戦時下の張家口から命がけで脱出した家族の物語 『蒼天からの十六通の手紙』(前田郁子・著/河野初江・編集)を 静人舎より刊行
太平洋戦争終結から79年が経ち当時の様子を語れる人が少なくなっているなか、自分史編集者である河野初江(らしくラボ)は、敗戦時に中国にいた家族がソ蒙軍から逃れて引揚列車で張家口を脱出する経緯を再現した本『蒼天からの十六通の手紙 戦時下の張家口を生き抜いた家族の物語』(前田郁子 著)を編集し、2024年8月15日、静人舎より刊行しました。
本書は、敗戦時に2歳だった著者・前田郁子が、母に連れられソ蒙軍から逃れて引揚列車で張家口を脱出する経緯を多くの資料や証言をもとに再現したもので、命をかけての「引揚げ」のさなかに出会った数々の悲惨な出来事や、「邦人を守る」との使命感のもと命を賭してソ蒙軍と戦った兵士のこと、敗戦国の国民に対し現地の人々が温情ある態度で接してくれたことが詳細に描かれています。「日本人に危害を与えてはいけない」とラジオで中国国民に対し中国国民政府・蒋介石総統が呼び掛けてくれたことで多くの日本人が救われたと著者の前田郁子氏は言っており、本書には、その蒋介石のメッセージ「以徳報怨」も収められています。書店またはアマゾンでご注文ください。
【本の概要】
『蒼天からの十六通の手紙 戦時下の張家口を生き抜いたある家族の物語』
前田郁子・著/河野初江・編集/静人舎・発行
2024年8月15日 初版第1刷刊行
四六判・並製・272頁 1,650円(税込)
ISBN 978-4-909299-26-0
<本書「はじめに」より抜粋>
昭和20年、敗戦で一変する平穏な生活──
10月出産予定の身重のカホルは、6、4、2歳の三人の子どもを連れて、夫は肺炎で入院中の8歳の長男に付き添い、ソ蒙軍から逃れて引揚列車で張家口を脱出する。敗戦から5日目の夜である。飢えや渇きに苦しみ寒さに震え、時には銃声におののきながらの逃避行だ。過酷な環境の中で、時には死とも向き合う。
本書は、著者の母・カホルが、戦時下の中国から幼馴染のヨシエに送った十六通の手紙をもとにした物語である。「私にとっては、この手紙を手にすることで、やっと〈終戦〉と〈戦後の苦しい生活〉の終了を迎えたような気がしました」
〈目次〉
一章旅立ち
二章北京からの手紙
三章張家口からの手紙
四章終戦
五章引揚げ
六章収容所暮らし
七章帰国の途に
八章帰国
〈資料〉中国国民政府・蒋介石総統の終戦メッセージ「以徳報怨」