西側諸国と中国の真の状況とは―初めて“グローバリゼーション”唱えたドイツ人研究者
新型コロナウイルスやウクライナ問題、さらには地球温暖化問題など、全世界に影響する事態が同時進行している。一方で米国など西側国家は中国に対して「圧力」を掛け続けている。世界は今後、どのような方向に進んでいくのか。ドイツ出身の社会学者で、「グローバリゼーション」の概念を初めて唱えたマーティン・オルブロウ氏はこのほど、中国メディアである中国新聞社のドイツ支局の彭大偉首席記者の取材に応じて、世界に対する認識を語った。以下はオルブロウ氏の発言主旨に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。
■世界は後戻りできない、グローバリゼーション進むからには中国理解が必要
「いつかはコロナ以前の世界に戻れるのか?」との問いに対する私の答えは「ノー」だ。そもそも、過去に戻ることは不可能だ。新型コロナウイルス感染症の発生を受け、世界中の科学者が協力してウイルスを研究し、ワクチンを開発し、情報交換をしてきた。少なくとも科学の分野では、グローバリゼーションが成果を上げている。
グローバリゼーションが全世界の動きであるからには、西側諸国の人々も、異なる歴史や文化を持ち世界に大きな影響力がある中国のことを知り、理解せねばならない。中国を理解する上で、中国が古い文化の伝統を持つことは重要だ。中国の執政党である中国共産党も、数千年に及ぶ中国の伝統の上に成り立っている。
中国文化を理解するためには、儒教のことを理解するのもよい。儒家が唱えたいくつかのこと、特に古い文章を重視することや、教育による社会地位の向上などは、今も中国社会に非常に深い影響を及ぼしている。
西側は、中国の伝統思想を理解すべきだ。例えば感染症に対する強力な政策措置も、中国の伝統思想や価値観に合致するものであれば、社会からの広い合意を獲得しやすいことになる。中国の政権は自国の伝統から、統治のための知恵をくみ取っている。中国が秩序を特に重んじることは、歴史的基盤を持つ。
■「文明の衝突」説は説得力不足、「ツキジデスの罠」も回避できる
西側には、米国の研究者であるハンチントン氏が提唱した「文明の衝突」に影響された考え方をする者もいる。しかし私は、この説をあまり信用していない。ハンチントン氏は異なる文化や文明の間にある深い溝を重視した。しかし私は、異文化は比較的平和に共存し、互いに交流することができると考える。
異なる文化の間で摩擦が発生するかもしれないが、そのことは「共存の可能性」を否定するものではない。西側には、「従来の覇権国家と台頭する新興国家が激烈な衝突を回避するのは極めて困難」と主張する「ツキジデスの罠」を信奉する者もいる。
「ツキジデスの罠」は文化や文明に注目するというより、戦略の現実について説いたものだ。「ツキジデスの罠」が現実のものになれば、世界は「文明の衝突」よりも、さらに危険な状況に陥る。
しかし私は、「ツキジデスの罠」は回避可能と考える。必要なことは、世界と結びつく生活様式やわれわれを結びつくすべての文化面の成果などに基づくグローバルな融合に力を注ぐことだ。それを広く推進していけば、紛争をあおることを望むグループが及ぼす影響力を上回るはずだ。
私がそれよりも懸念するのは、人工知能の台頭や新型の兵器によって偶発的な衝突が発生することだ。どこかで発生した衝突に巻き込まれる可能性もある。これは現実のリスクであり、世界はこのリスクにもっと注目すべきだ。言い方を変えるなら、最大のリスクは地政学上の問題によってではなく、新技術によってもたらされる。
■「一丸となった西側」の考えは時代遅れ
「西側」の勢力は圧倒的で、世界を覆っているように見えるが、西側は「断片化」の方向に進んでいる。西側は米国人が望むような一丸としてのまとまりではなくなっていく。米国のバイデン大統領は、「民主主義国家連合」を構築しようとしているが、馬鹿げたやり方だ。バイデン大統領は基本的に、この「連合」に「中国を好まない国」を招待している。ただし、その国がどのような政治体制であり、どのような政策を実施しているかは問題にしていない。つまり「民主主義国家連合」という看板には問題がある。
私は「一丸となった西側」の考え方は、もはや時代遅れと思う。逆に中国の指導力は、国際的メカニズムや国際組織の中でしっかりと発揮されている。例えば中国は、気候変動や太陽光発電のような分野を発展させている。つまり、世界共通の目標に焦点を絞って現実的なプロジェクトを推進して、全世界に手本を示すよう努力している。
中国が成果を出すために奏功している要因の一つが、重要な政策を迅速に決定し、実行に移す政治体制だ。世界の他の国に比べて、これは中国の強みと言える部分だ。
■中国は成果を上げて来た、今後にも期待できる
中国は国内の民生の改善でも、とても魅力的な成果を上げている。50年前の中国に「福祉国家」と言える要素はほとんどなかった。しかし中国は50年間をかけて、教育や医療などの公共福祉を成長させてきた。
中国は人口が多く、しかも国民は非常に勤勉だ。同時に中国政府は、経済面でよい境遇にない人を助けるために、富裕層を誘導すべきであることを理解している。富を生み出すためには競争が必要だ。中国政府はこの方面で大きな知恵を示し、競争のレベルを人々の共通の利益に合致する範囲内に維持している。
また、中国共産党は過去10年間で、中華民族全体の社会意識をよりよく代表するようになった。中国共産党がこの役割りをさらによく果たすことができ、国民にさらに受け入れられるようになるならば、中国の未来は希望に満ちているように見える。(翻訳:Record China)