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中国深圳市が自動運転に関する管理条例を公布~国内初、事故責任などを明確化

深圳市はこのほど、『深圳経済特区インテリジェントコネクテッドカー(ICV)管理条例』を公布した。施行は8月1日から。同条例は、ICVの管理に関する中国内初の条例で、自動運転の定義、市場参入ルール、権利・責任などに関して具体的に規定したもの。同条例は今後、他の都市の自動運転に関する政策の参考指標になる見込みで、自動運転に関する法整備が加速するとみられている。 ■スマートカーの普及進展 中国では自動車メーカーが自動車のスマート化の開発を加速しており、特に自動運転分野で投資を拡大している。例えば、理想汽車と蔚来汽車(NIO)が先ごろ発表した新モデル「理想L9」と「蔚来ES7」は、自動車センサーや計算プラットフォームを埋め込み、自動運転のハードシステムを構築するつくりとなっている。 こうした中、自動運転を含むスマートカーの市場は拡大する見込み。国家発展改革委員会は、2025年に中国のスマートカーの普及率が82%、普及台数は2,800万台に達し、2030年には普及率が95%、台数は約3,800万台に拡大すると予想している。 ■自動運転のテストで先行する深圳 中国の自動運転の進展状況をみると、一部地域からテストを実施。このうち、深圳市は自動運転用の開放テスト道路が約145キロ、ライセンス発行は累計93枚にのぼり、開放エリアやライセンス発行数はいずれも全国上位となっている。 こうした中、自動運転に関する法規制の整備が急務となっている。工業情報化部が制定した『自動車運転自動化等級』によると、L2レベル以下の車両では、道路状況のモニタリングなどの任務はすべてドライバーとシステムが共同で行い、ドライバーは動いている際の運転任務を受けなければならないと定められている。一方、L3レベル以上の車両は一部の路面で、全自動モデルがオンになった場合、ドライバーはハンドルおよびアクセルペダルから離れることができると定められた。ただ、交通事故が起こった際の責任の所在などは明確になっていない。 今回、制定された深圳の条例では、自動運転の事故の責任所在などが定められた格好だ。 ■深圳市の条例の主な内容 製品の参入基準 深圳の条例では、まず製品の参入管理制度について、深圳市の工業・情報化部門がICV製品の生産者の申請に基づき、深圳市の地方基準を見達したICV製品を深圳市ICV製品リストに掲載するよう求めている。また、ICV関連業界団体が国際的な先進基準を参考に、ICVおよびその関連業界の企業・機関を組織し、ICV製品および関連の団体基準を制定することを奨励するとの内容が盛り込まれた。 ドライバーの運転任務 同条例ではまた、ICVを「条件付き自動運転」、「高度自動運転」「完全自動運転」の3タイプに分類した。そのうえで、ICVの運転者の引き継ぎ義務をタイプ毎に明確化。「条件付き自動運転および高度自動運転の運転手は、自動運転システムが運転任務の引き継ぎ要求を出した場合、その要求に応答し、直ちに車両を引き継がなければならない」と定めている。 交通事故の責任 自動運転による交通事故の責任認定問題については、大きく次の3つの状況の際の責任を定めた。一つ目は、運転手がいるICVで交通違反または責任のある事故が発生した場合。この場合、運転手が違法で、賠償責任を負うと規定している。二つ目は、完全自動運転でICVに運転手がいない間に交通違反、または責任のある事故が発生した場合。この場合は、原則的に車両の所有者、管理者が違法で、賠償責任を負うとしている。三つ目は、ICVに欠陥が存在することによって起きた交通事故で損害をもたらした場合。この場合は、車両の運転手または所有者、管理者は上述の規定に基づき賠償した後、法に基づいて生産者、販売者に賠償を請求することができるとしている。 安全提示を義務付け また、歩行者などへの安全提示を義務付け。同条例は、自動車に自動運転モードの外部表示灯を設置し、自動運転モードで走行する際には表示灯を点灯させて他の車両や歩行者に明らかに安全提示を行うよう求めている。 深圳の条例制定を契機に、今後中国での自動運転に関する法整備が進展すれば、自動運転の実用化に向けた動きも加速することになりそうだ。

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中国、自動車とスマホメーカーの連携相次ぐ~吉利はスマホ、ファーウェイはスマートカー

中国の自動車とスマホメーカーの異業種連携が相次いでいる。7月4日には吉利汽車が傘下企業によるスマホメーカー買収を正式に発表。同日、華為(ファーウェイ)は自動車製造の小康(セレス)との共同開発の電気自動車「問界M7」を公開した。自動車メーカーとスマホメーカーの連携が増える中、将来的に自動車は大きなスマート端末として新たなビジネスチャンスを生み出すとみられている。 ■吉利の創業者・李書福氏、車とスマホの融合に意欲 吉利の創業者である李書福氏が設立した星紀時代科技有限公司(以下、「星紀時代」)は7月4日、スマホメーカーの魅族科技有限公司(以下、「魅族科技」)と戦略投資の契約を締結。星紀時代が魅族科技の株式79.09%を取得し、魅族科技に対する単独支配権を持つと正式に発表した。両社はユーザーにマルチ端末から様々なシーンで活用できるコア製品に注力する。 星紀時代は2021年9月に設立。李書福氏が董事長を務め、事業範囲はインターネットゲームサービス、モバイル端末機器の製造、集積回路チップおよび製品の製造、ビッグデータサービスなど。吉利集団が筆頭株主となっている。李書福氏は、「携帯電話事業の買収を通じて、自動車と携帯端末の融合を実現したい」と意欲を示す。 魅族科技は、当初出稼ぎで深圳に来て電子業界に入った黄章氏が2003年に魅族ブランドを立ち上げ。2009年に「魅族M8」を発売した。国内初のスマートフォンとして、マイクロソフトのWindows CEシステムを搭載し、発売後2カ月で約10万台を販売した。2015年から2017年にかけて、魅族とその傘下の魅藍ブランドは計25機種の携帯電話を投入し、年平均出荷台数は約2,000万台だった。 両社の契約によると、星紀時代の戦略投資後も、魅族科技は独立ブランドとして運営を継続。両社はブランドの独立性を維持した上で、異なるコンシューマー・エレクトロニクス市場をカバーする。同時に、業界の垣根を越えてユーザーのエコシステムを構築し、シナジーを実現したい考え。黄章氏は魅族科技の製品戦略顧問として、引き続き魅族科技に貢献する予定で、魅族科技のマネジメントチームの安定は維持されるという。 吉利は魅族科技について、「20年近くコンシューマー・エレクトロニクス業界に携わり、中国のスマホ業界の先駆者」と指摘。スマホOS「Flyme」は1億人以上のユーザーを抱えており、双方の提携に向けたユーザー基盤が構築されている点に目を付けている。一方、魅族科技は吉利の産業チェーン、エコシステムのリソースを活用して「Flyme」のアップグレードを続け、進化するスマホを提供する計画。同時に、スマホと自動車のクロスプラットフォーム、クロス端末の融合を実現し、ユーザーに様々なモノをつなげるIoTの体験を提供したい考えだ。 ■ファーウェイ、「ハーモニーOS」のアプリすべて搭載した電気自動車発表 同じく7月4日、ファーウェイは新製品発表会を開催。その最大の主役は携帯電話などの電子製品ではなく、ファーウェイと小康が共同でつくったスマート新エネルギー車ブランド「AITO」シリーズ第2弾の「問界M7」だった。 「ファーウェイ独自のスマホOS鴻蒙(ハーモニー)のアプリをすべて搭載した世界で初めての自動車」。ファーウェイ常務取締役の余承東氏はこう強調した。ハーモニーOSのアプリをすべて搭載したことで車内の機能を拡充。新たにスーパーデスクトップ機能を追加し、「問界M7」からスマホアプリに直接接続でき、ユーザーは大画面でスマホアプリを操作できる。また、大画面を利用して微信(Wechat)の文書を編集したり、搭載されたカメラでVlogをとることができる。 システムの運用面では、車内はファーウェイ端末の利便性が発揮できるつくり。「問界M7」には複数のデバイスが相互に接続でき、その中のPetal Mapsナビゲーションは異なるデバイスでシームレスに同期できるなどの機能を有する。 新車発表会場に登場した小康の創業者である張興海氏は、「ファーウェイと小康は共同製造、共同販売を行い、ファーウェイのスマートテクノロジー、小康の自動車製造の技術を融合。AITO問界ブランドが示しているのは、業界を越えた自動車製造の力だ」と強調した。 張興海氏によると、ファーウェイのハーモニーOS搭載に伴うスマートコックピットの拡充により、2022年6月のAITO「問界M5」の販売台数は前月比40.2%増の7,021台に拡大したという。 ■自動車とスマホメーカーの連携、双方のユーザーがターゲットに 自動車とスマホメーカーの連携はこのところ注目を集めている。「未来の自動車は4輪を組み込んだスマートフォン」と主張する専門家もいるほどだ。テスラ創業者のイーロン・マスク氏も、テスラがスマートフォンをつくると明かしている。 李書福氏もコンシューマー・エレクトロニクス業界への参入について何年も考えてきた。7月4日の調印式では、「新たな科学技術、産業イノベーションは多くの新業態、新モデルを生み出してきた」と指摘。「コンシューマー・エレクトロニクス業界と自動車業界の技術革新とエコシステムの融合は必然的な流れ。携帯電話事業に参入することで、コンシューマー・エレクトロニクス産業と自動車産業が深く融合し、業界を超えたユーザーのエコスステムを構築し、シナジーを発揮できる」と意欲を示している。 魅族科技董事長の沈子瑜氏も、「携帯電話会社が自動車をつくり、自動車メーカーが携帯電話をつくるというのは大勢の流れ。将来的には自動車業界と携帯電話業界の競争は同じレール上で行われることはない」との見方を示している。 今後、自動車とスマホメーカーの連携が一段と進む可能性がある中、カギとなるのは自動車と携帯電話の双方のユーザーにどのようなサービス、体験を提供できるのかという点だ。そもそも、自動車と携帯電話のユーザー数は大きく異なる。中国の年間販売台数は、携帯電話が約3億3,000万台。これに対して、自動車は約2,000万台。消費者が1日に費やす時間は、携帯電話が約4、5時間、自動車が約1時間。「異なる端末からあらゆる場面に対応できるようにすることが重要課題だ」と沈子瑜氏は述べている。 自動車と携帯電話のスマートな融合でユーザーに一体化した体験を提供できるのか。大きなスマート端末としての自動車が生み出すビジネスチャンスが注目される。

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ファーウェイ、アナリストサミット開催~経営陣がチップ問題など最新動向に言及

ファーウェイ(HUAWEI)の第19回グローバル・アナリスト・サミット(HAS2022)が深セン市で4月26日に開幕した。中国メディアによると、同日は、ファーウェイの輪番董事長である胡厚崑氏や常務董事の汪涛氏らが登壇。チップ供給などの問題や自動車などの新規事業などの最新動向に言及した。 ■厳しい経営環境、「生き残りのために質向上が重要」 まず目下の経営環境について、胡厚崑氏は厳しさが増していると指摘。その一つが米中対立のあおりを受け、チップの入手が困難になったことで、チップ不足を背景に携帯電話事業が低迷している。加えて、足元では新型コロナウィルス流行やインフレ圧力なども経営環境の悪化に拍車を掛ける中、胡厚崑氏は「今年は生き残るのが先決で、生き残りのためには質を高めることが重要」と述べている。 生き残るための質向上に向けた取り組みとしては、(1)製品およびソリューションの品質を保証し、製品競争力を維持すること(2)取引の品質管理をしっかり行うなどで安定した運営を示すこと(3)将来に向けた人材に資金を投入すること――が必要との考えを示した。 ■今年も「天才少年プロジェクト」 (3)に絡んだ研究開発投資について胡厚崑氏は、経営環境が厳しいここ数年も拡大している点を強調している。例えば、2021年の研究開発費は1,427億元。同年の売上高に対する比率は22.4%で、過去の研究開発費の対売上高比率(約10%)を大きく上回っている点のほか、同年の研究開発人員が10万7,000人と全体の54.8%を占めている点を挙げている。 今後も人材への資金投入は緩めない方針で、4月25日には今年の「天才少年プロジェクト」を発表している。「天才少年プロジェクト」は、世界から高い年俸で優秀人材を募るもので、その年俸の高さに注目が集まるが、胡厚崑氏は、国籍、専門を問わず世界レベルの人材を誘致することは「科学、技術の進歩を推し進めるもの」と述べている。 ■携帯電話事業の低迷で端末事業を再考 胡厚崑氏はまた携帯電話事業の低迷について、「端末のレイヤーの業務の成長について再考する契機になった」と指摘。先端部品が入手できない状況下、「端末事業が、如何に消費者により大きな価値をもたらすかを改めて考える機会になった」という。そもそも端末は「携帯電話だけではない」とし、「ユーザーが、多くの電子機器に囲まれるようになった時、必要なのはより多くの端末ではなく、よりスマートな体験。つまり人を中心にし、人がどこででもスマート化の体験できること」こそが端末事業で、スマート体験の提供が「ファーウェイの端末事業のイノベーションの焦点でもある」と訴えた。 胡厚崑氏のこの発言に先だった4月20日、ファーウェイは「コンシューマー事業」を「端末事業」に名称を変更すると発表した。従来「コンシューマー事業」は個人向けスマホが中心だったのに対し、「端末事業」はコンシューマー製品と法人向け製品の2大分野を全面的にカバー。コンシューマー製品は個人、法人向け製品は政府や企業がターゲットとなる。名称変更により、ファーウェイは法人向け端末事業に本格参入することになり、胡厚崑氏は「多様な端末、クラウドサービス、多くの協力パートナーと構築するエコシステムを通じて、スマートオフィス、スポーツ・ヘルスケア、映像・音声・娯楽、スマートホーム、スマート交通などの様々なシーンでユーザーに新たな体験を提供していく」との方針を示した。 ■チップ問題は世界のサプライチェーン問題の解決が必要、自前工場の建設はなし ファーウェイにとっての脅威の一つとなっているチップ不足問題を巡っては、胡厚崑氏は自前のチップ工場の建設はないと改めて強調した。そもそも、チップ不足はコロナ流行や地政学リスクの高まりを背景にした産業チェーンの混乱が招いたもので、「半導体の産業チェーンは非常に長く、チップ問題を解決できるのは、世界で統一されたサプライチェーンのみ」(汪涛氏)。ファーウェイが自前で工場をつくっても根本的な問題の解決にはつながらず、「産業チェーンが完備されれば、ファーウェイの問題も解決される」(同)という。 ■スマートカー、「良い車をつくるサポート」が主軸 スマートカー分野については、胡厚崑氏は「自動車業界全体が転換点に差し掛かり、今後はデジタル技術が自動車業界転換のカギになる」との認識の下、「ファーウェイの位置づけは、車をつくるのではなく、良い車をつくる助けをすること」という。ファーウェイは昨年来、自動車メーカーなどと提携し、現在300社以上のパートナーと協力関係にあり、スマートカーのソリューションやハード部品を提供。胡厚崑氏は、「今年は新たなスマートカーを発表する予定」と明らかにしている。