中国のペットの数が10年で1億3000万匹増加、若者が「癒し」を求めている?―中国メディア
いつの頃からか、かわいいネコやイヌの写真が、微信(WeChat)のモーメンツをジャックするようになっているのに気付いているだろうか?何気なくモーメンツを見ていると、会社の同僚がイヌの写真をアップしていて、普段はぶっきらぼうな同僚が、はじけるような笑顔でイヌを抱っこしているのを目にするということも少なくないだろう。中国青年報が伝えた。
大学卒業後、北京のあるIT企業に就職した王[王其]さんは「金宝」と名付けたネコを飼っており、「毎朝起きると、横で寝転んでいる金宝がかわいい目で私を見つめていて、心がうっとりして、新たな一日にたくさんの仕事と向き合う勇気が湧いてくる」と話す。
大都市では、ペットを飼う若者が増加の一途をたどっている。会社で仕事をバリバリしている人も、帰宅後は素の自分に戻り、ペットの世話をしているのだ。統計によると、2010年から20年までの10年間、中国で飼われているペットの数は5900万匹から、1億8900万匹まで激増した。そのうち、都市部で飼われているネコやイヌの数は1億匹を超えている。
米心理学者・エリク・H・エリクソン氏は、「20~40歳の成人期は、人が親密感を獲得し、孤独感を避けようとする心理的発達段階」としている。大都市で一生懸命に働いている若者は、恋人を見つけたり、結婚したりしたいと願ってはいても、現実がそれを難しくしているため、ペットを飼って、親密性を獲得しようとしているのかもしれない。ある実験データでは、ペットとじゃれ合うと、血圧や心拍数が下がり、ストレスホルモン「コルチゾール」の値も下がることが分かっている。つまり、今の若者はペットを飼うことで、かなりの程度ストレスを解消し、生活の質を向上させることができているということだ。
あるネットユーザーは、「自分の食事は出前で1食当たり15元(約270円)。でも、イヌは1袋300~400元(約5400~7200円)のドッグフードを食べている」とつづっている。今の若者は、ペットにはケチらずにお金を使うのだ。2020年、中国のペット市場の規模は約3000億元(約5兆4000億円)に達し、赤ちゃんの粉ミルクやオムツの市場の規模を超えた。そして、2023年にはその規模が4456億元(約8兆208億円)に達する見込みだ。
都市でペットを飼っている若者は何を考えているのか分からないと感じている人もいる。
中国心理学会に心理カウンセラーとして登録されている魏冉氏は、「このような現象に矛盾はない」との見方を示し、「今の若者は、『誰かと一緒にいたい』という思いをペットに十分に満たしてもらっており、親密感を覚えるようになり、感情的にペットに依存するようになっている。そして、その関係をずっと続けたいと期待し、ペットにお金をかけるという行為はいたって自然なことだ。そして、ペット用品を購入する過程で、若者はペットを飼う者同士の間に居場所を見つけるようになっている」と説明する。
ネット上で「なぜペットを飼うのか」と検索してみると、「癒し」というワードヒット率が高かった。大勢の人がせわしなく行き交うにぎやかな大都市で、若者は進学や就職、仕事、ローンといったいろんなプレッシャーを抱えており、都市の中でなんとか根を張ろうと必死に頑張っている。そして、慌ただしく、忙しい一日が終わり、自分の家に帰った後は、なんとかして「癒し」を得たいと感じている。
卒業見込み大学生である李暁陽さんは現在、面接に明け暮れる日々を過ごしており、最も多い時で、1日に3社の面接を受け、昼食を食べる暇もないこともあるという。「苦労するのは怖くないけど、面接で不合格通知を受けた時は、自信を保つのが難しくなる。この世界に僕を必要としている場所はないのではないかと感じることさえある。でも、家に帰って玄関を開けると、トイプードルのラッキーがうれしそうに頭を振るようにして、ワンワンと鳴きながら走り寄って来ると、イヌにとって、僕はかけがえのない存在なんだと感じる。そして、必要とされていると感じ、自分に対するネガティブな感情が収まっていく」と話す。
魏氏は、「若者がペットを責任を持って扱う事ができ、ペットが自分に依存していると感じる時、『必要とされたい』という感情が自然と満たされる。そして、自分がいなければならない、自分は価値ある人間だと感じて、力が湧いてくる。そのようにして、労働者にありがちな無力感がかなりの程度消え、自尊心を持つことができる」との見方を示す。
何子涵さん(27)は現在、5年交際した彼氏との結婚を考えているといい、ペットを飼うことの価値について、「ペットを飼った時から、彼氏との関係が良くなった。彼氏と一緒にいることができるだけでなく、ペットが居場所を感じさせてくれている」とした。(提供/人民網日本語版・編集/KN)