中国自動車市場 価格引き下げ競争広がる半面、価格維持の企業も

中国で自動車の価格引き下げの動きが広がっている。足元では値下げの動きが、当初の新エネルギー車(NEV)からガソリン車にまで波及している。一方で、値下げに参入せず価格を維持する企業も出ている。

■自動車値下げに地方政府が支援
3月初旬、「湖北省史上最強の自動車購入割引シーズン開幕」との宣伝文句がネット上で広がった。内容は、湖北省政府と東風ホンダ、東風シトロエン、東風プジョー、東風風神、東風日産が共同で自動車購入の補助金を支給するというもの。東風シトロエンC6シリーズモデルは補助金が最大9万元で、かなりの補助となる。
湖北省と東風汽車の値下げは他の地域にも広がっている。吉林や重慶、広東、北京などの都市も参入し、長安や第一汽車、奇瑞、北京現代、広汽本田、広汽豊田などのブランドも値下げに参入。ロイター通信などによると、約40 の自動車ブランドが価格競争に参入しているという。

■値下げの背景
価格引き下げは当初、NEVが中心だったが、ここにきてガソリン車に、その動きが広がっている。値下げ広がりの背景としては複数の要因が挙げられている。
一つ目は需要の低迷。全国乗用車市場信息聯席会(乗聯会)によると、 1 月の乗用車小売販売台数は 129万3,000台で、前年同月比で 37.9% 減、前月比で 40.4% 減となった。中でも落ち込みが顕著だったのは合弁ブランド。同月の主流合弁ブランドの小売販売台数は 47 万台で、前年同月比で 45% 減、前月比 で45% 減と、ともに全体を上回る減少率となっている。
このほか、ガソリン車が値下げに参入した要因として指摘されているのは、7月から新たな排ガス基準「国6B(VIB)」の全面実施がある。
中国の排ガス基準を巡っては、2016年に「国6」の排出基準が正式に発表された。「国6」は、前の基準である「国5」に比べてかなり厳格になったことから、「国5」から「国6」への移行期間は、「国6A」と「国6B」の2段階に分けて実施。「国6A」は過渡的措置で、「国6B」が「国6標準」になる。「国6B」は「国6A」と比べて、テスト基準で自動車の実際の走行排出量を測定するRDEテストが新たに追加された。また排ガス規制も厳格化されている。
この「国6B」が今年7月1日からすべての車種に対して全面的に適用される。ただ、一部のメーカーの車種は「国6B」の基準を満たしておらず、「国6A」基準にとどまっている。このため、「国6B」基準を満たさない車種の在庫整理のため値下げの動きが広がっているとみられている。
過去を振り返っても、排ガス基準の切り替え前は、値下げが広がった。例えば、ガソリン車の「国5」から「国6A」への切り替え(2019年6月)前。「国6A」基準を満たさない車種の値下げを通じた販売促進が行われた。これにより、2019年6月の乗用車小売販売台数は前年同月比40%増と大幅に伸びたが、7月、8月は前年同月比でそれぞれ17%減、18%減。反動減が顕著なっている。

■価格維持の企業も
値下げ競争が広がる半面、価格を維持する企業も出ている。例えば、理想汽車(Li Auto)。同社は「90日間価格維持」策を打ち出した。これは、自動車購入後90日以内に会社側が値下げを実施した場合、値下げ分を還付する施策だ。この動きに、零跑汽車(Leap Motor)、吉利とボルボの合弁高級車ブランドである領克(Lynk&Co)、哪吒汽車(Neta)なども追随している。
これら価格維持に動くのは、販売が比較的好調な企業。例えば、理想汽車は今年に入ってからの納車台数は既に3万1,700台に達し、新興自動車メーカーの中ではトップ。同社の李想CEOは3月初旬、テスラやBYDの値下げに絡んで、「値下げが販売を押し上げることはない」との見解を示している。また、「今年は利益が出ることを目指しており、市場シェアや長期の経営効率をより重視する必要がある」と述べ、値下げに動かないことを示唆している。
収益性の観点から値下げを回避したい企業も少なくない。特に、理想汽車をはじめ新興自動車メーカーは依然として赤字が続いているだけに、値下げではなく、ブランド・マーケティング戦略、技術向上など値下げ以外の手段で販売を促進したいとの思惑があるようだ。
値下げした企業と価格維持の企業。今後の販売や業績動向が注目される。

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