中国国家発展改革委員会に「民営経済発展局」を新設~専門部署設立で政策実行効率向上へ
国家発展改革委員会は9月4日、「民営経済発展局」の設立を発表した。民営企業を専門に司る部署の設置により関連政策の策定、実行を加速し、民間経済の活性化につなげる狙い。
■民営経済発展局設立の背景
民営経済発展局が設立された背景には、民営企業の役割が大きくなっているものの、それを管轄する専門の部署がなかったことがある。
現在、中国には2,500万社近くの民営企業があり、その役割、貢献は「56789」という数字で現わされている。「5」は、民営企業が国の税収の50%以上を占めていること、「6」は、民営企業の国内総生産(GDP)、固定資産投資、対外直接投資の60%以上を占めていること、「7」は、民営企業のうちハイテク企業の割合が70%を超えていること、「8」は、民営企業による都市部雇用が80%以上であること、「9」は、新規雇用に対する民営企業の貢献が90%に達していること。
民営企業の存在感が強まっているものの、民営企業を司る政府の部門がなく、民営企業側も問題が発生した場合、政府のどの部門に問い合わせするかなど不透明な状況にあった。こうした問題の解消に向け、今年8月1日、国家発展改革委員会は「民営経済発展促進に向けた措置実施に関する通知」を発表した。同通知では、民営企業が各種問題に遭遇した際に、どの部門に問い合わせるべきかなど、民営企業に関連する管轄部門などを明確にしている。例えば、「深刻な支払い遅延問題に遭遇した際には、工業情報化部を筆頭に、国家発展改革委員会、財政部、会計検査院、国有資産監督管理委員会などの部門がこれら作業に参加する」などと明記されている。
しかし、民営企業に係る問題は広範におよぶうえ、関連政策・関連部署も多い。また中央と地方の職責が不明確などの問題も解消されていない。こうした点を踏まえ、民営企業を専門に司る部署を設立。新部署の設立で政府の部門間調整をスムーズにさせ、効率を引き上げる狙い。
■民営企業の先行き不安
民営企業による先行き不安が払拭されていないことも新部署設立の背景の一つ。
民営企業を巡ってはここ数年、巨大化したプラットフォーム企業を中心に、無秩序な発展に歯止めをかけるべく規制を強化したが、足元では再び民営企業支援を強調する方向に舵を切っている。今年2月には中国共産党の理論誌『求是』で、民営企業の発展を支援する旨の習近平国家主席署名付きの文書を掲載。7月には共産党中央委員会と国務院が連名で「民営経済発展・強化の促進に関する意見」を発表し、民営経済の重要な役割を改めて確認するとともに、民営企業の問題に対処すべく関連政策を打ち出している。例えば、7月下旬には民間投資の推進に向けた「民間投資の推進・喚起に関する通達」を発表している。
ただ、民間投資の不振は続いている。1~7月の民間投資は前年同期比で0.5%減。前年割れが続くのは極めて稀で、民営企業が先行きに対して依然として弱気な状況が反映されている。
前述の通り、政府は足元で再び民営企業を支援する旨を強調。民営企業の資金繰り問題に対処すべく国有銀行との連携強化による民営企業へのファイナンス支援や、支払い遅延問題への対応などを強化しているが、「政府の対応は資金繰り問題のみに傾斜している」との指摘もある。
無論、資金繰り問題の改善は必要だが、「民営企業が最も望んでいるのは、公平なビジネス環境、安定して連続性のある政策、法的保障で、こうした基盤があってこそ大胆な投資が可能」と指摘されている。
民営経済発展局の職責は、民営経済の状況のモニタリング・分析、関連政策の策定・実施、民営企業とのコミュニケーションメカニズムの確立などとされ、「監督機能」は比較的少ない。これは、過度の規制で自由なビジネス環境を妨げないよう配慮したためとみられている。
政府は民営企業に対して、国有企業と公平に競争できる環境整備が必要な一方、自由なビジネス環境が形成されるよう過度の監督・規制を回避する必要がある。行政介入の匙加減が問われている。