ビクトリーブーケが東西文明の交流と融合を表現、北京冬季五輪の担当者語る


 花は大自然が人類に与えた最も美しいものの一つであり、人類の生活と密接に関係し、独特の情感的機能を持って人類と共に発展してきた。花と五輪競技の組み合わせは、栄光の瞬間を見届けるだけでなく、平和へのあこがれも伝えている。


 歴代の五輪のビクトリーブーケは花材こそそれぞれ異なるが、いずれもオリンピック精神と主催国・開催都市の文化的特色を体現するものになっている。2008年の北京五輪の「燃えるように真っ赤な」ビクトリーブーケと2022年の北京冬季五輪の「永遠に枯れることのない五輪の花」は、中華民族の自強不息〈たゆまず努力する〉と団結一心の民族精神と、相互理解・友誼・団結と公平な競争を絶えず追及するオリンピック精神を伝承しており、信用と約束を守り、各国と手を携えてグリーン低炭素・持続可能な発展の道を進む中国の決意を伝えている。

点击进入下一页


 冬季五輪と中国の春節が重なった今回、中国新聞社のコーナー「東西問」は、北京市庭園緑化局シニア・エンジニア付麗氏を独占取材し、ロサ・キネンシスなどの中国の伝統花が五輪競技の中でどのようにして不朽の芳香を漂わせ、中国の花が東西文明の交流をどのように促進したかについて、専門家の視点から語ってもらった。


 中国新聞社記者:ギリシアの古代五輪競技会でブーケはすでに表彰台に欠かせない「栄誉の花」だった。近代五輪競技会では、ブーケはより豊富で多彩な姿で表彰台に現れ、各主催国がその独自の文化を表現する窓口になっている。花はなぜ全人類の祭典でこれほど重要な役割を果たしているのか。


 付氏:2000年余り前、ギリシア人は平和を象徴するオリーブの枝を折り、これを編んで冠にし、古代五輪競技会の勝者に与えた。これは当時のアスリートが得られる唯一の報奨であり、最高の表彰でもあった。オリーブ冠には人の力に対する承認が込められており、平和と希望に対するあこがれを伝えている。


 近代五輪競技の発展のプロセスの中で、五輪のビクトリーブーケは絶えず進歩し、鑑賞性と内容が絶えず充実し、メダルを獲得した選手に祝福を伝えるだけでなく、各国の五輪運営理念を表現する担体となっている。


 例えば、2004年のアテネ五輪は、108年もの長い時を経て五輪がその故郷のアテネに帰ってきた大会だった。古代五輪の象徴の一つであるオリーブ枝の花輪はアテネ五輪の大きな特徴になった。このビクトリーブーケはオリーブ、ガーベラ、アキノキリンソウをメインの花材とし、これに加えてオリーブの枝葉を編んで作られたもので、オリーブで作られたブーケと冠が再び五輪競技会の表彰台に現れたことで、ギリシアの伝統文化の含蓄が体現された。


 他にも、2021年の東京五輪は新型コロナの流行下で開催された五輪で、ビクトリーブーケは「勝利の花」と名付けられ、花材はすべて東日本大震災の被災地のものが使われており、東京五輪の「復興五輪」という運営理念に呼応し、被災地の庶民の復興への願いが込められている。


 実のところ五輪ではビクトリーブーケだけでなく、儀礼用のブーケ・迎賓用のブーケ・来賓用のコサージュ・室内の生け花なども使用される。花を好むのは人類の天性であるというべきだろう。東洋でも西洋でも、花は人の鑑賞に供するものであるだけでなく、人々が思いを伝え、志を示すため「美しき使者」である。人類社会の発展に伴い、花文化には文化の多様性と文明の共通性を示す多くの情報が含まれるようになったため、五輪という世界的な祭典でも、普遍性と恒久性を持つ花が「重要な参加者」になっている。


 中国新聞社記者:北京は世界初の「ダブル五輪都市」だが、中国は2回の五輪で花を使い世界に向けてどのような情感を伝えたのか。


 付氏:2008年の北京五輪は中国が初めて開催する五輪であり、中国人の100年にわたる五輪の夢が叶った大会だ。わたしは幸運にも五輪のビクトリーブーケと儀礼用の花の仕事に携わった。花を使って中国の五輪開催に対する喜びと自信を伝えるため、制作チームでは多種多様なアイデアが提示されたが、最終的には「燃えるように真っ赤な」ブーケが2008年北京五輪の表彰用ブーケとして選ばれた。これは国際オリンピック委員会〈IOC〉の表彰用ブーケに対する安全性などの厳しい規定を総合的に考慮しつつ、中国の伝統文化の要素を巧みに取り入れたものになっている。


 「燃えるように真っ赤な」ビクトリーブーケは全体が尖塔形で、メインの花材は「中国の赤」と称される9本のロサ・キネンシスからなり、サブの花材が6本、サブの草が6枚あり、「末永く」と「順風満帆」というメッセージが込められ、美しい寓意を伝えると同時に、中国人民の五輪に対する祝福と期待を表現している。

点击进入下一页


 中国は「世界の庭園の母」と称されており、ブーケの花材選びでは非常に多様な選択肢があるが、ロサ・キネンシスがメインの花材として選ばれた理由は三つある。第一に、燃えるように赤く、華やかなロサ・キネンシスは当時の中国人の気持ちに合致していたし、五輪のアスリートたちへの祝福を表現することができた。第二に、北京市の花の一つであるロサ・キネンシスは中国の首都の庭園の姿と文化的含蓄を体現していた。第三に、ロサ・キネンシスは「平和の使者」であり、全世界に愛と平和を伝えた。


 ロサ・キネンシスは中国原産であり、また中国で大いに流行した。早くも漢の時代〈紀元前202~紀元後220年〉から栽培が行われており、2000余りの年の栽培の歴史がある。清の嘉慶年間〈1796~1820年〉、英国人のサー・フムは広州で朱紅・中国粉・香水月季・中国黄色月季の4品種のロサ・キネンシスを入手し、これがインドを経由して英国に伝えられた。当時はちょうどナポレオン戦争の時代であり、英仏両国は戦火が絶えなかったが、この貴重なロサ・キネンシスを安全に英国からフランスに運ぶため、両国は一時的に停戦協定を結んだほどだった。あでやかなロサ・キネンシスは当時世界に威風を轟かせていた英国海軍に護送されてフランスに運ばれ、ナポレオン夫人のジョゼフィーヌの手にわたった。これらの貴重な中国のロサ・キネンシスは園芸家の手により欧州のバラとの交雑・選別・栽培がおこなわれ、ポートランドローズ、ハイブリッド・ティーなど多くの新しい品種を生み出した。


 あでやかなロサ・キネンシスは北京や多くの都市の花に指定されるだけでなく、一部の欧米の国の国花にも選ばれ、人々から親愛・友誼・歓喜を表すと考えられ、祝祭で最もよく使われる花となった。


 2012年のロンドン五輪では、ビクトリーブーケのメインの花材に英国独自のロサ・キネンシスが使われ、これにラベンダー、ローズマリー、麦の穗などがあしらわれた。色の配置によって2012年の五輪のロゴマークを表現しており、「勝利の花」と称された。


 2022年の北京冬季五輪でもロサ・キネンシスの美しく情熱的な姿を見ることができる。今回の冬季五輪では、ビクトリーブーケは生花ではなく、無形文化遺産である上海の伝統的な毛糸編み技法で作られた「栄誉の花」が登場した。このブーケでは2008年の北京五輪のブーケと呼応するようにロサ・キネンシスの形状が選ばれ、「ダブル五輪都市」の文化的な継承を示すとともに、オリーブも使われオリンピックの伝統に対する敬意が表現されている。

点击进入下一页


 中国新聞社記者:花は人々の生活にとけこみ、思いを伝え、精神を表現している。人類の発展の歩みにおいて、花は東洋と西洋の文化交流の中でどのような役割を果たしたのか。


 付氏:中国でいつから花の栽培が始まったのかについては考証が困難だが、中国の花文化は歴史が長く、幅広く、奥が深い。中国の花文化は大きく分けて先秦時代の黎明期、秦漢から盛唐までの過渡期、中唐以降の最盛期を経ており、絶えず進化してきた。


 中国最古の詩歌集「詩経」は花をうたう詩歌の源流であり、花をモチーフとして、花を一種の描写の対象にしており、完全に文学的美意識の領域に入っている。「桃の夭夭たる 灼灼たり其の華」、「参差たる荇菜は左右に之を流(もと)む」などの詩歌から、人々が花を通じて大自然の中に身を置くさまざまな心情を表していることが見て取れる。また「維こに士と女と伊れ其れ相謔むれて之れに贈くるに芍薬を以ってす」などの詩歌からは当時の人々が花木を社交儀礼に使い、芍薬などの植物によって愛情を伝えていたことが見て取れる。


 花は中西の文化の中で異なる文化的内容を持っている。中国では「天人合一」の思想が長期にわたり文化史の中で主導的地位を占めていた。そのため、古人の筆の下では、自然物にはしばしば人格的なイメージが付与されてきた。例えば、「泥より出づるも染まらない」ハスの花は高潔な貞操と実直な品徳を象徴し、人々は花を楽しむとともに人の内在的素養を味わった。一方西洋では、花は情感を引き起こすきっかけや思想を表現する象徴としてうたわれた。


 こうした差異は庭園の植物デザインにも表れている。中国人は庭園の植物のコーディネートにおいて、「意境〈芸術的なコンセプト〉の美」を体現するとともに、大自然に対する敬意と順応を示した。例えば、庭園にカイドウ、ボタン、ハクモクレンを植える場合、春の花の爛漫とした景観をつくりだすと同時に、これに「玉(ハクモクレン)棠(カイドウ)富貴(ボタン)」〈出世と豊かさを意味する「玉堂富貴」との掛詞〉の意境を込め、身心の滋養とした。西洋文化では科学と理性が尊ばれたため、庭園のデザインと配置でも、樹木をしっかりと剪定し、規則正しい幾何学的図案をつくるなど、形式美と人工美が追及された。

点击进入下一页


 現代では中国と西洋の花文化はより多くの交流があり、西洋の「花言葉」などが多くの若者に受け入れられている。ロサ・キネンシスを例にとると、中国の伝統文化では、ロサ・キネンシスは長春・長寿を象徴していたが、現在の文化の中では愛情と平和を象徴している。これはロサ・キネンシスが西洋に伝わった後に生まれた新しい寓意である。


 中国新聞社記者:今年の冬季五輪はちょうど中国の春節〈旧正月、今年は2月1日〉と重なっており、特別な春節であり、特別な冬季五輪でもある。中国がわずか10年余りの間に2度も五輪を開催したことをどう見るか。


 付氏:やはり花から話を始めよう。ここ数年、中西の文化的交流が日ましに頻繁になるのに伴い、人々の花に対する美意識はぶつかりあいながら融合している。


 年宵花〈年越し用の花〉の例を見ると、中西が組み合わさった鉢植えが近年の市場では人気になっている。使用される花を見ると、コチョウラン、アンスリウム・アンドレアナム、パイナップルなど伝統的な年宵花市場の主力だけでなく、オランダカイウ、ストライプバルバドスリリー、パフィオペディルム、ニチニチソウなども見受けられる。色彩の面を見ると、赤、ピンク、黄色など中国の伝統的な縁起の良い色調だけでなく、モランディカラーやクライン・ブルーなどの国際的な流行色も採用されている。組み合わせ式鉢植えのデザインの面では、手法がより多様化し、中国伝統の生け花の手法を採用しながら、植物のシルエットを見せることとポイントになる花の配置を重視し、全体の造形だけでなく植物としての花の味わいも表現している。また伝統的な庭園造景の手法を使い、「一峰は太華千尋 一勺は江湖万里」の景観イメージをつくるものや、西洋式のフラワーアレンジメントの手法を使い、対称式・水平式・下垂式など幾何学的造形をつくるものもある。

点击进入下一页


 ここ2年間、鉢植え市場には多肉植物に代表される新しいメンバーが加わっている。多肉植物は育てやすく、場所を取らないうえに、生長過程で形状や色彩が多様に変化するため、育てる人に無窮の楽しみを与えてくれる。わたしは園芸従事者としてこうした新しい要素の登場を喜んでおり、これはまた人々の新しい時代における新しい追求も表している。「簡素」な養育コストで「精彩」に満ちた生活環境を手に入れる。これはある程度北京冬季五輪で提唱される「簡素・安全・精彩」の運営要求にも呼応している。


 2008年の北京五輪では「グリーン五輪・テクノロジー五輪・人文〈人と文化〉五輪」の三大理念が提唱され、その後の10年余りの間、北京さらには中国全土が生態環境・科学技術革新・人文精神などの方面で顕著な成果を収めた。今ではグリーンが冬季五輪の基調色となり、ハイテクが存分に腕前を発揮している。新型コロナ流行下で、中国はしっかり準備を整えて冬季五輪を開催し、世界各地のアスリートがこのスポーツの祭典を享受している。


 わたしが思うに、人と花の自然で調和した融合発展は、この世界の付き合いの道でもあり、相互に尊重し、互いに補い合い、開放・協力・ウィンウィンの中で世界を調和のとれたものにすることが、全人類の最も美しい願いだろう。(翻訳:中国通信社)
                      

You may also like...

Leave a Reply

Your email address will not be published.