福建省随一の経済都市泉州が世界遺産登録①

昨今、福建省泉州にブームが訪れている。1300年の歴史を有する古都泉州は、同市のコアな愛好者たちの努力によりSNS上の文化好きな若者たちの人気スポットに浮上した。古の繁華街として知られた西街を散策し、こざっぱりとしたカフェやバーあるいは民宿を横切ると、その文化の息遣いに全身を覆われたような感覚に覆われる。

西街の北側から顔を出す開元寺の双塔は、正真正銘の文化都市である泉州の独自性を物語るようだ。この二つの石塔は宋代の建造で800年の歴史を持つ。昨年7月の世界遺産委員会にて、開元寺を含む泉州の宋元時代の遺跡21件が世界文化遺産に認定された。

実のところ古都泉州はきわめて特徴的なふたつの顔を持っている。

まず宋代以降の古い建造物がたくさん残っていることだ。「南音」と呼ばれる伝統音楽、人形劇、閩南語のなかには伝統的な生活様式が脈々と流れ、仏教、道教、イスラム教、ヒンズー教、マニ教といった宗教が共存した希有な状況を今でも推し量ることができる。もう1つの顔は、アントレプレナーシップにより経済繁栄を創り出したことだ。泉州の経済は22年連続で福建省トップを走り、2020年には全国で18番目となるGDP1兆元超え都市の仲間入りを果たした。アンタスポーツ〔安踏〕、エクステップ〔特歩〕、361°など中国の有名スポーツウェアブランドの半数がここ泉州に集中している。

郷土の伝統を守りつつ果敢に海外進出する気概は閩南人のDNAであり、中国でもまれな海洋文化でもある。1兆元時代に突入した世界遺産の街が今後どう急成長を維持していくのか。「ビジネスができる街」として名をあげた泉州はいま新しい発想を提起している。

※「鯉城」の別称をもつ泉州は福建省の地級市であり、福建省人民政府が定めた海峡西岸経済区の中心都市また近代的工業・貿易港湾都市となっている。

生活と共にある世界遺産

昨年中頃、「泉州:宋朝・元朝における中国の世界の海洋貿易センター」が世界遺産リスト入りし、泉州全域に分布する22件の遺跡や建造物が登録され、20年にわたる世界遺産申請活動はついに報われることとなった。

宋朝・元朝における中国の世界の海洋貿易センター

「世界遺産委員会は審議時間わずか6分、全会一致で泉州の登録を可決した」。泉州市文化広電旅行局の党組書記で局長を務める李伯群氏によれば、泉州の申請項目は一連の複合遺産であり、こうしたケースは世界文化遺産のなかでも数少なく、第44回世界遺産登録決議では泉州が高く評価されたという。

22件の遺跡を一つの世界文化遺産としてまとめたことで、泉州にはいわば10~14世紀の繁栄を描く壮大な絵巻が描き出された。当時、泉州にはさまざまな肌色の外国人が街中を闊歩し、その様子は唐代の長安に匹敵するほどだった。夜になると古い渡し場には船舶が満ち一晩中明かりが絶えることはなく、中国の磁器、シルク、茶葉などの貨物が船で世界各地に運ばれた。また外国の香料や希少品を乗せた船が入港し、さらに都へと送られていった。

泉州は南宋末期に東洋随一の大型港となった。福建省海洋文化研究センターの特約研究員で中国人民政治協商会議泉州市委員会の副主席を務める李冀平氏によれば、当時は中国の大航海時代であり、自由な航海貿易のルートが創出された。泉州はきわめて独特かつ典型的な中華海洋文明を体現し、略奪とは対極にある平和と包容力を有しており、これは泉州が今日にもたらした教えである。

世界遺産申請の成功後、泉州の古迹はよりはっきりとした輪郭をもって人々に知られることとなった。この出来事は文化財保護の新たなスタートラインであるだけではなく、文化観光産業の発展の新たなチャンスともなった。泉州には山と海の両方があり、古都と近代都市の両面を持つ。宋代の寺院もあれば現代の劇場もあり、閩南グルメもあれば伝統音楽「南音」もある。福建省南部の片隅の古城でありながら、観光都市としての抜きんでた才能を生まれながらにして備え、蓄えてきたのだ。泉州市の現在の計画では、各遺産の見学施設を体系的にグレードアップさせ、22件の遺産関連建造物では閩南語、普通話、英語、日本語、韓国語の5言語での解説を提供予定だという。泉州海外交通史博物館を含む展示館15カ所はすべて無料開放するほか、考古遺跡公園の建設も複数計画されている。

泉州の世界遺産は数が多く、海辺、山林、古都、河川と広範囲に分布している。同市は今後、各遺産へのアクセスの利便性をさらに高めるべく努力をしていくとのことだ。また、「海のシルクロード博物館」の建設を進め、複数の博物館を改造し世界遺産展示センターとして一新するために国と福建省の支援をとりつけているところだ。

とはいえ、泉州独自の「生活の息づかい」を守り伝えていくことがまず肝心だと李氏は考える。「泉州にある遺産の多くがいまでも暮らしとともにある。7・62㎢の古都遺産区および緩衝地帯には先祖代々そこで生活する人々がおり、泉州の文化財とその保護は『生活の息づかい』に満ちている」。文化財保護が一般市民の日常生活に溶け込めば、遺産の保護条件が向上するほか、人々の居住環境の改善にもつながるという。

大坪山鄭成功公園から眺める泉州市街地の全景

『中国新聞週刊』記者/倪偉 翻訳/神部明果 写真/CNSphoto

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