱が12.2%増の10万8,467元。製造業の回復を受けて製造業は11.7%増の9万2459元。新型コロナウイルス流行を契機に非接触型サービスが拡大した宿泊・飲食は9.8%増の5万3,631元。いずれも伸び率は平均を上回った。 一方、伸びが低かったのは水利・環境・公共施設管理で3.0%増の6万5,802元。このほか、教育が4.6%増の11万1,392元、文化・スポーツ・娯楽が4.7%増の11万7.329元となっている。

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中国の5Gスマホ、携帯出荷に占める割合低下続く~新たなユーザー体験提供などが課題

中国で5Gスマホの携帯電話出荷台数全体に占める割合の低下が続いている。世界に先駆け5G普及を狙う中国は5Gネットワークの建設、5G携帯出荷台数、5Gユーザー数などの面で注目されているが、個人レベルでの5G携帯の一段の普及には新たなユーザー体験を提供できるアプリの開発など課題が残っている。 ■5G通信ネットワーク、都市部ほぼカバーで今後は農村部の整備が中心に まず、5Gネットワークの整備状況をみると、今年3月末時点で累計155万9,000カ所の5G基地局が建設・開通。全国の地級市、県城区をほぼカバーした。こうした中、通信事業者は5Gの投資ペースを落とす計画だ。 中国移動の楊傑董事長は先の決算発表会で、「5G投資・建設のピークは20年から22年までで、22年はピークの最後の年」と言明。実際、決算報告によると、中国移動の5G設備投資額は、20年は1,025億元、21年は1,140億元。22年は約1,100億元と小幅に減少するとの見通しを示したうえで、23年以降は特に重要な事がなければ、設備投資を徐々に減らすという。 ただ、5Gネットワークの全国カバー実現には、面積、人口の面で都市よりはるかに規模が大きい農村エリアの整備が残されている。こうした中、通信キャリアは今年、5Gネットワーク構築の重点を農村部にシフトしている。中国移動は、22年末までに郷鎮以上の農村部での5Gネットワークの整備確保を表明。中国電信と中国聯通も5Gネットワークの共同建設、共同使用を農村部でカバーする計画だ。 ■5Gスマホの普及に停滞感 5Gスマホについては、冒頭で触れた通り、足元で全体の携帯電話出荷台数に占める割合が低下している。中国信息通信研究院が5月16日発表した報告によると、3月の中国の携帯電話出荷台数は前年同月比40.5%減の2,146万台。うち5G携帯は41.1%減の1,618万5,000台に縮小した。 新型コロナウィルス感染拡大の影響などで携帯電話の出荷台数が全体的に減少する中にあって、5G携帯の出荷台数全体に占める割合の低下は見逃せない。同割合は2021年11月に82%に達した後、低下傾向にあり、今年に入ってからは1月が80%、2月が77%、3月には75%に低下した。5G携帯の割合縮小の要因としては、コロナによるハイエンド機種の購買意欲の低迷、ファーウェイの4G携帯へのシフト、エントリーレベルの4G製品への需要が残っていることなどが挙げられている。 ■個人使用では4Gとの差別化に課題 加えて、使用感において4Gと大差ないとの声もある。使用感が4Gと大きく異ならない中、5G料金に割高感を感じる消費者は少なくない。こうした中、4Gから5Gへの乗り換え需要を喚起するには、新たなユーザー体験を経験できる5Gアプリなどの投入が必要となっており、通信キャリアは新たなサービスの開発を急いでいる。最近では4月に5G新通話を通信キャリア3社が相次いで発表。まず中国移動が4月12日に発表。続いて中国聯通と中国電信が同26日に5G新通話の相互接続実現を共同で発表した。 5G新通話の特徴としては、利用にあたってアプリやアドレス帳のダウンロードをせずにハイビジョン動画を通じて通話できることがある。ただ、中国のスマホユーザーの間では、既に微信(WeChat)の音声通話、ビデオ通話がかなり普及。5G新通話が数億人のユーザーの使用習慣を変えることができるのかは未知数だ。4Gに比べて通信速度が大きく向上する5Gは医療や交通分野など社会インフラ整備において必須だが、個人レベルでの5Gの一段の普及には、差別化した5Gアプリの提供など課題は残されているようだ。

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中国の21年の人口、16省で常住人口減少~都市部への人口集中など構造問題も

中国の31省・直轄市・自治区の人口統計が出そろった。2021年末時点で常住人口が前年末比で減少したのは16省・直轄市・自治区。増加したのは15省・直轄市・自治区。人口減の地域が増加の地域を上回った。人口減の地域が増えると同時に、都市部への人口集中など構造的な問題も垣間見られる。 ■中国全体の人口増は48万人 まず、中国全体の統計を確認する。21年末時点の人口は14億1,260万人。前年末からの増加数は48万人にとどまった。21年の人口の自然増加率※は0.34‰で、前年に比べて1.11ポイント低下した。国家統計局は人口増鈍化の要因について、出生数が減少しているためと説明。出生数減少の主な要因は2つあり、1つは出産適齢年齢人口の減少、もう1つは出生率の低下という。 ※自然増加率とは、一定期間(通常は1年間)の平均人口(または期中の人口)に対する人口の自然増加数(出生数から死亡数を引いたもの)の比率で、千分率で表される(自然増加率=出生率-死亡率)。 ■北部、中部、西北で人口減 地域別にみると、21年末の人口が減少した16省・直轄市・自治区は、黒竜江省、遼寧省、吉林省、河北省、甘粛省、内モンゴル、北京市、天津市、陝西省、山西省、江西省など。うち10省・直轄市・自治区で減少数が10万人を超えた。 減少数のトップ3は河南省、黒竜江省、雲南省で、それぞれ58万人減、46万人減、32万人減だった。遼寧省、吉林省、湖南省は、減少数がいずれも20万人を超過。人口が減少したのは主に東北、華北、西北、中部地区となっている。 このうち、東北は全国に先駆けて人口が減少し始めたエリア。20年以降、人口1,000人当たりの出生率は5人を割り込んでいる。東北は人口、特に若い人の流出が増加し、それに伴い出生数が低迷している。 このほか、戸籍人口が全国最多の河南省のほか、湖南省といった中部も人口減が目立つ。戸籍人口が全国最多で、常住人口が同3位の河南省の21年の出生数は80万人を割り込んだ。また、湖南省の21年の出生数は60万人を割り込んだ。 ■人口増は浙江省、広東省など経済をリードするエリア 一方、人口が増加した15省・直轄市をみると、増加数トップ5は浙江省、広東省、湖北省、江蘇省、福建省。この5省の21年の1人当たりGDPの全国順位は浙江省が5位、広東省が7位、湖北省が9位、江蘇省が3位、福建省が4位と、相対的に経済が発展しているエリアとなっている。湖北省以外の4省はいずれも東南沿海部に位置し、人口純増数の合計は186万1,000人に達した。 ■浙江省と広東省の人口増、要因は対照的 うち人口増が最多だったのは浙江省で72万人増。内訳をみると、出生数が44万9,000人、死亡者が38万4,000人で、自然増はわずか6万5,000人だった。一方、純流入人口は65万5,000人で、浙江省は流入者が人口増を支えている。 人口増で2位は広東省で60万人の増加。内訳は、自然増が57万1,900人、純流入人口は2万8,100人万人となっており、浙江省と対照的に、自然増が人口増に寄与している格好だ。広東省内の都市をみると、二大都市の深圳と広州はそれぞれ4万7,800人、7万300人の増加となった。 3位は湖北省。湖北省は20年は新型コロナウィルス流行の影響で一部の人が省から出てカウントされなかったが、コロナが落ち着き経済が回復するのに伴い、戻ってきた人が多かった。次いで4位の江蘇省は28万1,000人の増加、5位の福建省は26万人の増加だった。 ■省都に人口集中で都市間格差も 人口増の分布では、省都など経済規模が大きい一部の都市で人口増が集中している現象がみられる。例えば、陝西省では10市のうち、常住人口が増加したのは省都の西安のみ。銅川、宝鶏、延安、漢中など残りの9つの都市は減少となった。また、湖北省では省都の武漢市で増加したものの、他の都市の常住人口は減少した。江西省でも、省都の南昌市が増加した以外、他の都市は減少となっている。 一方、広東省など相対的に経済が発展している省は、常住人口が平均的に増加している。同省は仏山、広州、東莞、深圳、中山、江門、恵州、珠海、肇慶などでいずれも増加を記録している。 ■出生数は総じて減少傾向 21年の出生数に関するデータを発表したのは27省・直轄市・自治区。自然増加率をみると、黒竜江省、遼寧省、吉林省、重慶市、内蒙古自治区、湖南省、湖北省、上海市、江蘇省、河北省、山西省を含む11省・直轄市・自治区がマイナスとなっている。 うち、江蘇省は自然増加率がマイナス1.12‰。江蘇省の出生数は約47万9,800人にとどまり、統計が確認できる1978年以降で、初めて50万を割り込んだ。また湖南省は、出生数が過去60年で初めて50万人を下回った。 一方、出生数が最多だったのは、自然人口増が人口増に寄与した広東省。同省の出生数は118万3,100人、出生率は9.35‰、死亡数は61万1,200人で、死亡率は4.83‰、自然増は57万1,900万人で、自然増加率は4.52‰だった。 出生数が100万人を超えたのは広東省のみ。国家統計局によると、21年の全国の出生数が1,062万人だったため、広東省の出生数は全国の約11%を占めたことになる。 ■河南省などで出生数の減少際立つ 広東省と同様に1億人規模の人口を有する河南省と山東省は、出生数がそれぞれ79万3,000人、75万400人で、それぞれ2位、3位となった。ただ、前述の通り河南省は全体で人口が減少している地域。出生数は1978年以来で最低となり、同省の出生数は20年に100万人を、21年に80万人を割り込み、減少傾向にある。 河南省を含め、複数の省で21年の出生数が数十年ぶりの低さを記録した。江西省の出生数は前年比5万400人減少して40万人を下回った。40万人を下回るのは1950年以降で初めて。江西省統計局は出生数の減少の要因として、主に結婚・出産年齢の遅れ、「2人っ子政策」の効果の弱まりを挙げている。 ■都市部への人口集中、全体の人口減は今後も継続の見通し今後については、都市部への人口集中、全体的な出生数の減少といった構造は続くとの見方が大勢だ。こうした中、人口減が最多だった河南省は先ごろ「出産政策最適化を通じた人口の長期的なバランスのとれた発展促進に関する実施計画」を発表。出産の登記制度の改善などの施策を盛り込んだ。今後、急速な人口減を食い止めるとともに、地方都市の振興などによる人口分布の最適化を図ることができる。

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ベトナムの輸出増からみる中国とベトナムの製造業~将来はベトナムが中国に「ナマズ効果」との見方も

ベトナムの第1四半期の輸出が大幅に増えたことが中国で注目されている。特に、「世界の工場」と言われてきた中国深圳の輸出額と比べて「世界の工場」としてのベトナムの台頭を論じる向きもある。ただ、輸出品目などを見ると、ベトナムの輸出増の背景にあるのは中国からベトナムへの生産拠点の移転という単純な図式だけではないことが覗える。また中長期的にみて、ベトナムの製造業が高度化すれば、中国に「ナマズ効果」をもたらし、互いに競争力を高めていく関係を構築する可能性を指摘する声もある。 ■3月の輸出額、ベトナムは深圳の2倍 ベトナム税関当局によると、ベトナムの今年第1四半期の輸出額は前年同期比12.9%増の885億米ドル(約5,796億元)。このうち、3月は前年同月比14.8%増の347億ドル(約2,272億元)に拡大した。一方、深センは、第1四半期の輸出額が前年同期比2.6%減の4,076億元(約622億ドル)。うち3月は前年同月比14%減の約1,200億元(約183億ドル)に縮小した。 2018年以降、年次ベースでベトナムの輸出額は深圳を上回ってきたが、3月のベトナムの輸出額は深圳の2倍になり、差が大きく開いた。 第1四半期の深圳の輸出減少の最大の要因は、新型コロナウィルスの感染拡大に伴う防疫措置の強化にある。2月に深圳に隣接する香港でコロナ感染者が急増したことで、深圳と香港の間のクロスボーダー物流が停滞。深圳と香港間の輸出入額は、深圳の輸出入全体の20%以上を占めるだけに、クロスボーダー物流の停滞が深圳の輸出を大きく押し下げた格好だ。さらに3月に入ると、深圳でも感染が拡大。厳格な防疫措置の下、輸出に大きな影響が及んだ。 一方、ベトナムは「ウィズコロナ」政策に転換し、企業活動が正常化し、輸出が大幅に増えた。 こうした足元の状況を鑑み、「ベトナムが新たな『世界の工場』として台頭し、メイド・イン・チャイナが競争力を失うのでは」との懸念が出ている。確かにここ数年、欧米や韓国の企業が工場を中国からベトナムに移した事例はある。現在は、サムソン、インテルなどがベトナムに生産拠点を構えている。ベトナムに生産拠点を移す理由の一つは、人件費の安さ。労働コストが高くなっている中国に比べて、ベトナムは豊富で安価な労働力があり、ベトナムの人口の平均年齢は32.9歳。一方、中国は38.8歳となっている。 ■米国向け輸出、労働集約型製品で中国とベトナムが補完関係 とはいえ、足元のベトナムの輸出増の背景にあるのは、「生産拠点の中国からベトナムへの移転」だけとも限らない。「中国からベトナムへの生産拠点の移転というよりも、中国のサプライチェーンの一端をベトナムに移しているにすぎない」との見方も少なくない。ベトナムに生産の一端を移すことで、ベトナムと中国の間で補完関係を築き、最終的にリスク分散しているとの見方だ。特に、この2年間のコロナ禍では、両国のコロナ状況、防疫措置の時期に「ずれ」が生じていたため、その傾向が鮮明になっているようだ。 例えば、中信証券のレポートでは、衣料品や靴、帽子類といった労働集約型産業の製品のベトナムと中国からの米国の輸入シェアを調査したところ、ベトナムと中国は製品輸出において強い代替関係にあることが分かったと指摘している。 具体的には、21年第2四半期、ベトナムはデルタ株の感染拡大を受け、「工場隔離」(工場での生産、食事、宿泊)を義務付けるなど、厳格な防疫措置を採用。この期間、米国のベトナムからの労働集約型製品の輸入シェアは徐々に低下した。これに対し、中国からの製品の輸入シェアは拡大した。その後、21年第4四半期から22年第1四半期にかけて、ベトナムでは防疫措置が緩和され、生産が徐々に回復。それに伴い、米国のベトナムからの衣料品、靴、帽子類商品の輸入シェアは増加基調に転じた。中でも、靴、住宅/照明器具/寝具のシェアは8ポイント以上の拡大となった。一方、同期間、米国が中国から輸入した関連商品のシェアは縮小傾向が鮮明となり、衣料品、靴、帽子類の輸入シェアの縮小幅はいずれも7ポイント以上だったという。 また、21年後半のベトナムの欧州商工会議所の調査結果では、ベトナムの欧州企業の18%が「他国に受注をシフトした」、16%が「受注のシフトを検討している」との回答が示された。受注の最大のシフト先が中国だったとみられている。 ■ベトナムの輸出モデル、中国から輸入した原材料の加工が主流 他方、ベトナムの輸出モデルをみると、中国から原材料や部品を輸入し、加工、組み立てして欧米に輸出するのが主流だ。実際、今年3月、ベトナムの輸出に最も貢献した品目は衣料品。次いで、携帯電話、パソコンといった電子機器となっている。特に後者の電子機器は、生産設備や部品、原材料は中国からの輸入に大きく依存。輸入の約45%は中国からとなっている。 中国から原材料などを輸入し、加工、組み立て後に欧米に輸出している状況は貿易収支からも垣間見られる。前述の通り、ベトナムの第1四半期の輸出額は885億米ドルだったが、貿易黒字はわずか14億6,000万ドル。同期間の深圳の貿易黒字は748億元(約114億ドル)となっている。特に、ベトナムの対中貿易収支は140億米ドルの赤字で、輸入超となっている。 ■中長期的にはベトナムの製造業高度化で中国に「ナマズ効果」か 近年、中国から撤退し、ベトナムに移転する欧米や日本、韓国の企業があるのは事実。メード・イン・ベトナムが中国の製造業、とりわけミドル・ローエンドの労働集約型の製造業に与える影響は少なくない。とはいえ、ベトナムの輸出は依然として原料加工、組み立てモデルが主流で、製品の付加価値が低い。また、強力な現地企業も現れていないの。一方、深圳をはじめとする中国は、輸出製品の構造が数十年の発展の中で徐々に改善し、深圳はすでにハイテク製品を主要輸出元となっている。ベトナムで中国から原材料を輸入して加工している主体は欧米や日本、韓国企業のみならず、アパレルや家電などの中国企業も存在する。 ただ、中長期的にみればベトナムは今後、中国が辿ってきたように製造業の高度化が進む可能性がある。そうなると、ベトナムの製造業は中国の製造業に一定の「ナマズ効果」をもたらし、中国の製造業を刺激する効果が期待される。こうした点を踏まえ、今後、調達、製造拠点を選定するにあたっては、中国VSベトナムという単純な二項対立ではなく、中国を含めた東アジア、東南アジアを俯瞰的にみたサプライチェーンなどの動向を把握する必要があるといえそうだ。

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中国の4月の乗用車販売は前年比、前月比ともに3割減~購入支援策必要との指摘

中国乗用車市場信息聯席会(China Passenger Cars Association: CPCA)が5月10日に発表した統計では、4月の乗用車販売が過去最大の落ち込みを示したことが明らかになった。上海をはじめとする新型コロナウィルス感染拡大に伴う防疫措置の強化が響いた。CPCAは、今年通年の乗用車販売が前年と同水準を維持するには自動車消費刺激策を強化する必要があると指摘している。 4月の乗用車販売台数は104万2,000台。前年同月比で35.5%減、前月比で34%減となり、ともに過去最大の減少率となった。4月は29省・直轄市でコロナ感染者(無症状含む)が確認され、上海、吉林、山東、広東、河北などのディーラーが大きな影響を受けた。中国汽車流通協会によると、足元では中国のディーラーの2割以上が営業を停止し、自動車販売に影響が及んでいるという。 ■生産、卸売は4割減 自動車メーカーの生産、卸売も減少している。4月の乗用車生産台数は96万9,000台で、前年同月比で41.1%減、前月比で41.1%減。乗用車卸売販売台数は94万6,000台で、前年同月比で43%減、前月比で47.8%減となっている。特に、コロナの影響を受けた上海と吉林は全国の自動車生産の約11%を占めるエリア。4月の上海エリアの主力自動車メーカー5社の生産台数は前月比で75%減、吉林・長春エリアの合弁主力自動車メーカーの生産は54%減、その他エリアの自動車生産は38%減と、上海、吉利の生産減が鮮明になっている。 ■在庫も増加 販売が低迷する中、在庫も増加している。4月のメーカー在庫は前月比で約2万台増。「自動車ディーラー在庫警戒指数」は66.4で、前年同月比で10ポイント、前月比で2.8ポイントそれぞれ上昇している。コロナで新規納入が遅れているうえ、ガソリン価格の上昇などが消費者の購買意欲を低下させ、在庫増につながっているとみられている。 ■NEV乗用車の販売は前年同月比で増加も、前月比で減少 CPACによると、4月の新エネルギー乗用車の販売台数は28万2,000台。前年同月比では78.4%増加したものの、前月比では36.5%減少した。メーカー別では、BYD、奇瑞汽車、広州汽車が好調だった半面、小鵬、理想汽車、哪吒、零跑、蔚來(NIO)、威馬といった新興メーカーは苦戦。特に、小鵬、理想、NIOは前月比の落ち込みが大きかった。 ただ、1~4月の累計では135万2,000台で、前年同期比で128%増加している。 ■5月の乗用車販売は引き続きマイナスもNEVは前月比で高い伸びの可能性 5月の乗用車販売について、CPACは「依然として回復に圧力があるうえ、北京や鄭州などでコロナ感染が確認され防疫措置が強化されたことで、5月の販売台数も前年同月比で減少が続く」とみている。一方、NEVに関しては、ガソリン価格の上昇を受け、NEVを選択する消費者が増えており、「前月比では高い伸びを示す」と予想している。 22年通年の予想では、1~4月の乗用車販売台数が前年同月比で11.9%減少している点を踏まえると、前年と同水準を維持するには5月から12月にかけて毎月、前年同月を10万台以上上回る販売が必要という。CPACは、「足元のコロナの状況が徐々に改善する中、過度に悲観する必要はない」としながらも、消費促進を強化する必要があると指摘。具体的には、まずは結婚時の自動車購入免税や消費券配布といった自動車消費を直接刺激する策を実施し、そのうえで自動車購入費の個人所得税控除などの税制政策が必要との見方を示している。

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中国31省・直轄市の第1四半期GDP、コロナ状況で明暗分かれる

中国の31省・直轄市の2022年第1四半期のGDPが出そろった。GDP成長率をみると、新型コロナウィルスの状況で明暗が分かれ、コロナの影響を受けた吉林や広東、上海は全国平均を下回る伸びにとどまった。一方、20年にコロナの影響が大きかった湖北省は回復が鮮明となったほか、中西部の成長率は相対的に高くなっている。 ■GDPの規模:11省・直轄市で1兆元超 まずGDP規模をみると、31省・直轄市のうち11省・直轄市のGDPが1兆元を超えた。うち、トップは広東省で2兆8,498億元、2位は江蘇省で2兆7,859億元だった。次いで、3位が山東省、4位が浙江省、5位が河南省と続いた。いずれも前年同期と同じ順位となっている。 ■成長率:コロナの影響で吉林、天津、上海、広東は全国平均下回る GDP成長率をみると、全国が前年同期比4.8%増。全国平均を上回る成長率を達成したのは31のうち23の省・直轄市。全国と同水準だったのは北京市の1市で、7省・直轄市は全国平均を下回った。 全国平均を上回った地域のうち、成長率が最も高かったのは新疆で7.0%増。2位が江西、3位が福建と湖北だった。新疆のGDP成長率をけん引したのは主に投資と消費で、固定資産投資は24.8%増、社会消費財小売総額は7.9%増で、ともに全国第2位となっている。 20年初めにコロナ感染拡大の影響を大きく受けた湖北省は回復が鮮明で、GDPは6.7%増を記録した。工業、投資が大幅に伸び、経済回復をけん引した格好だ。 一方、成長率が全国平均を下回った地域のうち吉林、天津、上海、広東はコロナの影響が大きかった地域だ。このうち、吉林は7.9%減と唯一のマイナス成長。コロナ流行を受け、工業生産高が10.5%減、固定資産投資が31.8%減となったことが響いた。次いで低い成長率だったのは天津で0.1%増。天津は年初に中国初のオミクロン変異株の感染が確認され、厳格な封じ込め・管理が実施されたことで、工業、投資の伸び率がともにマイナスとなり、消費はプラス成長を確保したものの伸び悩んだ。経済規模が大きい上海と広東はそれぞれ3.1%増、3.3%増と、ともに3%台の成長にとどまった。 ■GDP成長率目標:28省・直轄市が未達 各地が年初に設定した年間のGDP成長率目標と比較すると、新疆、福建、山西を除く28省・直轄市で年間目標の成長率を下回った。中でも、吉林、天津、海南、遼寧、上海、河南、広東の7省・直轄市は成長率目標を2%ポイント以上下回っており、年内の「安定成長」実現に向けた圧力が比較的大きくなっている。 ■投資:内モンゴル、新疆、湖北が高い伸び、吉林は2桁減 固定資産投資の伸び率は、31省・直轄市のうち22省・直轄市で2桁に達した。伸び率が最大だったのは内モンゴルで59.6%増。次いで新疆が24.8%増、湖北が20.0%増と続いた。一方、マイナス成長となったのは、吉林31.8%減、チベット5.1%減、天津4.5%減の3省・直轄市だった。 固定資産投資伸び率の目標を発表している21省・直轄市のうち、16省・直轄市が目標の伸び率を達成。うち、新疆は目標を14.8ポイント上回った。近年、新疆ではインフラ建設投資が拡大。中央予算が振り向けられ、鉄道などの重点プロジェクトが進んでいる。一方、目標を下回ったのは5省・直轄市で、うち吉林は38.8ポイント、天津は10.0ポイント、遼寧は4.9ポイント下回った。 ■工業:成長率トップはチベット、最下位は吉林 全国の工業生産高(付加価値ベース)は前年同期比6.5%増。31省・直轄市のうち、伸び率が全国平均を上回ったのは23省・直轄市。うち、トップはチベットで17.6%増を記録した。次いで、青海15.2%増、貴州15.2%増、山西11.0%増、雲南10.3%増と続き、2桁の伸び率を達成した。一方、吉林は10.5%減、遼寧は1.7%減、天津は0.6%減とマイナス成長となっている。 過去2年(20年と21年)の第1四半期の平均伸び率と比べると、31の省・直轄市のうち、伸び率が拡大したのは18省・直轄市。うち、チベットの伸び率は10ポイント拡大して17.6%に達している。主に工業生産高の規模が比較的に小さいこともあり、高い伸びを示している。13省・直轄市の成長率は横ばい又は縮小となり、うち吉林、天津、遼寧、江蘇、山東の5省・直轄市の成長率の縮小幅は2ポイントを超え、工業生産の落ち込みが大きいことが示されている。 ■消費:天津や上海でマイナス 全国の社会消費財小売総額は前年同期比3.3%増。小売総額の発表がなかった吉林を除いた30省・直轄市のうち14省・直轄市で成長率が全国平均を下回った。中でも、低迷が顕著だったのは天津3.9%減、上海3.8%減、青海0.2%減などの地域だ。 一方、成長率トップは江西で8.9%増。個人消費潜在力や消費意欲を喚起するため、江西は元旦や春節休暇を中心に各種の販促イベントを開催するなどした。次いで新疆が7.9%増、湖北が7.8%増、河北が7.1%増、福建が7.0%増だった。 過去2年(20年と21年)の第1四半期の平均伸び率と比べると、30省・直轄市のうち17省・直轄市の伸び率が鈍化。中でも上海、甘粛、江蘇、安徽、貴州、江西の6省・直轄市は鈍化率が5ポイント超となっている。一方、13省・直轄市は成長率が加速。うち湖北、新疆、黒竜江、遼寧、河北の5省・直轄市は成長率が5ポイント以上拡大した。 ■第1四半期、上海は3月の消費減少が鮮明に 前述の通り、コロナの状況により経済指標は明暗が分かれた。特に、上海は3月以降、コロナの影響による経済の下押し圧力が強まっている。上海市統計局によると、3月以降、固定資産投資の増勢が鈍化するとともに、社会消費財小売総額は減少。第1四半期の上海の社会消費財小売総額は3.8%減で、うち1-2月は前年同期比3.7%増加したのに対し、3月は同18.9%減少した。 一方、経済成長率が高かった新疆、貴州、山西、チベットなどの中西部地域は東南沿海地域に比べて港湾が少なく、人口密度が低いため、感染症の圧力は比較的小さい。また、国の地域発展戦略の一環として製造業の産業移転が加速していることも、中西部の経済を支えている。 ■コロナの影響は第2四半期も継続見通し 今後については4月以降も上海などで封鎖が続いている状況を鑑みると、コロナの影響は第1四半期よりも第2四半期に色濃く反映される可能性が高い。こうした中、「安定成長」の実現に向けて急務となっているのは、コロナ抑制とともに、◆サプライチェーンの円滑化、安定化を保障したうえで、全面的な操業・生産再開を推進すること、◆中小・零細企業を中心とする企業支援を加速すること、◆重大プロジェクト投資や消費促進、内需拡大につながる支援を強化すること――などが挙げられている。国内環境だけでなく、外部環境にも不確実性がくすぶる中、政府が適時に効果的な政策を打ち出し、安定成長を確保できるのか、注目されている。

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ファーウェイ、アナリストサミット開催~経営陣がチップ問題など最新動向に言及

ファーウェイ(HUAWEI)の第19回グローバル・アナリスト・サミット(HAS2022)が深セン市で4月26日に開幕した。中国メディアによると、同日は、ファーウェイの輪番董事長である胡厚崑氏や常務董事の汪涛氏らが登壇。チップ供給などの問題や自動車などの新規事業などの最新動向に言及した。 ■厳しい経営環境、「生き残りのために質向上が重要」 まず目下の経営環境について、胡厚崑氏は厳しさが増していると指摘。その一つが米中対立のあおりを受け、チップの入手が困難になったことで、チップ不足を背景に携帯電話事業が低迷している。加えて、足元では新型コロナウィルス流行やインフレ圧力なども経営環境の悪化に拍車を掛ける中、胡厚崑氏は「今年は生き残るのが先決で、生き残りのためには質を高めることが重要」と述べている。 生き残るための質向上に向けた取り組みとしては、(1)製品およびソリューションの品質を保証し、製品競争力を維持すること(2)取引の品質管理をしっかり行うなどで安定した運営を示すこと(3)将来に向けた人材に資金を投入すること――が必要との考えを示した。 ■今年も「天才少年プロジェクト」 (3)に絡んだ研究開発投資について胡厚崑氏は、経営環境が厳しいここ数年も拡大している点を強調している。例えば、2021年の研究開発費は1,427億元。同年の売上高に対する比率は22.4%で、過去の研究開発費の対売上高比率(約10%)を大きく上回っている点のほか、同年の研究開発人員が10万7,000人と全体の54.8%を占めている点を挙げている。 今後も人材への資金投入は緩めない方針で、4月25日には今年の「天才少年プロジェクト」を発表している。「天才少年プロジェクト」は、世界から高い年俸で優秀人材を募るもので、その年俸の高さに注目が集まるが、胡厚崑氏は、国籍、専門を問わず世界レベルの人材を誘致することは「科学、技術の進歩を推し進めるもの」と述べている。 ■携帯電話事業の低迷で端末事業を再考 胡厚崑氏はまた携帯電話事業の低迷について、「端末のレイヤーの業務の成長について再考する契機になった」と指摘。先端部品が入手できない状況下、「端末事業が、如何に消費者により大きな価値をもたらすかを改めて考える機会になった」という。そもそも端末は「携帯電話だけではない」とし、「ユーザーが、多くの電子機器に囲まれるようになった時、必要なのはより多くの端末ではなく、よりスマートな体験。つまり人を中心にし、人がどこででもスマート化の体験できること」こそが端末事業で、スマート体験の提供が「ファーウェイの端末事業のイノベーションの焦点でもある」と訴えた。 胡厚崑氏のこの発言に先だった4月20日、ファーウェイは「コンシューマー事業」を「端末事業」に名称を変更すると発表した。従来「コンシューマー事業」は個人向けスマホが中心だったのに対し、「端末事業」はコンシューマー製品と法人向け製品の2大分野を全面的にカバー。コンシューマー製品は個人、法人向け製品は政府や企業がターゲットとなる。名称変更により、ファーウェイは法人向け端末事業に本格参入することになり、胡厚崑氏は「多様な端末、クラウドサービス、多くの協力パートナーと構築するエコシステムを通じて、スマートオフィス、スポーツ・ヘルスケア、映像・音声・娯楽、スマートホーム、スマート交通などの様々なシーンでユーザーに新たな体験を提供していく」との方針を示した。 ■チップ問題は世界のサプライチェーン問題の解決が必要、自前工場の建設はなし ファーウェイにとっての脅威の一つとなっているチップ不足問題を巡っては、胡厚崑氏は自前のチップ工場の建設はないと改めて強調した。そもそも、チップ不足はコロナ流行や地政学リスクの高まりを背景にした産業チェーンの混乱が招いたもので、「半導体の産業チェーンは非常に長く、チップ問題を解決できるのは、世界で統一されたサプライチェーンのみ」(汪涛氏)。ファーウェイが自前で工場をつくっても根本的な問題の解決にはつながらず、「産業チェーンが完備されれば、ファーウェイの問題も解決される」(同)という。 ■スマートカー、「良い車をつくるサポート」が主軸 スマートカー分野については、胡厚崑氏は「自動車業界全体が転換点に差し掛かり、今後はデジタル技術が自動車業界転換のカギになる」との認識の下、「ファーウェイの位置づけは、車をつくるのではなく、良い車をつくる助けをすること」という。ファーウェイは昨年来、自動車メーカーなどと提携し、現在300社以上のパートナーと協力関係にあり、スマートカーのソリューションやハード部品を提供。胡厚崑氏は、「今年は新たなスマートカーを発表する予定」と明らかにしている。

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中国、地方都市が相次ぎ住宅規制緩和~投機抑制の方針は堅持

中国の地方政府が今年に入り、住宅市場の規制緩和に動いている。ただ、政府は「住宅は住むためのもので、投機のためのものではない」との方針を堅持。実需を喚起する一方、不動産投機による価格の過度の上昇は抑える方針だ。 中国当局は昨年後半、住宅価格高騰を抑える政策をとった。こうした政策を背景に、足元の不動産市場は低迷。国家統計局によると、今年1~3月期の民間分譲住宅販売面積は前年同期比13.8%減、同販売額は22.7%減と、ともに大幅な落ち込みを示した。 景気全体の下振れ圧力も強まっている。1~3月期の国内総生産(GDP)は前年同期比4.8%増。伸び率は政府設定の22年通年目標(5.5%前後)を下回った。さらに、足元では上海市をはじめとする一部都市の防疫措置の強化で経済活動が停滞する中、IMFなどが中国の22年通年のGDP成長率を下方修正している。 ■年初来、80以上の都市が不動産規制を緩和 こうした状況下、不動産規制を緩和する地方政府が相次いでいる。中原地産研究院によると、年初来、不動産規制を緩和したのは80以上の都市に及ぶ。うち、4月だけで30以上の都市が、その都市の状況に応じて不動産政策を調整した。例えば、河北省、山東省、山西省、湖南省などは4月、需要を喚起するため、住宅ローン金利を引き下げている。当面、6月にかけての第2四半期は、緩和的な不動産政策の趨勢は変わらないとの見方が大勢を占める。 不動産規制が緩和される中、中国の官制メディアの一角である「経済日報」は4月20日、「不動産市場の安定が経済の安定における役割を発揮」との記事を掲載した。同記事ではまず、中国の不動産業の経済寄与の大きさに言及。2021年の不動産業の付加価値は7兆7,600万元、建築業は8兆元で、合算するとGDPの約14%を占め、不動産業の規模の大きさ、裾野の広さを挙げている。また、固定資産投資、地方財政収入、金融機関融資に占める不動産の比率が高い点も指摘している。 そのうえで、「安定成長を優先課題に位置付ける背景の下、不動産市場安定のマクロ経済の安定における役割を一段と発揮させるべき」と指摘。実需を満たすとともに、不動産価格の安定、市場予想の安定に努める必要があるとしている。 ■実需を喚起しつつ投機は抑制へ 一方、同記事の最後に、「強調しなければならないのは、不動産市場の安定・回復の促進は、不動産価格の過度の上昇を奨励するものでなく、不動産投機を支援することはできない」と指摘している点は見逃せない。不動産市場は既に価格の過度の上昇から安定した健全な成長段階に移行し、「不動産は住むもので、投機のためのものではない」との方針のボトムラインは死守するとしている。 従来、不動産政策はマクロ経済の主要な調整手段として使われ、景気を下支えする役割も大きかった。しかし、中国政府は「住宅は住むためのもので、投機のためのものではない」との方針を打ち出して以降、「不動産は景気刺激の手段ではない」との方針を幾度となく訴えている。足元の不動産規制の緩和が、投機を誘発せず、実需を喚起することができるのか、その舵取りが注目される。