2024年BYD販売台数トップに、18年連続トップの上海汽車上回る

中国の2024年の自動車販売台数でBYDが初めて上海汽車を抜いてトップに立った。2024年のBYDの販売で特徴的だったのはハイブリッドモデルの伸びが高かったこと。また2024年はBYDのほか他の独立系ブランドの販売も堅調に推移した。各社の販売動向などをみてみる。

■BYD躍進への道
BYDの2024年販売台数は前年比41%増の427万2100台。年間目標を上回り、目標達成率は117.8%となった。一方、上海汽車集団の販売台数は401万3000台。18年連続で国内トップだった上海汽車に代わってBYDが国内トップの座に躍り出た。

トップの座に付いたBYDだが、これまでの道のりは決して短くなかった。BYDが自動車産業に参入したのは2003年。西安泰川汽車の買収を嚆矢とする。

ただ、BYDの販売が急速に伸びたのは、新エネルギー車(NEV)が主流になった2021年以降。その前の2010年から2020年までの年間販売台数は50万台前後で推移していた。また、自動車事業が不調に陥った時期もあった。直近では2019年。研究開発に80億元以上を投入したものの、純利益は16億元程度。株主をはじめ外部からBYDの経営陣に対する批判が強まった。

しかし、2021年以降、販売が急ピッチに拡大。販売台数は2021年の70万台以上から2022年には約200万台へと倍以上に拡大。その後、2023年に300万台を突破し、2024年に427万台を記録するに至った。
2024年の月次販売台数をみると、2月に30万台に回復。その後、月を追うごとに増加し、9月に初めて40万台を突破し、10月には50万台を超え、足元は3ヶ月連続で50万台の水準で安定的に推移している。

■ハイブリッドが高い伸び
2024年の販売の特徴の一つはプラグインハイブリッドが高い伸びを示したこと。販売台数(427万2100台)のうちプラグインハイブリッド車の販売台数は前年比72.83%増の248.54万台と、全体の60%近くを占めた。2023年にはハイブリッドと純電気の2つのエンジン形態ともに比較的均衡がとれた販売構成だったが、2024年はハイブリッドモデルに傾斜した恰好だ。

モデル別では、王朝と海洋が牽引。2024年の王朝と海洋の合計販売台数は403万8000台に達し、販売台数全体の95%を占めた。騰勢(Denza)は12万6000台、方程豹は5万台。仰望の販売台数はまだ公表されていないが、これら3つの高級ブランドは全体の5%程度だった。

■躍進支える技術
BYDの躍進の背景には、技術の蓄積と技術に対する信念がある。
2020年、BYDは過去18年もの間追求してきたリン酸鉄リチウムイオン電池技術をベースとした「ブレードバッテリー」を発表した。このバッテリーがBYDの自動車のコア技術になっている。
翌2021年には、過去17年間にわたって開発を続けたプラグインハイブリッド技術をベースとしたスーパーハイブリッドDM-iを発表。DM-iはBYDのプラグインハイブリッドの技術の呼称で、この技術によって燃費効率を向上させている。
同じく2021年、電気自動車プラットフォーム戦略をベースとした「e-Platform 3.0」を発表。「e-Platform 3.0」は電気自動車専用で、バッテリーやモーター、制御システムなどを搭載した自動車の土台となるもの。そして2023年には新たに開発した駆動制御システム「易四方(e4Platform)」を投入した。

■BYD以外の独立ブランド
2024年はBYDのほか、中国の独立ブランドの躍進が目立った。奇瑞汽車、吉利汽車、長安汽車はいずれも2024年の販売台数が200万台以上を記録した。
このうち、奇瑞汽車は38.4%増という高い成長率で、販売台数全体で長安汽車を追い抜き、独立系ブランドの販売台数としては、BYDに次ぐ規模だった。次いで、長安汽車、吉利汽車、長城汽車の順。うち長城汽車の販売台数は前年とほぼ横ばいで、他の企業が長城汽車を上回る伸びを記録したため、長城汽車と上記4社との販売台数の差は一段と拡大した。

■奇瑞、ガソリン車とNEVともに堅調
2024年の奇瑞汽車の累計販売台数は前年比38.4%増の260万3916台で、過去最高を記録。このうち、12月の販売台数は29万8505台で、30万台に迫った。 中国汽車工業協会の予測によると、2024年の中国の自動車販売の伸び率は約3%。年間販売伸び率が38.4%となった奇瑞は、年初に設定した「業界全体を10~20ポイント上回る販売伸び率」という年間目標を上回った。

奇瑞が販売台数の急速な成長を遂げた要因の一つには、新エネルギー車だけでなく、ガソリン車も堅調だったことが挙げられる。2024年、奇瑞は新エネルギー車の販売台数を維持しつつ、ガソリン車の販売台数は前年比18.4%増の202万0347台。このうち、国内販売台数は前年比55.5%増の145万9328台と大幅な伸びを示したNEVが急成長している中国の自動車市場では、ガソリン車のシェアが全体的に縮小しているにもかかわらず、奇瑞汽車は、ガソソリン車の販売で高い成長率を維持していることは見逃せない。

 

■長安汽車、ガソリン車縮小が重荷
次いで、長安汽車。2024年の累計販売台数は前年比6.1%増の222万6489台。このうち、12月の販売台数は前年同月比20.9%増の19万8893台だった。 BYD、奇瑞、吉利と比較すると、長安汽車の自主ブランド販売の伸びは鈍かった。これは電動化への移行が加速したことでガソリン車の販売が縮小したことが一因として挙げられる。長安汽車の主力ガソリン車であるCS75 PLUSや逸動は販売台数が大幅に減少。奇瑞のガソリン車が堅調だったのとは対照的な動きとなった。

 

■吉利汽車、ブランド競争力強化を推進
次いで吉利汽車。2024年販売台数は前年比32%増の217万6567台で、同社も過去最高を更新。年間販売目標の200万台を上回り、目標達成率は108.88%となった。直近の月次12月の販売台数は前年同期比43%増の21万5055台。4か月連続で販売台数が20万台を超えた。同社は2024年9月、新たな経営方針である「台州宣言」を発表。以来、大胆な戦略調整と製品最適化に着手し。各ブランドの競争力向上に資源を集中している。この一連の調整の結果は2025年に鮮明になるとみられている。

■長城汽車、2024年通年は伸び悩みも年後半にかけて回復
次いで長城汽車だが、同社の販売は伸び悩んだ。2024年販売台数は前年比0.2%増の123万3292台と、小幅な伸び。販売目標190万台に対する達成率は64.91%にとどまり、他の4社と比較すると、長城汽車は後れを取った恰好だ。
とはいえ、利益は大きく、収益性は高い。 さらに、2024年を通じてみると、下半期から勢いづき、月間販売台数は5ヶ月連続で増加。12月の販売台数は13万5286台で、前年同月比で20.25%増加し、前月比では6.19%増加している。

 

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