「金鶏賞影展インジャパン2025」ティーチインイベントレポート:観客と交わす“物語”の対話

陳思誠 (チェン・スーチェン) 監督

オープニング上映後には、映画ジャーナリスト・徐昊辰氏の進行により、陳思誠(チェン・スーチェン)監督を迎えてのティーチインが行われた。会場は映画の余韻が残る中、監督と観客が直接対話を交わす貴重な空間に変わった。

冒頭で徐氏は「本シリーズは1作目から中国で大ヒットを記録し、累計興行収入は100億元(約2000億円)を超える一大シリーズ」と紹介。今作『唐探1900』が、これまでの現代都市を舞台とした三作とは異なり、1900年のサンフランシスコに時代を遡る構成になった背景について、まず質問が投げかけられた。

陳監督は「チャイナタウンという存在の起源を探りたかった」と語り、清末期の歴史的背景に着目した理由を説明。「過去の歴史を振り返ることで、繰り返してはならない過ちを伝えるのも映画の使命」と述べ、観客の共感を集めた。

観客との質疑応答では「前作で登場したチョウ・ユンファの起用理由」や、「次回作の舞台予想」「今回の異なる作風の意図」など多岐にわたる質問が寄せられた。陳監督は「チョウ・ユンファは香港映画黄金期の精神を体現する存在であり、華僑的な気配を持った人物像に適任だった」と回答した。

また、観客から「次回作はロンドンですか?」という質問には「現代の大都市はほぼ網羅した。最も撮影が難しかった都市は東京」と冗談交じりに語り、会場に笑いが起こる場面もあった。

さらに、アメリカ留学や俳優経験が本作にどう影響したかという問いには、「10年前のアメリカと今では映画業界の状況も大きく異なる。映画市場の縮小という現実の中でも、自分は映画が好きであり続ける」と映画への熱を語った。俳優出身であることについては「人物の内面を深く掘ることに強みがある」と自己分析を述べた。

左:陳思誠 (チェン・スーチェン) 監督 右:『唐探シリーズ』撮影を担当した杜杰(トー・ジエ)氏

終盤には、本作の撮影を担当した杜杰(トー・ジエ)氏もサプライズ登壇。監督との10年来のタッグを振り返りつつ「観光客ではなく、自分の足で世界に立っている感覚」と語り、観客に感謝を述べた。

最後はフォトセッションが行われ、会場は和やかな拍手とともに映画と対話のひとときを締めくくった。

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