中国、対外取引での人民元決済拡大~ブラジル、アルゼンチンと相次ぎ合意
中国が対外取引で人民元決済を拡大している。3月以降は、ブラジル、アルゼンチンと相次いで人民元決済を始めることで合意している。こうした中、国家外貨管理局がこのほど発表した統計によると、3月の中国の銀行によるクロスボーダー取引での決済通貨の割合は人民元が米ドルを初めて上回った。
■アルゼンチンが中国からの輸入で人民元決済~ブラジルに続き
アルゼンチンは4月26日(現地時間)中国からの輸入品の決済通貨を米ドルから人民元に切り替えると発表した。今月は約10億4,000万ドル相当の中国からの輸入品について、人民元で決済する予定。5月以降は、7億9,000万~10億ドル相当の中国からの輸入品の支払いに人民元を使う見通しという。アルゼンチンでは今後数カ月間、人民元決済によって中国製品の輸入に関する認可ペースが加速し、輸入ペースも速まるとみられている。
中国とアルゼンチンは通貨スワップ協定を既に結んでおり、通貨スワップ協定の規模は2018年に700億元から1,300億元に拡大した。このうち、今年1月には350億ドル相当の通貨スワップを発動している。アルゼンチン政府は、人民元決済を始めることでアルゼンチンの外貨準備予想も高めることができると強調している。
3月には、中国はブラジルと貿易・金融取引について、中間通貨としてドルを使わず、双方の自国通貨で決済を行うことで合意。為替コストの低減により中国とブラジルとの間の貿易・投資拡大に期待が寄せられている。
ブラジルでは外貨準備の人民元の割合が高まっている。ブラジル中央銀行によると、2022年末時点でのブラジルの外貨準備に占める人民元の割合は5.37%。ユーロの4.74%を抜いて、米ドルに次ぐ通貨になった。
企業の大口資源取引での人民元決済も進んでいる。中国海洋石油と仏トタル・エナジーは3月28日、液化天然ガス(LNG)の輸入で初めて人民元決済での取引を行った。
また、ASEAN諸国も金融取引のドル依存を減らす方向。マレーシアのアンワル首相は4月下旬、「マレーシアの中央銀行が既に中国と、両国貿易でリンギと人民元で決済できるよう交渉している」と明らかにした。
■中国のクロスボーダー取引、3月は人民元決済が米ドル決済を初めて上回る
3月、中国のクロスボーダー取引における人民元のシェアは13年ぶりに米ドルを上回った。国家外貨管理局によると、中国の銀行の対外決済に占める人民元の割合は48%。米ドルの47%を上回った。2010年と比べると、人民元の割合はほぼゼロに近い水準だったのに対し、米ドルは83%を占めていた。その後、人民元の割合は徐々に拡大、米ドルの割合は低下してきてきた。
■人民元、国際決済通貨としては世界5位
ただ、世界の国際決済における人民元の割合は徐々に上昇しているが、米ドル、ユーロ、ポンド、円に続いて依然として第5位。国際銀行間通信協会(SWIFT)によると、直近2月のシェアは米ドル41.1%、ユーロ36.4%、ポンド6.6%、円3.0%、人民元2.2%だった。
世界的に人民元が使われるようになるには、なお中国の外貨や資本取引の規制緩和が必要になる。人民元国際化に向けた今後の中国の動きが注目される。