華人にとって春節は“不滅”なのか―専門家は「配慮と努力も必要」と指摘

中国を離れて暮らす中華系住民が増え、社会的に成功する人が増えたことで、いわゆる中華圏以外の国々でも春節(旧正月)を祝う活動が盛んになってきた。春節はなぜ、華人の文化的記憶と堅く結びついているのか。その状態は未来永劫(えいごう)に続くのか。●南大学(●は「既」の下に「旦」)華僑華人研究院の副院長を務める陳奕平教授はこのほど、中国メディアの中国新聞社の取材に応じて、華人と春節の関係について語った。以下は陳教授の言葉に若干の説明内容を追加するなどで再構成したものだ。

■華人が春節を忘れないのは「社会の少数者」であることも一因

「華人」とは、狭い意味では、海外に移住した中国人やその子孫で、居住国の国籍を取得した人を指すが、中国人の血筋を引いている人を広く指す場合もある。そしてよく「華人いるところに春節あり」と言われる。中国を離れて長い年月がたっても中国系の人は春節を忘れないということだ。

春節は中国で何千年も受け継がれてきた重要な祝日だ。海外に移った華人にとっても、春節ほど重要な中国伝統の祝日はない。家族だんらんで年越しの食事をする。年下の者にはお年玉を与える。そして先祖祭りをする。華人コミュニティーでは大きな赤い提灯で街などが飾られ、獅子舞も披露される。その他の活動も盛りだくさんだ。最近では中華圏以外でも春節を国や地方の祝日にするケースが増えた。そんな国や地方では、政治家が春節を祝うあいさつをする場合がある。

中国を離れた華人が、なぜ春節を忘れないのか。まず、春節についての記憶が強烈で、心の中の消す事ができない文化的シンボルになっていることがある。海外で暮らす華人はその社会における少数者であることも一因だ。彼らの自己認識は、中華文化なおさら強く結合する。彼らは春節の伝統を自覚して受け継ぐことになる。

■若い世代の華人を「文化の根無し草」にしないために上の世代の努力が必要

ただ、海外で暮らす若い世代の華人は、春節にまつわる民俗文化をあまり知らない場合がある。中国人の血筋であっても、幼いころから中国の外で暮らしていると生活様式や考え方が現地化して、現地の主流の文化に溶け込んでいく。これは自然の流れだ。そして、若い世代の華人は、自分の出身地の人々と疎遠になり、連絡が途絶えてしまうこともある。

そのため、いわゆる「文化の根無し草」の問題が発生する。若い世代の華人に春節の民俗文化活動を見せることは、彼らに中華文明の「根」を取り戻させることにつながる。だから、まずは親が春節の習慣をしっかりと伝承し、導いてやらねばならない。

家庭で年越しの品を準備し、年越しの食事をし、春節を祝い合うのだ。自分の子に年越しのための切り絵を作らせたり、春節期に壁に貼る文句を書かせたり「年画」という縁起物の絵を描かせるのもよい。幼い事から思い出を作れば、春節の雰囲気が心に刻まれることになる。

世界には、主に華人の子を受け入れる中華学校がある。そのような学校では、春節の歴史や春節にまつわる民俗文化を教えるべきだ。そして生徒には、春節に関連する活動を体験させる。このように、若い世代を「文化の根無し草」にしてしまわないためには、上の世代の配慮と努力が必要だ。

■文化文明は歴史を通じて、互いに学び合うことを続けてきた

新型コロナウイルス感染症の流行が始まる前は米国、オーストラリア、フランス、ベルギー、英国などで華人が、春節を祝う盛大な活動をしていた。今は大勢の人が集まる活動をしにくい状態だが、それでも世界各地の華人は家庭内で春節を祝う活動し、さらにはオンラインイベントも催されている。そして世界各地の華人が行う春節の活動は、現地の特色を取り込んだ形に変化しつある。西洋に住む華人が行う春節のイベントは、西洋の祭りのやり方と融合した。

マレーシアでは、中国人が年越しの際に食べる「年餅(ニェンビン)」が現地料理の風味を取り入れた。種類も極めて豊富になり、もはや中国国内と一味違うマレーシア式の「年餅」は、マレーシア華人にとって欠かせない「年越しの味」だ。

人類の歴史を振り返れば、文明と文明、文化と文化は常に、互いに交流をして互いに学び合ってきた。海外に住む華僑は、中華文明の“遺伝子”を持っている。彼らは、中国と外国の文明の交流をもたらす実践者であり、中国文明と外国の文明が、互いによい点を学ぶことを推進している存在だ。

春節に話を戻せば、中国の伝統文化ではあるが、年越しの文化として調和のとれた喜びをもたらし、世の中の人が皆で祝い、さらには先人のことを追想する要素がある。春節はこれらによって、世界の多くの人に共感されやすいのだと考える。(翻訳 / Record China )

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