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中国のシャングリラ会合参加にはどのような意義か-趙小卓軍事科学院研究員インタビュー

 (中国通信=東京)北京15日発中国新聞社電は「中国のシャングリラ会合参加にはどのような意義があるのか 軍事科学院の趙小卓研究員インタビュー」と題する次のような記事を配信した。  新型コロナにより2年間にわたって「開催中止」となっていたシャングリラ対話会合(アジア安全保障会議 以下シャングリラ会合)が新たにオフラインで開催された。今年のシャングリラ会合は米国が「インド太平洋戦略」を強力に推進し、ロシア・ウクライナ紛争が続く中で開催されており、人々の注目が集まっている。中国はなぜ今年のシャングリラ会合に参加したのか。中米の国防相が会談を行ったのにはどのような影響と意義があるのか。米国は今後どのようにして「インド太平洋戦略」を推進するのか。中国新聞社の「東西問」コーナーはこれらについて、9回連続でシャングリラ会合に参加している軍事科学院の趙小卓研究員に独占インタビューを行った。 以下はインタビューの要旨である。  中新社記者:シャングリラ会合は西側がつくったプラットフォームであり、中国がこれに参加すれば、米国やその同盟国の攻撃の対象となるのは避けられない。それなのになぜ中国はシャングリラ会合に参加したのか。  趙氏:シャングリラ会合は主に国際・地域の安全保障問題について話し合う場であり、多くの問題が国の安全保障上の利益にかかわり、さまざまな国がそれぞれの観点から異なる側面を見ているため、しばしばデリケートな状態になり、対立に満ちたものにもなる。そのため、それぞれの利益を求める国が共同で会合に参加すれば、「ケンカ」になりやすい。中国は日ましに国際舞台の中央に向かっている大国であり、世界はより多く中国を理解しなければならないし、中国もまたより良く世界を理解しなければならない。各国防高官と専門家・学者が顔を突き合わせて意思疎通と交流を行うことは最良の相互理解の方法だ。軍隊の基本的な職能は国家の主権と安全保障上の利益を守ることであり、各国の軍隊の意思疎通と交流が不足している状況下では最悪の状況を想定して問題をとらえるようになりやすい。双方の戦略的相互信頼が欠けている場合は特にそうであり、最終的に自己実現のように、予言通りに対立と衝突に向かってしまう可能性がある。このたび中国は新型コロナの影響を乗り越え、ハイレベル代表団を派遣して会合に参加した。これは中国の声を届け、中国のストーリーを語り、信頼を醸成して疑念を解消するためだ。  12日午前、中国国務委員兼国防相の魏鳳和氏は「中国の地域秩序に対するビジョン」をテーマに会合で講演を行った。会場は空席無しの満員で、ホールの両側の通路も立ち見する人でいっぱいになった。魏国防相の講演は三つの部分に分かれており、最初に中国の「多国間主義の擁護と実践、人類運命共同体構築後押し」の理念について説明し、次に国連平和維持活動への参加、アデン湾の護衛航行、人道主義的災害支援など中国の政府と軍隊による世界の平和と発展に対する大きな貢献について述べ、最後に台湾問題・南中国海問題・中米関係・ウクライナ危機など国内外が高度に注目するいくつかの問題について中国の立場を説明した。  質疑応答では魏国防相は2ラウンドに分けて、計11の質問に答えた。第1ラウンドで五つの質問に答えた後、司会者が、手持ちのリストによるとさらに44人が質問を待っているが、時間の制限があるため5、6人を選ぶしかないと話した。11の質問は基本的にどれも挑戦的なもので、台湾問題・中国の軍事力近代化・中国の核戦力の発展・中米関係・ウクライナ危機などにおよんだ。質問者の多くは率直な言葉でするどい視点から質問をしており、質問の中には「落とし穴やわな」があった。一連のするどい質問に対し、魏国防相は速やかに対応し、回答が非常に素晴らしく、誠実な姿勢で答えられる質問にはすべて答え、簡潔で筋が通っていた。講演の際も質疑応答の際も、終了後には会場から熱烈な拍手が響いた。これは中国が「他人の舞台を借りて自己アピール」し、大国の自信を示したということだ。  中新社記者:米国は絶えず「インド太平洋戦略」を推進する一方で、新冷戦またはアジア版NATO〈北大西洋条約機構〉を求めていないと述べている。米国のこうした矛盾をどう考えているか。  趙氏:昨年米国のバイデン大統領はホワイトハウス入りした後に、インド太平洋地域戦略を改めて評価・策定すると伝わってきたが、しかし、しばらくの間その声は聞こえるが、姿は見えないという状態だった。今年2月になってようやくホワイトハウスは「米国インド太平洋戦略」リポートを発表したが、その内容は比較的おおざっぱなものだった。それによると、政治面では主に同盟体系を強化し、イデオロギーと価値観によって線引きをして、「民主陣営」を拡大するとしている。経済面では、5月24日にバイデン大統領が日本を訪問した際に「インド太平洋経済枠組み」を始動させる。このたびのシャングリラ会合では米国のオースティン国防長官が比較的系統的に「インド太平洋戦略」の軍事面について説明し、これにより「インド太平洋戦略」の全貌が大まかに見えてきたと言っていいだろう。  米国の「インド太平洋戦略」の軍事構想は、「一つの目標、二つの要点」に要約できる。「一つの目標」とは中国に対する抑圧・包囲・封じ込めである。「二つの要点」とは、第一に、米国のインド太平洋地域における軍事配備を強化し、米国の軍事力を強化して、地域の緊急事態に対応するための十分な能力を備えること。第二に、米国の同盟体系を拡大し、日本・韓国・オーストラリア・フィリピン・タイとの5組の軍事同盟を基礎として、インド・ベトナム・シンガポール・マレーシアなどとのパートナー関係を発展させ、米日印豪(QUAD)戦略対話、AUKUS〈米英豪安全保障協力〉を重点的に発展させることだ。米国は自身の力だけでは中国を包囲するには不十分であることをよく分かっているため、必ずより多くの国を引っ張り込まなければならない。特に注意すべきなのは、米国が欧州のNATO勢力をアジア太平洋地域に呼び込もうとしていることだ。このたびのシャングリラ会合に例年よりも多く欧州の国が参加していることがその明らかなシグナルである。結局のところ米国の「インド太平洋戦略」の目標とは、中国の周辺の安全保障環境を変えることで、中国の台頭の足を引っ張り、ひいては中国の台頭のプロセスを中断させることである。  しかしながら、米国の「インド太平洋戦略」は発表の日からすでに構造的なジレンマに直面している。米国が同盟体系を強化するには必然的に「敵」を作らなければならない。同盟の特性は外部の脅威によって内部の団結を維持することにあるからであり、敵が明確であればあるほど、強大であればあるほど、内部の結束力は高まる。一方で「中国の脅威」を誇張し、中国に対し抑圧・封じ込めを行った場合、その結果は中国を真に米国の対立側に追いやり、中米が対立と衝突に向かい、冷戦どころか熱い戦争が起こる可能性すら現実のものとなる。そのため、米国は一方で台湾海峡・南中国海・東中国海など地域の安全保障のホットスポットを絶えず刺激し、中国に対し戦略的消耗戦を仕掛けるのと同時に、一方では中米関係がコントロール不能になることでもたらされる深刻な結果を気に掛けている。こうした状況を背景として、オースティン国防長官は、米国は中国との対立を求めておらず、中国との冷戦を求めておらず、「アジア版NATO」をつくることを求めていないと述べた。しかし米国は言うこととやることがバラバラで、発言に信用がなく、繰り返し約束を破るため、これは米国の大国としての戦略的な信用を消耗することを代価としている。  中新社記者:中米国防相会談の影響と意義をどう理解すべきか。  趙氏:このたびのシャングリラ会合が正式に始まる前、中国国務委員兼国防相の魏鳳和氏は米国のオースティン国防長官と初の対面会談を行った。中国国防省の呉謙・報道官はこれについて次のように説明した。これは率直で、前向きで、建設的な戦略的意思疎通であり、両国の国防相は中米両国・両軍関係、台湾、南中国海、ウクライナなどの問題について意見を交換した。いくつかの問題は中米間での古くからの議題であり、双方の立場が一回の会談で実質的に変化することはありえないが、情勢は絶えず変化しており、古い問題も段階が変われば異なる内容を持つようになるため、意思疎通は依然としてきわめて重要である。中米関係がかくのごとく緊張している状況下では、両国の国防相が直接顔を突き合わせて問題解決への意欲を示すこと自体に前向きな意義がある。  中米国防相会談では一つのコンセンサスが得られた。すなわち、双方は共に、引き続き意思疎通と交流、特に危機の管理・コントロール方面の意思疎通と交流を強化することに同意するということであり、これは前向きなシグナルである。軍事の交流は各レベルにかかわり、ハイレベルの意思疎通は特に重要である。ハイレベルが基本的なコンセンサスを得てから、下に向かってこれを延伸させることができるからだ。実際のところ、中米両軍には中米防衛政策調整協議〈DPCT〉、国防省業務会合、統合参謀部対話メカニズムなど、若干の意思疎通のチャンネルがあるが、これらのメカニズムは新型コロナ期間中にその多くが中断状態になってしまった。中米国防相会談後にこれらのメカニズムを再始動させられるかどうかは一つの重要な観察の指標となるだろう。  中新社記者:このたびのシャングリラ会合で、アジア太平洋諸国は地域の今後の見通しについてどのような観点を持っていたか。  趙氏:このたびのシャングリラ会合では重要な動向が示された。すなわち、多くのアジア太平洋の国々が、中米の対立と衝突を見たくないし、中米のどちらかにも肩入れしたくはないと明確に表明したのだ。インドネシアのプラボウォ・スビアント国防相は、インドネシアの立場は非常に明確であり、あらゆる大国を尊重し、いかなる軍事同盟にも参加しないと明確に述べ、「アジア方式」で地域の課題に対応すると特に呼びかけた。マレーシアのヒシャムディン国防相も、東南アジア諸国連合〈ASEAN〉は独自の道を進み、どちらにも肩入れすることはないと強調し、取材に答えた際に「米国の要求がどんなものであろうと、われわれは必ずそれが米国の利益だけでなくASEANの利益にも合致するものでなければならないことを彼らに確信させた」と述べた。カンボジアのティア・バニュ副首相兼国防相も、カンボジアは主権独立国家であり、自らの運命を決定する権利を完全に有していると述べた。  世界を見渡してみれば、アジア太平洋地域は現在の世界でも数少ない長期にわたって平和と安定が保たれてきた地域である。アジア太平洋地域には多種多様な安全保障問題があり、多くの不確実・不安定要因があるが、この数十年にわたり、全体として平和と安定を保ってきた。その中でも、中国の貢献は埋もれさせることができないものである。中国は周辺国と領土・島嶼の係争を抱えているが、一貫して外交による解決・交渉による解決・平和的な解決を呼び掛けており、アジア太平洋の平和と安定の擁護において重要な役割を発揮してきた。多くのアジア太平洋の国々が、中米のどちらにも肩入れするのを拒んだということは、中国の理念とやり方に賛同しているということであり、中国と共にアジア太平洋運命共同体を構築し、普遍的安全保障・共同発展・協力ウィンウィンに力を注ぎ、アジア太平洋地域の平和・繁栄の勢いを長く保っていきたいということである。                      (完)