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<日中100人 生の声>分断の時代に自分の力で世界を思い描く―竹田武史 写真家

新型コロナウイルス感染症が世界中にまん延して、もうすぐ2年が経とうとしています。その間、私たちの暮らしで大きく変化したことといえば、マスク越しにしか人と会話しなくなった、海外旅行へ行けなくなった、楽しみにしていた盆や正月の里帰りすら億劫になった…。コロナ禍の行動制限によって変わってしまった生活習慣や生活様式を挙げれば、きりがありません。ですが今、私が強く感じているのは、ウイルスと共に世の中にまん延しつつある、すべてを〝分断〟しようとする力そのものについてです。コロナ禍がもたらしたこの奇妙な現象を薄気味悪く感じているのは、きっと私だけではないでしょう。 思えば、この謎のウイルスへの対応を巡っては、火事場の対立が余りに目立ちました。ダイヤモンド・プリンセス号の乗客への対応、PCR検査の拡充、全国小学校の休校措置、緊急事態宣言の発令など、すべての施策に賛否両論、さまざまな意見が飛び交いました。今年に入ってからは、政府と一部の利権者たちが、ごり押しで東京オリンピック・パラリンピック開催に漕ぎつけようとしたために、「緊急事態宣言」と「まん延防止等重点措置」の連発、休業補償、ワクチン接種のあり方を巡っても様々な対立が生じました。政府の場当たり的な対応が、今まで明るみに出なかったいびつな社会構造を浮き彫りにし、異なる境遇、価値観に生きる人々の対立をかえって煽る結果となってしまっているようです。 ところで、私は東京在住の写真家です。ライフワークとして中国への旅を20年以上続けてきました。そんな私が、昨年以来のコロナ禍で最も思い悩んだこと、それは中国との関係を今後どうするか、という問題でした。都市封鎖された武漢市の病院から送られてくる生々しいニュース映像を初めて目にしたのは、昨年1月に中国・杭州市での撮影取材から帰国した1週間後のことでした。その直後には、謎のウイルスの危険性をSNS上で注意喚起しようとした医師・李文亮さんがクローズアップされました。政府当局者たちが李さんを処分し、隠蔽している間にウイルスはどんどん広まり、李さん本人も感染し、亡くなられたとのことでした。中国政府はいつまでたってもWHOの現地査察を受け入れず、ウイルスに関する情報を提供しませんでした。中国の一部の人たちが防疫対策と世界との協調を怠ったために世界中にウイルスがまん延してしまった、というのが一連の報道から私が理解したことでした。 いったい、なんという傲慢な国だろう…。私は、こんな国に、これまで20年以上も魅了され、夢を追い続けてきたのかと思うと、とても悲しく、恥ずかしい気持ちになりました。もちろん、中国という国のあり様が、日本や欧米諸国と大きく異なることは肌身で感じてきましたが、20年以上も付き合っていると、どちらが良い悪いとは、そう簡単には結論できなくなるものです。とりわけ近年、世界を席巻する新自由主義的な政治・経済のあり方に憂鬱を感じていた私は、曲がりなりにも共産主義思想に基づく政策が実施されていて、地方へ行けばアジア的共同体ともいえる営みがまだまだ健在する中国のような国に、学ぶべきこと、一緒に取り組めることは多々あると考えていたほどでした。ところが、今回のコロナ禍を巡る一連の報道は、これまでの中国への憧憬と親しみをいっきに失望へと変えました。日本人として、これ以上、中国に深く関わることはできない。私的な未練は残しても、社会人としてけじめをつけなければならない。当初、私はそこまで思い詰めていました。 夏頃まで仕事は完全にストップしていて、その間はテレビやネットで情報を収集し、親しい友人たちとも情報交換をしながら、自分なりに今後の対応策を真剣に考えている〝つもり〟でいました。ところが、しばらく経つと、テレビやネットに溢れる断片的な情報にはどこかリアリティが欠如していると感じるようになりました。謎のウイルスについても、専門家と呼ばれる人たちは、実は何も確かなことは分かっていないらしく、結局のところ、おしゃべり好きな人たちが、場当たり的に適当なことをしゃべり続けているとしか思えません。そのような情報から何かを判断し、自分の意思を持つことなどできるはずがありません。以来、テレビやネットで情報収集するのをきっぱりと止めることにしました。 では、自分にとってよりリアルな真実の世界とは…。そう考えた時、これまで20年以上、自分の足で歩き、身体で感じてきた中国に思いを馳せました。そして、次の日から、これまで撮り続けてきた中国の旅の写真の整理を始めました。一枚、一枚の写真と静かに向き合っていると、山や川や田畑や市場の匂い、出会った人たちとの会話、食べ物の味、当時考えていたことまでが鮮明に蘇ってきました。そこには、私自身が体験した、ありのままの中国が息づいていました。どうやら私は、謎のウイルスへの恐怖から平常心を失い、情報の洪水に押し流されて、自分の力で世界を思い描くことをすっかり忘れてしまっていたようです。これでは写真家=真実を写し出す者として失格です…。私は自分を深く反省することで、ようやく心の落ち着きを取り戻しました。 そして今冬、初めてのモノクローム写真作品集『長江六千三百公里をゆく』が完成します。目に見えないウイルスへの恐怖と、情報の洪水によって、人と人、国と国との〝分断〟が加速する時代に、一石を投じることができれば幸いです。2021年12月に発売した写真作品集 ※本記事は、『和華』第31号「日中100人 生の声」から転載したものです。また掲載内容は発刊当時のものとなります。 ■筆者プロフィール:竹田武史(たけだたけし) 写真家。1974年、京都生まれ。1996年に初訪中。翌年から5年間、日中共同研究プロジェクト「長江文明の探求」(国際日本文化研究センター主催)の記録カメラマンとして中国各地を取材。以来、20年以上にわたり中国各地の生活文化を記録する。『大長江~アジアの原風景を求めて』『茶馬古道~中国のティーロードを訪ねて』など著書多数。

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<日中100人 生の声>芸術の力で人々の心を結ぶ―何慧群 東京華楽坊芸術学校校長

私たち東京華楽坊芸術学校は、主に音楽や絵画の教室運営・イベント運営を行っています。東京近郊にある7つの教室でレッスンを行っていますが、これは華僑華人の生徒さんにとっては、ルーツである中国の文化を勉強する学び舎であり、日本人の方にとっても中国文化を知る場となっています。ただ、教室の全ては、人と人が対面してこそ成り立つもので、コロナ禍は、「波乱万丈」そのものでした。 2020年1月の児童春節イべントを終えて、2月になるとコロナの問題が日本でも深刻になってきたため、3月から5月はやむを得ずレッスンを全面休講としました。レッスン料は無条件で全額返金して、教室に来られない生徒さんや、レッスンに興味を持っている方達のために、無料オンライン授業を全90回実施しました。この期間は授業収入がない状態で、教室の家賃だけが発生しており、事務スタッフの給料も支払わなければなりませんでした。困窮の末に、もともと2フロアだった大久保教室を1フロア減らすほど…。この引越し作業は全て自分たちで行いました。手狭にはなってしまいましたが、スタッフたちが本当によく頑張ってくれたことに加えて、日本政府による補助金が利用できたことに救われました。 さて、既存教室を縮小するのは非常に苦しかったのですが、私たちはこのピンチの中でチャンスを見出そうとしました。コロナ禍の流れに「逆行」するようですが、6、7月に西川口・船橋で新しい教室を開こうと考えたのです。というのも、以前から物件を探していた場所で、普段では考えられないような費用で手に入れることができたため、1箇所縮小した分で、違うエリアでの認知度向上を図れると考え「運命に負けるな」と自分に言い聞かせ、この賭けに出ました。 同時期に全教室でレッスンが再開すると、やはりオンラインより対面で空気感や細かい部分が伝わる対面レッスンが好まれ、検温、手指消毒、全員マスク着用を徹底してレッスンを続けることになりました。 コロナ禍で最も異例だったのは中国中央音楽院の音楽検定試験の開催でした。その名の通り、中国・西洋楽器の学習者のレベルアップを図るもので、合格者は中央音楽院への入学が有利になる制度もあります。この日本地区の検定を年1回、私たち東京華楽坊芸術学校で運営しています。今年で第3回目でしたが、例年なら教授が審査のために来日して、直接受験者を見ていたところ、今年はそれが叶わず、試験会場の様子をオンライン中継して審査するというハイブリット形式になりました。そのため私たちは通常の会場運営に加え、手探りで感染対策、中国への配信を実施したのです。初めての形式に備え、事前にオンライン説明会を行ったため、なんとか成功させることができました。福岡会場は参加者1人のために、私ともう1人のスタッフが赴いて開催しました。約束を守ることによって、信頼感を得ることができ、いずれ必ず参加者が増えることを信じています。 また、2021年1月30日には、日本初の華僑華人系オーケストラ「多元交響楽団」の新年音楽会を実施しました。これはコロナ問題が現れる前から準備を進めていました。どんなに苦しい時期でも諦めず、言葉がなくても心に伝わる音楽のちからで、みんなが明るくなれるようなことをしたかったからです。メンバーは、華楽坊の講師を含む20数名の中国人と、日本人30名、韓国系の方もいて非常に多国籍なオーケストラとなりました。 オンライン配信も行いましたが、会場では集客よりも来てくれた方の安全を優先し、感染対策として、まだ普及していなかった自動検温機を入口用に2台購入しました。本番ではクラシックの定番曲や中国の曲を演奏しました。会場席数に対し来場者は半分ほどでしたが、中には日本人の方も多く、終演後には、コロナ禍で開催したことを労い、大勢のお客様の中から賛助会員として支援したいという方が現れ、とてもありがたかったです。イベント会場で徹底した感染防止対策を実施 その後は、音楽発表会、ダンス発表会も開催しました。こちらも会場は人数制限を行う代わりに、オンライン配信を行いました。ギリギリまで開催できるかわからなかった中、スタッフ一丸となって準備を進め、子どもたちの1年の練習の成果を披露して成長を実感する時間を作ることができました。子ども時代の1年は大人以上に長く感じられるものです。この逆境の中、どうにか健やかに育ってほしいと願っています。 それからコロナ禍での新しい取り組みとして、子ども向けの新聞をスタートしました。ネットが主流となった時代ですが、「温度感があるものを伝えたい」という思いから、印刷して紙面を作成することにしました。日本の主要な新聞には殆ど子ども向け版が存在しますが、華人華僑向けのものは他に例がなく、月1回発行で16ページにわたり、ニュース・自然・動物・芸術・子どもたちによる文章や絵・受験・保護者向けの情報など、私たちならではの内容を掲載しています。 ただ、やはり開催できなかったイベントも多く、特に国と国を行き来しての交流はやはり難しかったため、いくつも中止に追い込まれました。コロナ後には必ずまたこれらに取り組み、併せて講師たちの交流会も実施したいと考えています。 コロナに限らず辛いことも沢山ありますが、生徒や保護者の皆さん、スタッフや講師、応援してくださる方のことを思えば踏ん張ることができます。「笑っても笑わなくても人生、ならば笑って過ごしたい」と常に思って、これからもどんな困難があっても経営者としての責任を持って乗り越えてゆきます。 ※本記事は、『和華』第31号「日中100人 生の声」から転載したものです。また掲載内容は発刊当時のものとなります。 ■筆者プロフィール:何慧群(かえいぐん) 東京華楽坊芸術学校校長、チャイナリニア株式会社代表取締役。中国江西省九江市出身、2006年日本に留学し、早稲田大学大学院スポーツ研究科健康スポーツ専攻修士を卒業。2013 年にチャイナリニア株式会社を発足し、中国楽器や華僑児童向けの東京華楽坊芸術学校を設立。児童向けの新聞『少年華僑報』 社長、江西省日本商工会議所副会長、日中文化旅行促進協会会長、東京多元交響楽団運営総監督等を兼任。「華僑が心を寄せ、芸で知恵を合わせ、徳で人を育てる」という理念のもと、両国の文化活動に取り組んでいる。

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【4月14日15時から開催】雲南省におけるビジネス開拓の可能性を探る 雲南省探訪ビジネスセミナー参加者募集中

4月14日15時から雲南省駐日本(東京)商務代表処の主催で「雲南省探訪ビジネスセミナー RCEP加盟により盛り上がる雲南省」を開催する。 2021 年から日本と雲南省との経済交流を促進するため、雲南省の経済を中心に、またニュースや報道では取り上げられないような様々なテーマ、貴重な情報を提供するために定期的に本セミナーを開催している。 第四回目となる今回は「RCEP 加盟により盛り上がる雲南省」というテーマを掲げ、 2022年1月に発効したRCEPのメリットを活かすための雲南省産業界の市場開拓に向けての動向や、RCEP 加盟諸国と雲南省との関係の深まりを紹介すると同時に、インドシナ半島・南アジアと中 国の結節点として雲南省が提供するビジネスチャンスについて発信する。また本セミナーの特別講師として荒井商事非常勤顧問、多摩大学客員教授である結城隆氏をお招きする。 申込みはこちらからhttps://yunnan.jygma.org/index.php/seminar4th/ セミナー概要 ■ 主催:雲南省駐日本(東京)商務代表処 共催:一般社団法人 日本雲南総商会 後援:株式会社みずほ銀行、日本貿易振興機構(JETRO)成都事務所 一般社団法人 東海日中貿易センター、認定 NPO 法人日本雲南聯誼協会 一般社団法人 日中中小企業交流支援協会 雲南省国際貿易学会 ■セミナー配信期日:2022 年 4 月 14 日(木)午後 3 時より 2 時間(日本時間) ■セミナー受講料:無料 ■受講人数:先着100名...

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「遠くて近い新疆」 中国駐大阪総領事館オープンデーイベント実施

昨年12月、中国駐大阪総領事館が1ヶ月限定で募集を始めた中国新疆ツアー、1000人以上の募集を集めたが、コロナ禍の影響もあってか、いつ開催するのか期待が高まっている中、4月7日、中国駐大阪総領事館で本ツアー応募者限定の「遠くて近い新疆」中国駐大阪総領事館オープンデーが、中国駐大阪総領事館主催、新疆ウイグル自治区文化観光庁、中外文化交流センターの協力で実施された。 1000人以上の応募者の中から抽選で選ばれた11名の日本人、そして特別ゲストとして新疆ウイグル自治区政府顧問の小島康誉氏、在阪新疆出身華僑代表3名、中国駐大阪観光代表処、そして中国駐大阪総領事館の薛剣総領事を始めとする代表職員が本オープンデーに参加した。 冒頭に薛剣中国駐大阪総領事から歓迎の挨拶では、「日本、そして世界でも最近有名になった新疆ウイグル自治区だが、本物の新疆がどのようなものか、正確な情報が伝わらないこと悩みであるため、昨年12月に中国新疆ツアーの募集を行った。その結果、1000名以上の申込があり、本当の新疆を知りたいとする期待の現れだと感じている。現在コロナ禍の影響で本ツアーは実現できていないが、観光業界、航空業界などの関係団体とのやりとりを続けており、本ツアーが開催する際には新疆へのチャーター便を用意する準備を進めている。また行けない時期だからこそ、新疆を理解、実感してもらうイベントを開催するべく、今回のイベントを開催した。」と本イベントの開催趣旨と、新疆ウイグルツアーの現状を述べられた。 その後、一般参加者、総領事館関係者、在阪新疆出身華僑との混合グループに分かれ、新疆ウイグル自治区の歓迎映像を視聴、新疆に住む代表的な少数民族、ウイグル族やカザフスタン族、タジキスタン族などの伝統衣装を身に纏い、新疆ウイグル自治区文化観光庁が手配した特別講師がオンラインで同民族の伝統ダンスレッスンを行った。 ダンスレッスン終了後は、新疆の伝統壁画である亀茲などの伝統文化の紹介と亀茲模写体験キットや、ジグゾーパズルなどのプレゼントが行われた。新疆の伝統舞踊、衣装、美術などの文化を思う存分体験できるプログラム構成であった。 最後に、観光の醍醐味である美食を体験するべく、大阪に住む新疆人が作る本場の新疆美食を味わった。 初めて新疆料理を食べるという日本人参加者も多く、食を通しての新疆理解も深めることができた。 参加者からの感想では、民族衣装を着ることで、参加者一人一人の雰囲気が変わり、魅力が増す、民族衣装の持つ素敵な魅力を再発見することができた、新疆文化の特色が多く、中国という場所が如何に多様であることを再発見できた、など多くのコメントが寄せられた。 新型コロナウイルス感染症の関係により、日中両国の往来が制限される中、新疆文化を体験する機会は少なく、今回は新疆をPRするのに絶好の活動となったことだろう。 ただ日本人にとって未知数な地域は新疆ウイグル自治区に限ることでは無い。今後もこのような各省、自治区に特化したイベントを開催することにより、日本と中国の距離をより身近にし、日本人に対して本当の中国理解促進に貢献することになると感じる。

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日中韓の青少年映画作品を放映 多元文化映画祭@池袋

3月22日、としま区民センター多目的ホールで「多元文化映画祭@池袋」が株式会社アジア太平洋観光社、アジア国際青少年映画祭日本、豊島区日中友好協会の共催で開催された。 本映画祭では、「第11回〜14回アジア国際青少年映画祭(AIYFF)」で入賞した作品の中から「家族」、「恋愛」のテーマに沿った厳選作品を8本放映した。 映画祭冒頭では、第14回アジア国際青少年映画祭(AIYFF)日本実行委員長の高橋克三氏から映画祭の開幕宣言が行われ、前半1部は「家族」、2部は「恋愛」に関する日中韓青少年の作品を放映した。 当日は平日の昼間にも関わらず、日中の映画祭関係者及び映画愛好家が会場に集った。青少年たちの作品はいずれもクオリティが高く、また現代の若者から見た家族観や恋愛観を通して、日中韓の異文化理解が促進されることになった。 当日の上映ラインナップはこちら 第1部「家族」 「かぞくの作り方」 第12回優秀賞(日本)「別れ」第14回優秀賞(中国)「日曜に会い、月曜にさようなら 」第11回金賞(中国)「ウォンイエの話」 第14回最優秀脚本賞(韓国) 第2部「恋愛」 「トカトントン」 第14回グランプリ(日本)「男を嗅ぐ」 第12回最優秀脚本賞 (中国)「手紙」 第14回高校生グランプリ(韓国)「Get it beauty」 第12回最優秀監督賞(韓国) スクリーンを通した新たな多元文化交流の形が継続していくことを願うばかりだ。 ※アジア国際青少年映画祭(Asia International Youth Film Festibal, AIYFF)は2004年の韓国での開催から続く、日中韓の学生作品を対象とした国際映画祭です。AIYFFは、映像を介したアジアの青少年たちの交流の場であり、文化と情緒を共有する青少年文化祭としての役割を目指してきた。昨年に開催された第14回は東京・池袋およびオンラインにて開催。日中韓の青少 年により制作された映画の上映と交流が行われた。

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山東濰坊無形文化遺産展が東京で開催

中国の伝統文化および日中両国の地方文化交流を促進するため、山東省濰坊市、中国駐東京観光代表処、東京中国文化センターは共同主催にて、濰坊市の無形文化遺産を展示する「濰坊−凧の街、平和を世界へ“山東濰坊無形文化遺産展~in東京~”」が、3月4日、東京中国文化センター展示ホールで開催されました。  新年をイメージした絵や、凧の発祥の地と言われているに濰坊市で作られた凧など、200点以上の無形文化遺産等を展示し、日中両国の無形文化遺産に対する更なる理解と交流を行い、夢と平和の友情の凧を上げることとなりました。  開幕式では、濰坊市長、劉雲のご挨拶より、歴史と文化の都市として有名な濰坊市を簡単にご紹介しました。 また、近年、国際凧揚げ大会や日中韓産業交流会などをプラットフォームとし、濰坊市と日本の経済貿易協力は拡大し、文化交流についてもますます緊密になり、日本の日向市や八街地とも姉妹協力都市とも協力関係を結んでいると述べました。  また、宮崎県日向市土屋幸平市長より祝辞のメッセージを賜り、祝辞の中で、両市は1986年の提携以来長きにわたって交流を重ねてきたということと、文化や観光面など多くの分野で交流と協力を進め、今回の展覧会が両国にとってますます発展の契機になるようにとお言葉をいただきました。  また、千葉県八街市の北村新司市長からはビデオでの祝電をいただきました。 祝電の中では、本年の日中国交正常化50周年を機に、八街市も濰坊市と協力して、 中日両国の友好信頼関係をさらに深めていきたいとお言葉をいただきました。  山東省濰坊市の「山東濰坊無形文化遺産展」の開幕に合わせ、東アジア文化都市に2019年に選定された東京都豊島区より、東京都豊島区日中友好協会の尾崎隆信会長から、2019年に選定されて以来、豊島区で行われているさまざまな文化 交流活動や体験談をご紹介良さただきました。また、豊島区が区民と一緒に文化友好都市をつくり、将来の文化交流のための人材育成に力を入れていることを紹介し、その経験が濰坊市にも何らかの刺激になり、今後の参考になればと述べました。  最後に、中国駐東京観光代表処の王偉首席代表は、今日は旧暦の龍の頭を上げる日で、すべてが蘇る日です。今後もこのようなイベントを開催することで、日中友好の継続的な発展に新たな貢献ができることを願っていますと述べました。  また、今回の展示にも使用した、装飾用の凧や粘土細工など、来場の皆様にお配 りし中国の新年の幸福を祈いました。また、開会式にご来場いただいた皆様からは、 中国の豊かで多様な民芸品に大きな関心を示していただき、また、濰坊市の街とそ の背後にある深い文化遺産への理解を深めたとおっしゃっていただきました。  (転載元:中国駐東京観光代表処 )

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3/13 若者が決める!第2回日中旅行ワークショップ大会 リスナー募集中!

コロナ禍で事実上日本と中国に行けなくなってから早2年。今回、身近な「旅行」というテーマでイベントを開催します!! 日中両国の青少年が4人1グループで、1か月程度オンライン上で理想の観光プランを作成した成果を発表します。日中の青少年がどんな旅行プランを考えたのか、一緒に見ませんか? 当日の審査員として、ドキュメンタリー監督の竹内亮 監督、四川省出身のYouTuberヤンチャン、香川県国際観光推進室の中村様、富士急トラベル株式会社の碓井様にお越しいただきます!! リスナーのみなさんに豪華景品が当たる企画もご用意していますので、奮ってご応募ください! 申し込みはこちらから: 【日本在住の方】https://forms.gle/E61dtRqoks9CB6kr5 【中国在住の方】https://wj.qq.com/s2/9731213/fb48/ 開催日時 3月13日(日)14時〜16時 ※日本時間 開催方法 オンライン ※Zoom使用予定、使用言語は日本語 こんな方にオススメ! ・中国語/日本語を勉強している方 ・日本や中国の有名観光スポットを知りたい方 ・旅行好きの方 などなど… 参加条件・参加費 誰でも無料でご参加いただけます! リスナー特典 ◆得点1:リスナーのみなさん向けのWeChatグループにご招待! その中で中国人リスナー参加者や日本人リスナー参加者と交流ができますよ!! ◆特典2:豪華景品が当たるチャンス! リスナーの皆さんに豪華景品があたるチャンスがあります!(北京オリンピック関連グッズ、竹内亮監督サイン入り本など) 抽選結果はイベント当日に発表いたします♪ 申し込み方法 下記お申込みフォームより申し込みください。 【日本在住の方】https://forms.gle/E61dtRqoks9CB6kr5 【中国在住の方】https://wj.qq.com/s2/9731213/fb48/ ※申し込みいただいた方にはメールでご連絡を差し上げますので、nicchu.ryokouws02@gmail.com のメールを受信できるように設定をお願いいたします。 申し込み期限:3月12日(土)日本時間18時 共催団体 認定NPO法人東京都日中友好協会青年委員会、日中学生交流団体freebird、中国駐東京観光代表処 後援団体...

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3月22日 多元文化映画祭@池袋 日中韓「第11〜14回アジア国際青少年映画祭」受賞作品上映会のお知らせ

日中韓の高校生〜大学生が作成したショートフィルムアジアの青少年が作成した至極の名作品を大スクリーンで鑑賞しませんか? チケットの申し込みはこちらから:https://peatix.com/event/3186992/view 六本木で毎月開催している多元文化会館映画上映会。今回は池袋の地を借りてアジアに関連する映画作品を放映します! 本会では「第11回〜14回アジア国際青少年映画祭(AIYFF)」で入賞した作品の中から「家族」、「恋愛」のテーマに沿った厳選作品を放映します!日中韓の青少年が製作した名作をオムニバスで鑑賞する絶好のチャンスです!皆様のご来場を心よりお待ちしております。 日中韓3カ国の学生作品が集う国際映画祭「第14回アジア国際青少年映画祭(AIYFF)」を日本で初開催いたします。アジア国際青少年映画祭(Asia International Youth Film Festibal, AIYFF)は2004年の韓国での開催から続く、日中韓の学生作品を対象とした国際映画祭です。日中韓から集まった総勢21作品と、AIYFF出身監督の商業デビュー作品の特別試写会(無料)を3日間に渡り上映いたします。それぞれの作品はもちろんのこと、3ヵ国ごとの作風・表現の違いなどもぜひお楽しみください。 ◆上映ラインナップ※ラインナップが変更となる場合がございます。 第1部「家族」 12:00~13:45(受付開始:11:30):かぞくの作り方 第12回優秀賞(日本)別れ(中国)第14回優秀賞日曜に会い、月曜にさようなら 第11回金賞(中国)ウォンイエの話 14回最優秀脚本賞(韓国) 第2部「恋愛」 14:15~16:00(受付開始:13:50):トカトントン 14回グランプリ(日本)男を嗅ぐ 第12回最優秀脚本賞 (中国)手紙 14回高校生グランプリ(韓国)Get it beauty 第12回最優秀監督賞(韓国) 予告編はこちらから アジア国際青少年映画祭(Asia International Youth Film Festibal, AIYFF)は2004年の韓国での開催から続く、日中韓の学生作品を対象とした国際映画祭です。AIYFFは、映像を介したアジアの青少年たちの交流の場であり、文化と情緒を共有する青少年文化祭としての役割を目指してきました。 2020年、韓国・中国の学生を招待しての日本での初開催を予定していましたが、世界的な新型コロナウイルス感染症拡大の影響を受け、2021年に延期。従来のプログラムも大幅な変更を余儀なくされました。 コロナ禍により、異国の文化や人々にふれあう機会が随分となくなってしまいました。日中韓の学生たちが同年代の映像文化に触れ、刺激を受ける機会となるよう、日本での映像祭(上映会+日中韓に関する講演会)の開催を決定しました。2019年東アジア文化都市に選定され、現在でも文化発信の拠点となっている豊島区にて、新たな時代の映像文化の芽吹きを感じていただければ幸いです。 第12回日本代表集合写真 第14回会場集合写真...

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世代を超えて日中交流を語り合う 『和華』32号出版記念セミナー実施報告

3月5日、多元文化会館にて『和華』32号出版記念セミナーが開催された。日中文化交流誌『和華』は2013年に一留学生によって創刊された、日本と中国の文化的結びつきを紹介しながら両国の民間交流を促進する雑誌で、毎号ひとつのテーマを掘り下げて日中文化の魅力を再発見する。第32号では国交正常化50周年を記念して「知られざる日中交流の物語」を特集した。本セミナーはその出版記念セミナーとして開催された。 本セミナーは「日中これまでの歩みと今後の展望」をテーマに、第1部が特別講演、第2部がディスカッションの二部構成で、オンライン・オフライン両方で行われた。第1部では日中友好団体、関係団体の取り組みを紹介した32号特集の中でインタビューが掲載された、中国研究所会長・田中哲二氏と日中協会理事長・瀬野清水氏の特別講演が行われた。第2部では日中学生会議第41期委員長の今井美佑さんと一般財団法人日本アジア共同体文化協力機構の磯尚太郎さんが若者代表として登壇し、第1部講演者の田中氏、瀬野氏と共にディスカッションを行った。 田中氏は「日中文化・経済交流の歩みと今後の展望」と題し、日中国交正常化前後からの経済交流の歴史を振り返り、また1956年の京劇俳優・梅蘭芳来日の際に直接公演を見たこと、1972年の上野動物園にパンダ2頭が寄贈されたことなど、自身の記憶もまじえて文化交流の歴史についても紹介した。また周恩来元総理の存在の大きさと「日中関係の未来は深く歴史を学び相手の立場を理解できる若者の数とその双肩に懸かっている」という言葉を紹介し、今後の日中関係にはジェネラリストの育成や日中間の情報を的確に客観化できる能力の育成がよりいっそう求められること、日中交流を志す者は同時に真正の国際人でなければならないと、会場の若者に力強くメッセージを伝えた。 瀬野氏は「日中民間交流と国交正常化の歩み」と題し、通算25年間中国に駐在した外交官の経験を惜しみなく披露し、1943年のカイロ宣言から日中国交正常化の歩みを概観した。また1954年に当時の周恩来総理とインドのネルー首相との会談で核にされ日中共同声明でも謳われた外交原則「平和五原則」や1972年の日中共同声明で合意された「復交三原則」をわかりやすく解説し、日中国交正常化が大勢の人々の命がけとも言える苦労の末に実現したことを改めて認識してさらに今後の50年、100年へとグレードをあげて発展させていかなければ日本は進むべき道を誤るのではないかと話した。そして今後の日中関係は、共通の目的を目指して同じ方向を向いて共に努力することが大切だと締めくくった。 第2部は孫ぐらいに年の離れた若者二人が加わり、世代を超えて日中交流について話し合った。共に留学経験がある今井さんと磯さんは、それぞれの経験をもとに現代の日中交流について考えを述べた。今井さんは最初の頃はアニメなどの影響で日本人というだけで仲良くしてくれると思っていたが、交流を通じてやはりより深く知るためには相手を理解する必要があると感じるようになったという。磯さんは、現代はネットを通じて多くの情報に触れることができ、現地と同じリアリティを感じることができるようになった反面、たとえば中国語を学ぶなどして積極的に情報収集をしていくまでの壁が意外と高いのではないかと話した。 一方田中氏と瀬野氏は、情報量は膨大になっているが、それを選別するセンスを磨く必要があるのではないかということ、また等身大の中国を理解するためにはネットに勧められるままに記事を見るのではなく、正しい情報を見極める力が必要であると述べた。 これからの青少年の日中交流について、若者二人はお互いの違いを理解した上で共通点を見出すこと、多様性に富む中国を一括りで捉えるのではなく、ひとりひとりに目を向けた交流が大切ではないかと話した。田中氏は長年の経験を踏まえ、専門家としてのアプローチだけではなく、客観的に全体像を把握するジェネラリストを育てる必要があること、瀬野氏は平和五原則にある「平等互恵」は「平等互敬」、つまりお互いが違いを尊重しながら敬い合うことが大切であると話した。 最後は、コロナがあけたらぜひ直接中国を訪れて普通の人々と触れ合ってほしい、中国の古典に触れて中国の価値観を学んでほしい、など若者への期待が伝えられたのに応え、若者二人が抽象と具体を行き来しながら旅をして人に会っていきたい、いいときも悪いときも中国との交流を続け、接点を持つ場を作っていきたいと意欲を述べた。会場は満席で、セミナー終了後も登壇者とだけでなく参加者同士も活発に交流する様子が見られた。

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『COME&GO カム・アンド・ゴー』リム・カーワイ監督インタビュー

大阪を中心に活動を続けている、旅する映画作家リム・カーワイ監督。現在、2012年の『新世界の夜明け』、2013年の『Fly Me To Minami 恋するミナミ』に次ぐ大阪3部作の最終章『COME&GO カム・アンド・ゴー』が絶賛公開中だ。9カ国・地域に及ぶ国籍も言語も異なる人々が紡ぎ出す 複雑な物語を見事に捌き分け、日本と世界の関係性を描き出す。 ©cinemadrifters リム・カーワイ  Lim Kah Wai マレーシア生まれ。大阪大学卒業後、通信業界で働いた後、北京電影学院に進学。卒業後、北京にて『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』(2010年)を自主制作し、長編デビュー。監督作品は『マジック&ロス』(香港)、『新世界の夜明け』(日本)、『恋するミナミ』(日本)、2016年には中国全土で一般公開された商業映画『愛在深秋』(日本未公開)のメガホンをとり、最新作はバルカン半島で自主制作した『いつか、どこかで』など、数多くの作品を手がけている。 マレーシア出身のリム・カーワイ監督は、2010年、北京で『アフター・オール・ディーズ・イヤーズ』を自主制作し長編デビュー。香港で撮影した『マジック&ロス』や大阪二部作の他、バルカン半島で撮影した『いつか、どこかで』を自主制作するなど、まさにタイトルさながら世界を「COME&GO」(行ったり来たり)して映画をつくっている。  北京を引き上げて日本の大阪に拠点を移した2012年に公開された『新世界の夜明け』では大阪の新世界を舞台にした。大阪市は、梅田あたりの北(キタ)と心斎橋や難波などの南(ミナミ)に大きく分かれる。心斎橋から難波はおしゃれで賑やかなエリアだが、2キロと離れていない所にある天王寺エリアはいまでこそアベノハルカスができて観光客も来るようになったものの、10年前は見捨てられたようなさびれた場所だったという。『新世界の夜明け』はそのような場所で撮影された。そのときにリム監督は正反対のおしゃれなエリアでも映画が撮れるのではと思い、『Fly Me To Minami 恋するミナミ』では難波に舞台を移した。「新世界」のときにはすでに自らが住むキタでも撮れると確信し、大阪のそれぞれのエリアの面白さを描く大阪3部作の構想が生まれていたのだ。  監督が住むのはキタの中崎町。梅田からは10分もかからない。『COME&GO』は中崎町を中心に「3キロ以内で起こる話」だ。中国、台湾、韓国の観光客、マレーシアのビジネスマン、ネパール難民、ミャンマー人留学生、ベトナム人技能実習生などの外国人たちと、彼らとの日常を共有する日本人たちの3日間に起きた小さな出来事の断片を描いた物語。9カ国・地域に及ぶ総勢14人の主人公が織りなす複雑なストーリーを見事に捌き、日本が抱える様々な側面も監督特有のユーモアと皮肉を利かせた軽妙なスケッチでひとつに集約させていく。  技能実習生の現実や学費に悩む留学生、出張中のビジネスマンなどの日常がリアルに描かれるが、ひとりひとりの個性がきわだち、強い印象を残す。それもそのはず、出演者は各国で有名な人物ばかりなのだ。台湾映画の巨匠ツァイ・ミンリャン監督の作品で日本でもおなじみのリー・カーションをはじめマレーシア、韓国、香港で活躍する有名俳優、そしてベトナム映画を代表するスターやネパールで絶大な人気を誇る民謡歌手、ミャンマーやアメリカで活躍する女優・俳優、日本からは千原せいじや桂雀々、渡辺真起子、尚玄、兎丸愛美が中崎町に住む個性豊かな面々を演じている。  今回特に貴重な映像となったのが、北京で舞台演出家・脚本家として知られているゴウジーとリー・カーションのからむシーンだ。中国から来た観光客を台湾からたびたびAVグッズを買いに来る大阪通が案内する。一緒に温泉につかったり、居酒屋で向かい合ったり。監督にとって、この2人を共演させることはひとつの夢でもあった。台湾映画が好きな人ならよく知るリー・カーションと、北京のアングラやアート界の知る人ぞ知るゴウジー。2人だけで1本の映画が撮れるほど、味わい深い映像になっている。「この2人の映画を撮ったら、カンヌにいけるかも……」(監督談)  これだけの人数での撮影はさぞや大変だっただろうと水を向けると、次々飛び出したのが「少ない予算でどうやって出演者を呼ぶか、撮影スケジュールをどう組むか、どこに宿泊してもらうか、店とどう交渉するか、予算をどう振り分けるか…」といった撮影や演出以外のあらゆるマネジメント作業の苦労話。通常なら全員が揃って準備やリハーサルをし、さらに撮影まで3週間は必要だが、今回は衣装合わせから撮影まで5日ほどですべておこなわなければならなかった。俳優陣の来日日程もバラバラ。それらすべてを「大変だけど楽しかった」と語る監督は、他の映画監督のイメージとは様々な面で違っている。  まずは筋書きだけでセリフの台本がない即興の演出方法。最初からこのスタイルと決めていたわけではない。初の長編作品では脚本を書いていたが、現場では様々な状況に合わせて変更していかなければならない。脚本があってもどんどん変わっていくし、かと思えば2作目の『マジック&ロス』は難しい内容にも関わらず脚本無しでできた。それなら最初から脚本はいらないのでは……? と脚本の必要性に疑問を持ち、これまで8本の長編を撮った中できちんと台本があったのは2本だけだったという。  そして最初にイメージがあるのではなく、現場で決めていく撮影スタイル。ある場所で撮影するとして、まずは「撮らせてくれる場所」を探す。見つかったら現場に足を運び、どのように撮るかを考える。場所に合わせて脚本を作っていくのだ。最初にイメージがあってそれに合う場所を探す場合と比べ、手間も予算もかからない。役者にも同じことが言える。イメージに合う役者を探すのではなく、まずは出演してくれるかどうかの交渉……。  コロナ禍を経て「ますます運命というものを感じるようになった」という監督。多くの人が大変な時期を過ごし、いまも苦しんでいるなかで、こうして苦難を乗り越えて生活できている私たちは幸運だ、それに感謝しなければならない。監督は何度もそう繰り返した。