中国はどう積極的に参加しているか、グローバル人権ガバナンス
(中国通信=東京)北京3月30日発中国新聞社電は、武漢大学法学院教授・人権研究院院長の張万洪氏の「中国はいかにしてグローバル人権ガバナンスに積極的に参加しているか」と題する次のような論文を配信した。
2022年2月28日、中国の王毅・国務委員兼外相は北京で第49回国連人権理事会のハイレベル会議にオンラインで出席した際、中国の人権促進・保護に関する四つの主張を提起し、その中で次のように強調した。国際関係の民主化と法治化を揺るぎなく後押しし、真の多国間主義を実践し、グローバル人権ガバナンスがより公平で合理的で包摂的な方向へ発展するよう後押ししなければならない。われわれは現代中国の人権観を堅持し、全人類共通の価値を広く発揚し、世界の人権事業のために中国の貢献を果たし、中国のプランを提供する。
それでは、グローバル人権ガバナンスの意義とは何か。その課題はどういったものがあるのか。中国はなぜグローバル人権ガバナンスシステムの改革と建設に積極的に参加しなければならないのか。
◇時代の問い:グローバル人権ガバナンスの重要な意義
われわれは、まず時代にマッチした現実世界への認識(すなわち人類は運命を共にしており、各国人民が「天下は一家」の理念を守り、共に人類運命共同体の構築を図るべきだ)に基づくことが、グローバル人権ガバナンスの出発点であることに注目している。グローバル人権ガバナンスはグローバルガバナンスと世界の人権事業の有機的結合の重要な実践分野であり、中国が法治・人権・平和・発展・公平・正義・自由・民主など全人類の文明的価値のために知恵を出す重要な研究分野でもある。
「グローバル人権ガバナンスへの積極的な参加の堅持」は中国の人権発展の主要な特徴の一つでもあれば、われわれが中国の人権事業を進める実践の中で得た貴重な経験でもあり、新しい実践と結び付けてこれを絶えずしっかり堅持し、発展させなければならない。そのため全人類共通の価値を広く発揚し、真の多国間主義を実践し、グローバル人権ガバナンスシステムの改革と建設に積極的に参加する必要がある。
◇世界の問い:グローバル人権ガバナンスシステムが直面する挑戦
グローバル人権ガバナンスが直面する挑戦〈試練、課題〉はまず、全人類が共に直面している差し迫った挑戦、すなわち平和、発展、ガバナンスの赤字〈損失〉の背後にある深刻な人権の危機である。グローバルガバナンスは多くの重大な挑戦に直面しているが、軍備競争、核兵器管理、テロリズム、サイバーセキュリティー、気候温暖化、環境問題、金融危機、グローバルな貧困など伝統的・非伝統的な安全保障の脅威のうち、人権の保障と無関係なものは一つもない。平和と安全保障、法治、人権はいずれもグローバルガバナンスで必ず対応しなければならない挑戦である。
次に、現在のグローバルガバナンス秩序における公平と正義の欠如問題が、各国の人民が直面する人権の危機を激化させている。現行のグローバル人権ガバナンスメカニズムが直面している一大挑戦は、一部の西側の国が国際人権メカニズムを悪意をもって利用し、多国間主義とグローバル人権ガバナンスシステムを破壊していることだ。その深層部の原因は、国際政治・経済貿易分野の新たな変化が西側主導の国際秩序における自由主義的価値の基礎を弱め、各国の文化的政治的アイデンティティーの違い、ひいては価値の衝突を激化させるとともに、グローバル人権ガバナンスの議題の複雑性を著しく増大させていることにある。
このほか、中国と西側の人権理念の違いが適切に理解されていないことも、人権対話に障害をもたらし、さらには人権をめぐる話題の対決を誘発している。西側の人権理念には実質的平等の要素が欠け、形式主義と個人主義の泥沼に陥っており、深い社会矛盾に対応できない。国際的往来において、一部の西側の国は人権理事会など国際的人権メカニズムを「利用価値があれば使い、そうでなければ捨てる」道具とすることに慣れており、自国の人権問題を無視し、他国にダブルスタンダードをとり、他国をみだりに裁き、不当に干渉するなど、古い国際秩序における強権国家の抑圧のロジックとイデオロギーのまがきから脱け出せていない。また、近年の国際経済貿易協力紛争でも、貿易と人権ガバナンスの視点の交錯が際立っている。
最後に、新型コロナはグローバル人権ガバナンスの新たな挑戦が、普遍的なリスクと人間の脆弱(ぜいじゃく)性への対応、制度と社会の強じん性の強化にあることを浮き彫りにした。グローバルなリスク社会のポストコロナ時代における拡張は、現代の社会ガバナンスの複雑性を反映し、また人間の脆弱性を浮き彫りにし、法治の整備、人権の保障、グローバルな公正の実現に新たな要求を突き付けている。リスクに対応する現代社会の福祉モデルと法的制御モデルは、普遍的に確立された人権の基準となお比較的大きな距離がある。人の主体性と能動性を核心に、国内および国際社会レベルの法治の強じん性を高める、これがグローバル人権ガバナンスのカギとなる目標であるべきだ。
◇中国の問い:中国のグローバル人権ガバナンス参加の位置づけと準拠
中国はずっとグローバル人権事業の健全な発展の提唱者、実践者、推進者であり、人権の政治化あるいは人権における「ダブルスタンダード」に反対し、国際社会が公正、客観的で、非選択的な方式によって人権問題を処理するのを後押ししてきた。中国は2国間・多国間の人権対話に参加してこれを促進し、一層公平、公正、合理的で包摂的なグローバル人権ガバナンス秩序づくりを積極的に後押ししている。
中国は、憲章と条約に基づく機関を含め、国連の多国間人権機関との協力に深く参加し、その中でますます大きな役割を果たしている。中国が表明した人権理念は国連人権理事会の決議に盛り込まれ、人権をめぐるグローバルな話題の重要な一部となっている。中国はグローバルな人権話題と人権ガバナンスメカニズムの発展の中で責任ある国家のポジティブな役割をすでに果たしており、今後も引き続き果たしていく。
中国が絶えず国内のガバナンスを整え、経済社会の質の高い発展を促進し、国内の人権の実現レベルを引き上げていることは、グローバルな人権ガバナンスにも貢献している。中国は人の「エンパワーメント」のための発展を堅持し、「人に対する投資」を持続的に拡大し、人民の自由な発展により多くの可能性をもたらしている。
中国の独立自主の法治と人権事業はグローバル人権ガバナンスの思想的リソースと価値の含蓄を豊富にしている。中国共産党は人民を指導して、中国の国情にかない、法治の法則に従い、良法善治に通ずる法治近代化の正しい道を歩むことに成功した。このモデルには開放性、包摂性、科学性があり、英仏独など西側諸国の内生的進化型とも、日韓・シンガポールなど東アジア諸国の外発推進型とも異なり、トップダウンとボトムアップの双方向の相互作用〈インタラクション〉によって進める法治近代化の新しい道を歩むものである。
◇道の問い:中国はグローバル人権ガバナンスシステムの改革と建設を促進する
まず、グローバル人権ガバナンスシステムの改革と建設の協議では、法治と権利を共通言語にして、国際と国内の法治のプラスのフィードバックを促進するべきだ。グローバル人権ガバナンスの注力点は国連、すなわち国際社会にあり、法治・人権・民主主義は「国連の普遍的で不可分の核心的価値と原則」に属し、「国連憲章」の中に盛り込まれている。法治と人権はすでに国際対話の重要な言語になっており、グローバルガバナンスが生み出した国際公共財でもあり、基本的人権と人類の共通の価値の実現を促すことができる。
次に、グローバル人権ガバナンスシステム改革の根本的な原動力は、発展によって人権を促進し、発展の中で人権を尊重・保障、実現すること、および人の自由で全面的な発展を実現することである。発展のアンバランスは今日の世界の最大のアンバランスだ。多くの国の政治・経済・社会などの分野における発展の不十分さとアンバランスが、国家統治〈ガバナンス〉の失敗、国家能力の貧弱およびリスク対応の脆弱性を招き、さらには人権の危機と人道主義的災難を引き起こし、隣国、地域および国際秩序にマイナスの打撃をもたらしている。発展によって人権を促進する原則は自国の人権の発展とグローバルな人権ガバナンスの良い方向への相互作用の全過程で貫かれなければならない。
グローバル人権ガバナンスシステムづくりの基本的な戦略は、法治近代化の道の自主的な選択にある。真の多国間主義を実践し、共同で近代化・グローバル化の挑戦に対応するとは、各国の自主的な選択を尊重し、制度文化交流・相互参照の価値基準(すなわち人民の擁護と支持を得られるかどうか、政治の安定・社会の進歩・民生の改善をもたらせるかどうか、人類の進歩の事業に貢献できるかどうか)の形成を後押しすることにほかならない。
最後に、グローバル人権ガバナンスシステム整備の今後の見通しは、民主主義と法治の多様性を促進し、「和して同ぜず」と「美美与共」〈文化の多様性尊重〉という人類の大同を実現することにかかっている。グローバルな法治・民主主義・人権ガバナンスモデルの多様性は、各国が近代化の道を自主的に選択したことの必然的な結果であり、各国の人民が現代的な苦境を深く反省、批判することによって多種多様な文明が現れたことの結果でもある。多様性がなければ人類文明はない。多様性は客観的な事実であり、長期的に存在するだろう。各国は相互に尊重し、小異を残して大同につくことを基礎に平和共存を実現し、人権文明の交流と相互参照を促進し、グローバル人権ガバナンス事業と人類の進歩の事業に新たな原動力を注ぐべきである。(翻訳:中国通信社)