ドラマ「長月燼明」が大ヒット、東アジア文化圏で敦煌文化への共鳴呼ぶ

中国ファンタジー時代劇「長月燼明」がこのところ、中国の動画配信大手、優酷(Youku)で配信しており、爆発的な大ヒットを記録している。同作は香港の鞠覚亮が監督、人気俳優のレオ・ロー(羅雲熙)とバイ・ルー(白鹿)が主演を務めている。配信初日に22・76%のドラマ市場シェアで1位となり、2020年以降のYouku配信ファンタジー時代劇で最多の再生回数を記録した。

「長月燼明」は日本でも大きな注目を集めている。視覚や聴覚を刺激するゴージャスなロマンスファンタジー時代劇は中国特有のドラマジャンルで、日本のコンテンツ消費市場において確固たる地位を占めているが、毎度おなじみの純白・エレガントを基調にした仙侠画風が飽きられ、退屈だとの批判も受けている。

この点で「長月燼明」の衣装チームは、5カ月間敦煌でそのスタイルを収集し、敦煌の美をデザインに取り入れることで、古風でありながら色濃く生き生きとした神仙の世界を作り出し、それはまた東アジア文化圏で敦煌文化への共鳴を呼び起こした。

衣装デザイン指導を務めた黄薇(こう・び)ディレクターによると、衣装デザインでは「敦煌飛天」のデザインや莫高窟壁画の装飾文様、赤い堆積岩が隆起した「丹霞地形」や、風雨の侵食により堅い岩だけが残った「雅丹地形」の幻想的で豊かな色彩を参考にしたという。また、シルクロード・西域の特徴を持つアクセサリーも取り入れた。

立命館大学白川静記念東洋文学文化研究所の客員研究員、佐藤信弥氏は、「長月燼明」はCGや衣装など映像面も見応えがあり、近年の中華ファンタジーで最も高評価というのもうなずけるとした上で、敦煌風の衣装だけでなく、ストーリーにも何となく仏教の風味が感じられると指摘した。

仏教の東への伝播により中国と日本は似通った文化的背景を持つ。敦煌壁画には日本の法隆寺によく似た建築物を描いたものもある。日本や韓国などの研究者は、20世紀初めに莫高窟藏経洞の文物が大量に海外へ流失したことに注目している。

1958年には当時の敦煌文物研究所所長、常書鴻(じょう・しょこう)氏が敦煌壁画を模写した作品を携えて日本で「中国敦煌芸術展」を開き、大きな話題となった。

画家で元日中友好協会名誉会長の平山郁夫氏は、敦煌に関心を持ち、生涯に数十回も同地を訪れた。文化財保護のため基金を設立、設備を寄付し、人材育成にも長年携わった。また何度も敦煌莫高窟で「平山郁夫のシルクロード芸術世界」などの展覧会を開催した。

東京文化財研究所などの機関の専門家は、環境モニタリングや文物デジタル化などの科学技術分野で敦煌研究院との協力を強化している。また、敦煌が「2021年東アジア文化都市」に選定されたことで、多くの日本人がドキュメンタリーや中国旅行を通じて敦煌への理解を深めている。

「長月燼明」主演のレオ・ローは日本でも人気が高く、多くの日本のファンは親しみを込めてレオ様やロー様と呼んでいる。このため配信が始まると、すぐに日本のファンの間でも評判になり、「衣装デザインがとてもすてき、すぐに好きになった」「衣装の質感がとてもいい!配信が楽しみだ」「怖すぎない?見たいけど」「日本語の字幕がないとよくわからないけど見たい」などの声が寄せられた。

日本の中国作品愛好家「むらさき」さんは、「全体的なフォルムは伝統的な色調をベースにモダンな美的センスを加えている」と述べ、「美しい衣装と豪華なアクセサリーに加え、衣装の着替え回数がすごい」との見方を示した。

「長月燼明」は壁画の構図を利用し、さまざまなイメージの衣装には独特の特徴を持たせており、それぞれに表情が異なり、個性が重なることがない。

敦煌美学と仙侠ファンタジーを融合した「長月燼明」は、中国の優れた伝統文化における革新的な実践であるだけでなく、世界文化遺産に新たな活力を与え、東アジア文化圏に敦煌文化に対する共鳴を呼び起こし、中華文化を世界に発信する強力な担い手となっている。

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