横琴と前海、広東・香港・マカオの協力推進の牽引役に向け

中国共産党中央委員会と国務院は2021年9月、『横琴 、広東・マカオ深度協力区建設に関する全体計画』(以下『横琴計画』)と『前海、深セン・香港現代サービス業協力区の改革開放全面深化に関する計画』(以下『前海計画』)を相次いで発表し、広東、香港、マカオの一段の協力推進に支援を表明した。この2つの計画は粤港澳大湾区の構築にどのような影響を与えるのか。北京大学国家発展研究院党委員会書記、商務部経済貿易政策諮問委員を務める余淼杰氏にインタビューした。


中国新聞社:『横琴計画』はマカオの経済・産業の多角化促進を目的としたもので、横琴協力区について(1)「マカオ経済の適度で多角的な発展を促進する新たなプラットフォーム」、(2)「マカオ住民の生活・就業を便利にする新たな空間」、(3)「『一国二制度』の実践を充実化する新たなモデル」、(4)「粤港澳大湾区建設を推進する新たな高地」――という4つの戦略的位置づけを明確にした。これら「新たなプラットフォーム」「新たな空間」「新たなモデル」「新たな高地」の概念をどのように理解すべきか。そしてそれぞれ何が「新」なのか?


余氏:「新たなプラットフォーム」は、観光業、カジノ産業に過度に依存しているマカオ経済の多角化推進に主眼を置いている。『横琴計画』では横琴とマカオの間を「一線」、横琴と本土の間を「二線」として管理する方式を打ち出した。「一線」「二線」管理は、「『一線』は緩和、『二線』は管理、人と貨物の分離・分類管理」との原則に基づき実施。横琴に特別な税優遇政策を認め、自由貿易の発展を奨励し、マカオ市民の生活、生産、消費を充実化するための「新たなプラットフォーム」をつくることである。

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「新たな空間」とは物理的な意味での横琴新区を指す。

「新たなモデル」とは、「一国二制度」の積極的な実施を推進し、経済協力を深化し、相互補完していくモデルで、前海も「新たなモデル」と位置づけられる。
「新たな高地」は「新たなモデル」を推進の下、粤港澳大湾区の協力を進める新たな高地、さらには「高地のピーク」といえる。

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中国新聞社:『横琴計画』では、総面積約106平方キロメートルの横琴協力区内で「共同協議、共同建設、共同管理、共有」の新たな体制を実施するとしている。この新たな体制とはどのようなことか。マカオの企業の成長、人材・雇用などの問題解決につながるのか?


余氏:新たな体制は、マカオ経済の国の発展の大局への更なる融合を支えるものである。例えば、横琴協力区内の企業が輸入品を含まない原材料で生産した製品、輸入原材料を含む場合は横琴協力区で加工した付加価値が30%以上の製品について、「二線」を経て本土に輸出される場合、本土側で輸入関税が免除される。人の流れの利便性を高めるため「二線」を経て本土に入る物品についても、相応の税制が適用できるよう検討している。


『横琴計画』により、マカオの地理的な面積が拡大し、マカオ市民の生活の充実化が図られれば、これは、海外企業や優秀人材のマカオ誘致にプラスの政策といえる。

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中国新聞社:『前海計画』は香港に新たな発展の機会を提供するものとされる。『前海計画』により前海協力区の総面積は14.92平方キロメートルから8倍の120.56平方キロメートルに拡大した。なぜ前海を協力区としたのか。前海協力区の拡充は地域経済にどのような影響を与えるのか。


余氏:前海を選んだのは2つの理由がある。一つ目は前海が香港との協力区、自由貿易区としての基盤を備えていること。二つ目は独自の地理的優位性があることで、より広範でより深いレベルの開放、より大規模な発展につながるといえよう。


前海を現代サービスエリアと位置づけたのは、世界のサービスセンター、金融センターとしての香港が低税率という面で参考にすべき数多い経験があるためである。今回の前海と香港の連携強化により、粤港澳大湾区建設やサービス業における牽引役として香港がより大きな役割を発揮できると考えられる。

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前海はイノベーション協力地という側面もある。前海をイノベーション協力地にするのは2つの優れた点があるからだ。一つ目は香港がサービス業の堅固な基盤を有していること。二つ目は深センがイノベーションの新たなプラットフォームとして優位性を持っていることである。中国のイノベーション都市として、深センは昨年の研究開発費の対GDP比率が4%を超えた。これは、全国の平均水準(3%)を大きく上回る。イノベーション協力地に向け、香港と深センそれぞれの都市のコア競争力を正確に把握し、力を合わせることで、前海はモデルとして主導する役割が発揮できるといえよう。


中国新聞社:『前海計画』のポイントとしては、面積の拡張のほか、もう一つ「改革の深化、開放の拡大」が挙げられる。前海協力区はどのように対外開放を進め、改革・イノベーション深化の試験プラットフォームを構築するのか。


余氏:前海協力区での対外開放には2つの点がポイントとなる。一つ目は企業誘致を奨励すること。二つ目がプラットフォーム窓口の「足場」としての機能をしっかりとさせ、企業の「海外進出」を奨励することである。企業がマカオと珠海、深センと香港の優位性を活用することにより、粤港澳大湾区におけるリソースの融合、協調発展を促進し、相互補完を進めることが可能となる。


開放の新たな高地を目指すとの目標については、本土側は、制度・ルールの連携の面で国際的な金融、サービス業を中心に香港、マカオから多くを学ぶことができる。一方、本土側の産業、イノベーション、人材の優位性を生かし、様々なリソースの融合、相互活用を実現することで、地域経済の発展を促進できるであろう。


中国新聞社:前海協力区では対外開放拡大に伴う外部リスクはどのように回避するのか。試験プラットフォームが構築された後、粤港澳大湾区建設、国の改革開放の大局にどのように還元されるのか。

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余氏:前海はモデルエリアとして輸入を拡大し、世界経済・貿易との一体化を深めることが可能である。同時にサービス貿易推進のプラットフォームとして、サービス貿易とデジタル貿易の発展を促進することができる。


よりマクロ的な視点で言えば、粤港澳大湾区の構築は、海上シルクロードの建設推進、特にASEAN10カ国を含む東南アジア諸国との経済・貿易面での連携強化に資する。


中国新聞社:『前海計画』では、深セン・香港協力区での金融業の改革開放拡大、中国の金融分野の対外開放試験モデル窓口、クロスボーダー人民元業務刷新試験区としての機能向上を強調している。金融業の対外モデル窓口として前海協力区を選んだ戦略的意義は?


余氏:前海を試験区に選んだのは、国際金融センターである香港の金融制度を参考にできる地であるためである。前海と香港の連携深化は、本土の金融面での開放推進に役立つ。香港の様々な金融制度を導入して小規模で試験的に実施。成功すれば、リスク制御が可能との前提の下、その成功経験を拡大、普及させることができよう。

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